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関わり(3)





「次は〜新宿。新宿」


電車内のアナウンスが鳴る。

もうすぐだ。恐らくは十中八九私の考えは正しいはずである。


「新宿。新宿お出口は〜」


電車が止まり、ドアが開く。

普段ならばけして急いでお利用となどはしないが今回は許してもらいたい。

駆け足で改札を抜け西口を目指す。





「おいおいなんだよあれ」「何も言わないのか?」「中継です」「ざわざわざわざわ」


西口にたどり着くと野次馬のような人たちが多くいる現場を見つける。

ってなんか賭け事してる人いないか?


「国民の皆さま。ご迷惑をお掛けします。皆さまにはこれよりこれからの日本について考えてもらいたいと思います」


「さんざん政情をかく乱させておいて今更何を言うかー!」「そうだそうだー!」「野党うるせぇぞー!」「話をまず聞けよー!」


突然の総理の言葉に野次馬が騒ぎ始める。


「申しわけないですが、ちょっと呪いをかけさせてもらいますね」


っ!やはりっ!!


「なんだよこれ!?」「えっ!なになになに!?」「は?はぁ!?」


周囲の環境が変わり結界が張られる。

同時に総理から複数の白い玉が飛び立ち周囲の人々に入り込んでいく。


「か、体が!?」「痛ァい!」「いやぁぁ!」「なんだよ!なんだよこれ!?」


入り込まれた人々が突如倒れ込む。

私の元にも白い玉が飛んできたがさり気なくラムを使い防ぐ。

そのまま周囲の人々にあわせて私も倒れ込んだふりをする。


「それでは皆さま。これから絶望の日本を作り上げようではないですか。なに、皆さま一緒なら大丈夫です」


総理が言い出すと共に入り込まれた人々が殴り合いを始めた。


「な、なんだよ…これ…」「いってぇな!なにすんだよ!」「違う!体が勝手に」「いや!いやぁぁ!」


「もういいよね、ラム」


「あぁ。周りの奴らもこっちを気にする余裕もないようだぞ」


立ち上がり総理の元に近寄る。


「やはり貴様は現れたか」


聞いたことのある声。

一度出会ったことのある霊体。

私の目の前には逃した小さくなった青い霊体。そして白い霊体。


「クフフ。貴様が例の変態契約者、か」


変態…?

後ろを振り返る。

まぁいいだろう。


「どうもご無沙汰しています。青い霊体さん。それと、初めまして。白い霊体さん。神走文太17歳、独身です。イケメン契約者やっております」


「クフフ。知っておる。国内の霊体たちを静めたのは貴様であろう。だが、我には敵わぬ。貴様にはここで消えてもらうぞ」


物騒なことを言うなり再び白い玉を飛ばしてくる。

よけようとする、が。


「っ!!」


すぐさまラムを掴み手を動かし白い玉を弾く。が少し体にあたる。


「うっ!」


「なんだよ文太!今の避けれただろ!?」


「違うんだ!」


「クフフ。後ろの奴らを気にして、か?」


「ぐっ!!」


「文太!?お前…!」


白の霊体は一度ニヤリと口端を上げると再び白い玉を飛ばしてくる。


「っ!くそっ!!」


ラムを素早く動かしながら、白い玉を消していく。

ところどころ防ぎきれずに体を張って消していく。


「痛てぇ…!痛てぇ!」


なんだ…これは…!?

この違和感は…?

気持ちよく…ない…!

白の霊体は、青い霊体を横にしながら言い始めた。


「貴様の事はコヤツから聞いているからな。ちょっと攻撃方法を身体的にではなく感覚的と根本的に変えさせてもらったぞ」


そ…


「そんなぁぁぁぁぁぁ!!そんなの!!ひどい!!あんまりだ!!!」


だってそうだろ!?殴られる=気持ちいいというのがこの世界の常識な訳で!!それが無いっておかしいだろ!?


