スイッチチェンジキャラクター!(7)
「あっ…」
教室に戻ると中には1人の女の子が残っていた。
黒髪ショートカットに小さな背丈。何かにおびえるような目をしている。手には小説…だろうか、文字が並んだ本を持っている。
先ほど私に群れていた女子たちには混ざっていなかった子だ。
ここは私の完璧イケメンスマイルで怯えた様子を解消させてあげよう!!
「やぁ、あなた一人で何をしているですか?」
「い、いや、別に、本を読んでいるだけです…」
すると女の子は慌てて本を読んでいる素振りをする。
…あ、あれ…私の…営業スマイル…
というか…
「えっと…反対、ですよ?」
「っ!!」
私が指摘すると女の子はハッとしたように赤面しながら本を回す。
「…」
「…」
少し、間が空く。
…参ったな。私のこの完璧な頭脳でも、こんな時になんと声をかければいいのかわからない。
「えっと…なんでここに残っているんですか…?」
静寂の中、かすかな声で女の子は言ってきた。
理由…理由…うーむ…良い言い訳が思いつかない。
「とりあえずそこ、私の席なんだけど…」
話題を逸らそうと私は真実を伝える。
「っ!!」
すると女の子は素早く立ち上がって本に顔を隠す。
「えっと、その、ごめんなさい…いつもはこの席、誰もいなかったから…」
慌てた様子で小さな声で謝罪してくる。
なんだろう。私のことが怖いのだろうか。先ほどからビクビクしている。
「いえいえ、大丈夫ですよ。あなたみたいな可愛い女性に座ってもらえたなら私も嬉しいです」
とりあえず、とりあえず笑顔だ。私のこの超絶完璧でウルトラパーフェクトな顔の笑顔だ!!
…だが、反応はなかった。
「…それじゃ、失礼します」
とりあえず静寂を破りたくて私は席につく。
「なにを…しているんですか…?」
再び女の子からの質問。
本から目をだしまたも怯えるようにこちらを見ている。
「いやぁ、ここの席から見える景色は素敵だなぁと思いまして」
思いついた適当なことを言う。
なんということだろうか。この私でも完璧な言い訳が思いつかなかった!!
「その…すみませんが、この席からは…離れてもらえないですか…」
…明らかに変なお願いだ。
「えっと…それはどうしてですか?」
「それは…」
すると女の子は黙り込んでしまう。
やはり、この女の子は何かを隠している。
「とにかく、離れてもらえないですか…?そうしないと…貴方も…」
泣きそうになりながらも言ってくる。
「貴方も?」
「っ!!」
聞き返そうと顔を近づけて言うと女の子はそのまま教室から去っていった。
なんだったのだろうか。変わった子だ。
…ッハ!!もしや私がイケメンすぎるから緊張してしまって…!
…ふむ。実に納得が行くな…!
「おい、なんかちょっと感じるぜぇ」
突如姿を表したラムがなにかを睨みつける様な顔をしながら言ってくる。
そしてラムが姿を現したお陰で一つの可能性に気づく。
「やっぱり、あの女の子も関係あるのかな?」
「そうかもなぁ…とりあえずもうちょっと待ってみよう」
私とラムは目を合わせ、頷いた。




