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国内テロ(2)







「おい聞いたかよまたテロだってよー」「えーなにそれー」「ほんと物騒だよなぁ」


クラスメイトの女子&リーゼントと取り巻きたちと遊んだ日曜日から一週間が過ぎた。

だが、兄貴を見ることはなかった。


「なぁ、文太。ほんとに強心はどーしたんだよ」


前の席に座っている高林が話しかけてくる。


「あぁ…私にもわからないんだ。ここ数日、見かけてない」


と言うと、高林は眉を八の字にした。


「まぁその…元気だせよ。きっと強心なら大丈夫だよ。ゆっくりでいいから…な?」


私が悲しんでいる?


そんなの、決まってるじゃないか。


寂しいわ。


だが、もう1人の私が落ちこんでいる中私までもが落ちこんでいる訳には行かないのだ。


「絶対に見つけてやるからな」


周囲に聞こえない小さな声で私は呟いた。









「ただいまー」


誰もいない家に帰ってくる。

いないだろうと覚悟していても兄貴の返事が無いことが結構心に堪えた。


夕食を自ら作る気にはなれず一応買っておいたカップラーメンに手を伸ばす。

蓋をはがしポットからお湯を出す。


ピッ


「先日より国内を騒がせているテロ事件。発生場所も不確定に起こり件数も増えております。首謀者は不明。何名かのテロリストたちを捉えたものの動機は不明。精神状態が」


ピッ


「こんな時まで…暗いニュースは見てたくないよ…」


適当なバラエティ番組へとチャンネルを変える。


「なぁ、文太。文太…ラーメン、伸びちまうぞ?」


ラムが姿を現し話しかけてきていた。


「あ、あぁ…そうだね。ありがとう」


「文太…」


カップラーメンを食べる気も起きず半分以上残し夜を過ごした。







「文太さん。あの…」


お昼休みとなりリーゼントに話しかけられる。

珍しいな。


「あ、あぁ…どうしたんだい?」


「文太さん…あの、強心さんはどこに行かれたかはまだわからないんですか?」


「うん。まだわかっていないんだ…あの兄貴のことだから大丈夫だとは思うんだけどね」


とりあえずの営業スマイル。


「あの…文太さん…」


「ん?」


「とりあえず、元気だしてくださいね?それじゃあ」


リーゼントは言い残して教室を出ていった。

やれやれ、全く。

リーゼントも悪い奴ではないのかもな。


そして、お昼休みは過ぎていった。





ビービービービー!


