国内テロ
日曜日の朝。
休みとはいえ私はぐうたらなどしない。
「兄貴ー、起きてるかー?」
朝食の準備を終え兄貴を起こしに行く。
正直、休みの日は兄貴はお昼頃まで寝ていることが多いので無理に起こしはしない。
返事も見られず、1人での朝食をとりにリビングに。
「それでは、次のニュースです。先日出現した異人…」
テレビを点け箸を持つ。
「いただきます」
ぼーっとテレビを見ながら朝食に手を付ける。
「星海学園内にて異人を撃退…速報が入りました。新たなテロでしょうか。またも国内に暴力事件が発生しております。詳しい場所は後でお伝えしますが」
ピッ
テレビを消し食べ終えた朝食の皿を片付ける。
「物騒な世の中になったもんだな」
独り言を呟きながら部屋に戻る。と、ラムが姿を現した。
「文太。今日はどこか行くんだっけ?」
「あ、あぁ…ちょっとクラスメイトの女子たちと、ね…」
「おい文太。顔が青ざめてるぞ…」
今日はとうとうあの女子たちに約束をこじつけられ断るに断れきれなずにこの日を迎えてしまったのだ…
昨日は霊体と夜遅くまで戦っていて正直しんどい。
「はぁ…」
「なにサルの反省みたいなことしてんだよ…ほんとにどーしたんだ、いつもの文太なら喜んでるじゃないか?」
「なんか…なんか素直に喜べなくてね…」
「ふーん…そうなのか…まぁ元気だせよ」
「ありがとう、ラム」
気を取り直して、行くとしますか…
扉を開け部屋を出ると私を気遣ってラムは姿を消してくれた。
玄関にでて靴を履く。兄貴の靴がある。まだ寝ている証拠だろう。
「行ってきます」
小さな声で言いながら、待ち合わせ場所に足を進めた。
「あ!きたきた!おーい、文太君!こっちこっちー!」
約束(一方的)の場所には既に女子たちが数名…それと、リーゼントたちと取り巻き…?
「ごめん、待たせちゃったかな?」
とりあえずの営業スマイル。
ここまで来たんだ。乗り掛かった船。やってしまおう。
一応あのリーゼントたちに喧嘩売られることを覚悟しながら歩を進める。
「あ、文太さん!こんちゃっす!」
と、リーゼントとその取り巻き達が頭を下げてくる。
「ふ、文太…さん…?」
なぜ急にさん付けなんだ…?
「はい、文太さん。転校の日は失礼なことをしました!強心さんに聞きました。あなたはお強いと!」
兄貴…何しやがったんだよ…
「ま、まぁとりあえず、ご飯食べに行きましょうか」
なんとか営業スマイルを作り私は言った。
「ただいまー…」
午後10時。彼女らの気がすむまでにえらく時間がかかってしまった。
兄貴の靴がある。今日はどこにもでかけずにいるのだろうか。
「兄貴ー?起きてるのかー?」
ノックし部屋に入る。
が、兄貴はいなかった。
「兄貴…?」
今度は浴室。次はトイレ。
「兄貴ー?おーい?」
すると、私の体に異変が起こる。
「お、おい、兄貴…?おい!!兄貴どこだ!?」
勝手に体が動き始める。
「どこだよ!!返事しろよ!!おい!兄貴ー!!」
もう1人の私だ。
「はやく…はやくでてきてくれよ…兄貴…俺を独りにしないでくれ…」
「落ち着け文太!」
ラムは部屋の外にも関わらず姿を現した。
「あ、あぁ…」
「とりあえず、部屋に戻ろうぜ?な?」
と言うと、私に感覚が戻る。
私はそのまま部屋に行くことにした。
「全く、靴も履かずにどこに行ったんだか…」
「その様子だと…戻ったのか?」
「あぁ。まぁね」
「そうか…まぁ兄さんの事だ。きっとフラッと帰ってくるさ」
「そうだろうね…」
私自身もそう思う。
だけどなぜだろう。もう1人の私のことを考えると胸が痛んだ。