「コヤツ…我の思ってるより重度な変態なのかもしれん…」


と…とにかく、このままじゃまずい。

攻撃を受ければダメージになるし後ろの人たちに白い玉…そういえば、霊丸であったな。霊丸を当てるわけにはならない。


「どうする…どうすればいい…」


再び飛んでくる霊丸。弾く。

右右左上上右。

こんな時、もう1人の私ならば…

全ての霊丸を消しながらも颯爽と霊体を倒せるだろうのに。


私はそんなに、強くはない。


「文太!任せろ!」


「ラム!?」


突如私の手から離れラムが周囲の環境を変え…結界を張り始めた。


「…そうか、その手が!!」


「二重結界だと…?っ!無茶なっ!」


ラムを中心に結界が張られていき私と霊体達のみを入れた結界が完成する。

いつもと違うのは普段は何も見えない結界の外には霊体の張った結界が見え未だに殴りあっている。ということだ。


「ハァハァ」


それと、結界を張ったくらいでは疲れる事の無いラムが疲労している。


ラム!


「…」


…あれ?


ラム!!


「…」


…っ!

ま、まさか…!


「き…貴様…二重結界を張ってなぜ無傷でいられる…?」


青い霊体の一言。

やはり…

無傷、ではないが。


「…」


「答えない、つもりか。舐めおってぇぇぇぇぇ!!」


逆上し始めた白の霊体が霊丸を飛ばしてくる。

避けようと右に動こうとする。が、

体は言う事をきかない。


「っ!うぅ…」


霊丸が当たった私の体は吹き飛ばされる。

発しようとしていない言葉をだしながら。


「貴様。今なぜ避けなかったのだ?」


「…」


「答えない、か。ならばそのまま消えろ!!」


再び飛んでくる霊丸。

私の体は相変わらず避けようともしない。


おい!!


「…」


おい!!もう1人の私!!聞こえてるんだろ!?


「…んだよ」


押し殺すような小さな声。


何してる!!早く避けろよ!!


「…」


死んでしまうぞ!!!


「…こんな寂しい世界。死んだって別にいいさ」


っ!!!


「うっ!!」


再び霊丸に当たる私の体。

吹き飛ばされ結界の壁に当たる。

それよりも。


なぁ…死んでもいいって…どういう意味だよ…?


「…」


答えない…のか。


「貴様。先ほどと様子が全く変わったな…何を企んでいる」


企んでいるって。

それどころじゃないんだよ。


おい。死んでもいいってどういう意味なんだよ。


「…」


そうか。お前がそう考えているならそれでいい。だがな。ラムだけは逃がしてもらおうか。


「っ!ラム…?」


ハッとしていた表情になるともう1人の私は手をつき四つん這いになって周りを動き始めた。


「ラム…?おい、どこだよ…ラム…?」


「我の事を差し置いて探し物か…どこまでも!どこまでも舐めおってぇぇぇぇぇ!!」


先ほどより憤怒が増した霊体。

すぐさま霊丸を作り出す。それも先ほどとは全く違う大きさの。


「っ!」


私の体は予想通り吹き飛ばされる。だが、私の予想と少しだけ違った部分が合った。

私の体は、確かに避けようとしていた。


「ぐぅぅ…」


もはやボロボロになっている私の体。

それでも。

私の体は立ち上がろうとしている。


「ラ…ム…」


すぐ横には白い物。


ラム!


「ラム!!」


私の体はラムを拾い上げる。

反応は…見られない。


「ラム…?ラムぅ…」


私の顔からは…頬を流れる雫。

何やってんだよ、ラム。

早く起き上がれよ?ほら。もう1人の私だって泣いちゃってるぞ?おい?ラム?


「またか…また俺は…失うのか…」


っ!!


お前…!


「俺は…俺…は…」


私まで落ち込んでいる暇は無いよな。


おい!お前!!文太!!


「ま…また…1人…に…?」


そう呟くとともに私の体は倒れ込む。

もう1人の私が気を失うとともに、私の意識もこの世界から消えた。




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