「えっなになになに!?」「また異人!?」


突如、市の警報が鳴り始める。

ぼーっとしていた意識を強制的に現実に戻される。

何が起こったのだろうか。


【市内にてテロによる暴力事件が発生しております。警察がおさめるまで救助を待ち避難してください。繰り返しお伝えしますーーー】


「テ、テロだとおおお!?」「うわぁぁぁ逃げろぉぉぉ!!」


教室内が慌てふためき始める。

何をしようとしているのかは理解できないがみんなが教室から出ていこうとしている。よって入り口から出ることは出来そうにない。どうする。まずは状況の確認だ。

窓から外の様子を見る。


乱闘だ。


正にそんな状況。

先生たちがグラウンドにでており何名かの住民が押しかけている。そして、暴行。

その中には文化祭開催の為に協力してくれ署名をしてくれた人達もいる。


「えー、生徒の皆さん。落ち着いて下さい。ただいま先生方が収集にかかっています。落ち着いて行動をしてください」


現状を見込んでの校内放送。

だが教室は変わらずパニック状態だ。

倒れている女の子を見つける。


「大丈夫ですか?」


「は、はい…」


そこにいたのは織本さんだった。

手を取り立ち上がらせる。


「織本さん。とりあえず落ち着いて行動をしましょう。警察も動いているはずです。このまま教室で待っていて下さい」


ここでの営業スマイル。

笑顔でいうことこそが相手に信頼を与えることも多いはずだ。


「下さいって…文太君はどーするの?」


私は教室にある防犯用のY字型に作られた鉄製の物をとり、分割されている部分を外し鉄製の棒にする。


「私は、ちょっと外に行ってきます」


「そんな、ダメだよ!危ないよ!」


「大丈夫です。こう見えても私、喧嘩強いんですよ?」


そのまま窓から飛び降りる。


「ラム!頼む!」


ラムが姿を現した。


「全く、無茶しやがるぜ!」


ラムを掴み気を注ぐ。

地面に到達する直前、ラムを下に投げ込む。そして落下。

ラムがクッションとなり怪我はない。


「ありがとう、ラム!」


そのままグラウンドに走り込む。

酷い有様だ。何名か気絶しているものもいる。


「あっ、ふ、文太さん!」


リーゼントがこちらを呼んできた。

どうやらリーゼントも闘っていたようだ。リーゼントは前にいる男性を殴りとばす。後ろには学園に避難してきたのか幼い子どもたち。


「いったいどうなってる!?」


「それが…俺たちにもわからないんですよ。いつものように授業フケてたらいきなり子どもたちがここに逃げてきて今の有様って訳です」


「そうか…っ!危ない!」


リーゼントの後ろから先ほどの男性が殴りかかろうとしていた。

私は棒をリーゼントに当たらないギリギリのところで男性に突き刺す。


「グッ…!?」


そのまま男性は倒れ込んだ。


「文太さん、ありがとうございます!」


「お礼は後でいいよ!とりあえずその子たちを任せた!」


その場をリーゼント達に任せ校門の方に向かう。


「文太!?お前何してやがんだ!」


またも呼び止められる。全く私ってばモテモテだな…と思いたいがそんな余裕はない。


「先生!いったい何が起こってるんですか!?」


呼び止めてきたのは担任だった。

1人を押さえつけながらこちらを見ている。


「俺にもわからん!とりあえずお前は校舎内に逃げっーぐっ!!」


後ろから3人の乱闘者が現れる。

1人が担任を押さえつける。


「私を忘れるな!」


私は相手に棒で突く。

致命傷にならない部分に。

もう1人が私に殴りかかってくる。棒を使って防ぐ。そのまま棒を回しなぎ払うように攻撃する。


「よくやった!文太!」


担任の方を見ると担任は後に頭突きをして拘束が解けたところで蹴り飛ばした。


「先生、大丈夫ですか」


「俺は大丈夫だ。校内の方はどうなってる」


「混乱状態です。このままでは生徒にまで被害がでるかと」


その瞬間。周囲の景色が変わる。色が黒ずみ始め周囲の物体は僅かな光をまとわり始める。


「う、嘘だろ…?」


ここで結界の発動。先生や周囲の人たちまでもが入り込んでいる。


「文太…くるぜ…」


周囲の人を気にしている暇もなくラムが姿を現す。


「あぁ」


「フハ、ハーッハハハハ!!いいぞ!!もっと争い合え!絶望を!!絶望を我に!!」


そこに出てきたのは青い霊体。

担任や何名かの正常者たちは驚いていたがすぐに乱闘者に襲われ対応に追われるハメになっていた。


「お前のせい…なのか…?」


私は霊体に近寄りながら言う。


「ほう…貴様、我の姿が恐ろしくないのか」


「あぁ。それよりお前のせいなのかと聞いているんだ。国内で起こっているテロも全て」


「フフフ、その観察眼は褒めてやろう。だが違う。我は全てをやっている訳ではない」


「どういう…意味だ」


「我の他にも霊体はおるのだ。そのうちの1人が乱闘を起こすという提案をしてなぁ。我たちはそれに賛同しただけだ。我の他にも暴動を起こさせている霊体がおるのだよ」


「なるほどな…」


理解するには充分すぎる。

国内で起きているテロは全て霊体が起こしたものだった。

方法までもはわからないが現にテロは起きている。

そしてそれぞれ起こっている場所に一体の霊体が支配している…という訳みたいだ。


「フフフ。さぁ、冥土の土産もここまでだ。貴様も我が餌食となれ!」


霊体はそのまま私に猛スピードで襲いかかる。


「文太!危ない!!」


担任が大声を出して言ってくる。

そのまま霊体は私の体に入り込んだ。


「なるほどな…精神状態を神経による働きによって破壊するものか。ラム」


「おう!」


ラムは私の中に入り込む。

すぐさま霊体は私の体から抜け出した。


「き、貴様…今何をしたぁ!?」


「悪いね…私はお前らで言うところの契約者、だ」


ラムが私の体からでてくる。


「き、貴様がぁ…ええい、我を舐めるなぁぁぁ!」


霊体はまたも私に向かってくる。

ラムを掴み気を注ぐ。そしてラムに向かって掌打を放つ。

ラムの体に穴が空き掌打を放った部分が霊体に向かって飛んでいき、霊体に直撃する。

残ったラムの体を1度こねる様に丸め途中まで二つに裂く。間には牙の形。

直撃を喰らい地にへばる霊体に近寄り食らいつくす。

楽勝☆

結界が消え周囲の景色が元通りになる。


「あ、あれ…俺は、何を…?」「なんで学校に…?」


呪いが解かれ精神状態が元に戻る。


「あれ、襲ってこなくなった?」「さっきのは一体…」


周囲の暴動が止まる。


「文太…お前…」


担任がこちらを見ている。


ピピー。


笛の音。


「警察の者です。こちらで暴動事件が起こっている…と聞いたのですが」


そこから、その場にいた人たちは事情聴取を受けることとなった。





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