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星祭り!(5)







「すいません。星海学園の神走文太と言います。この度は星海学園の学園祭に関しましてお話を伺っています」


「あら、学生さん?可愛いわねー」


放課後、市内を回る。今目の前にいるのは20代くらいの女性だろう。市内には異人出現があった為なのか、活気が少ない。


「ありがとうございます」


ここで必殺営業スマイル。

女性の目が変わる事が分かる。


「すみませんが本日の異人出現によって星海学園学園祭…星祭りが中止にされる事は知っていますか?」


「あら…今年はやらないの?」


「現在中止間際となっている状態です。ですけど、私としては星祭りをなんとしても開催させたいと思っております」


「なるほどね…私も星祭りには思い出があるからねー」


「そうなんですか?」


「うんうん、私こう見えても星海学園の卒業生なんだから、君の先輩さんだよ」


ここだ。異性との会話の中に共通点を見つけた。

勝負するなら、今。


「おお!じゃあ本当に私の先輩さんなんですね!」


わざと、ここで強く喜びの表現。

一緒のことがあって嬉しい。それを表現する。


「あらあら、本当に可愛い子ねぇ」


「先輩も星祭りに参加されていたんですよね?」


呼び方も先輩、と他人ではないように示す。心の距離は圧倒的に近づいたはず。


「先輩の思い出のある星祭り。私はどうしても見てみたいんです。協力、してもらえませんか?」


「私に協力できることならいいけど…私もこう見えて忙しいのよ…」


「大丈夫です。こちらをお願いします」


と言い、1枚の紙を渡す。









「すいません。星海学園の者です」


「ん?あぁ、佐藤が言ってたやつか」


佐藤。この前の女性の星海学園の卒業生だ。








「すいません。星海学園の…」









コンコン


「失礼します。2-Aの神走文太です」


ノック一礼し、職員室に入る。


「おい、今は会議中だ。悪いけど生徒は立ち入り禁止なんだ。用があるなら後にしてくれ」


会議中?そんなの分かってる。それを狙ってきたのだ。


「すいません。ですが、今やらなければならないことなんです。星祭りについてはどうなっているんですか?」


「はぁ?」


素直に言う事を聞かない生徒に明らかにストレスを感じ、口が悪くなる先生。

だが、ここで引くわけにはいかない。


「今、星祭りは中止に決まったところだよ」


目の前にいる先生ではなく椅子に座っている1人の先生がこっちを見ていう。

様子を見た限り、あの先生が開催中止の案を中心的にまとめている先生だろう。


「そうなんですか。なぜ、星祭りを中止にさせるのか聞かせてもらってもいいでしょうか?」


「先日の異人は覚えていますね?そのせいで生徒の間にも精神的に追い詰められる生徒もいるはずです。そちらの対応を優先させるべきではないでしょうか」


先生のいう事には一理ある。

けど、反対派だっているはずだ。


「ですが、星祭り中止に不満を抱く人もいると思われます」


「その中の一人が君…ですか。ですが、君一人の為に星祭り中止を無くすという事にはならないんです。今回の事件はそんなに簡単なものではないのですよ」


表現も変えず、冷静な声でいう先生。

間違ったことは言っていないという自身を見せるように。

確かに言っているのとは間違っていないのかもしれない。

それでも。


「確かにそうです。ですが、これを見てください」


私は1つの紙を見せつけるように持ち上げる。


「これは…なんですか?」


先生は立ち上がり、私の元へと近寄ってくる。


「近隣に住んでいる市の人達にアンケートをとってみました。これは星祭り中止に反対する人に署名をしていただいています。これだけでも、市内の過半数を超えています」


そう。予想よりも星祭り中止に悲しみを抱く人は多かった。中には星祭りはどうでもいいけど署名くらいなら、という人もいたが…


「中には、星祭りに思い出を語る人もいました。星祭りに思いがある人です。そんな中、星祭りを中止にする…というのはいかがなものかと思います」


「ふむ…」


先生も考え込んでいる。


「確かに住民の方々が開催を望む声が多い…とは分かりました。ですが、ごめんなさい。ここまで頑張ってもらったのに…本当にごめんなさい。それでも、やはり生徒の精神的な部分を優先させるべきでは…と思う自分がいるのです」


先生は、少し声が震えている様子だ。

この先生は悪者なんかではなさそうだ。あくまでも生徒の為を思ってなのだ。ここまできたが…ここまできたが。言い返す言葉が見つからない。


「井口先生。それなら、これを見てくれ」


突如、後ろから聞きなれた声がする。

振り返ると…兄貴の姿。


「なんですか、貴方は?」


「こいつと同じ2-Aの神走強心っす。俺の事なんていいからとりあえずこれを」


と言い、兄貴は束になっている紙を置く。


「各クラスに回って俺は全校生徒ほぼ全員に星祭りに対してのアンケートをとってきたんすよ。昨日俺も全部見てほとんどの生徒は星祭りを開催したいって人が多かったっす。生徒を大事にしている先生、なら参加させるべきってわかってるんじゃないすか?」


「おお…こ、これは…」


先生も一つ一つの紙を見ている。


「俺が見た限りじゃ全員が開催させたいって言うわけじゃなかったっす。どっちでもいいって意見が少しあったんすけど…それでも、開催させたくないって欄には誰一人丸つけてないんすよ」


すごい…兄貴、知らない間に行動していたのか。やはり、私の兄貴、だな。


「こ、こんなに…生徒たちも…こんな状況でも、星祭りを開催させたい生徒が…」


これなら。これなら上手くいく。そう、確信した…が。


「ですが…1度会議で決めた事ですし…」


否定的な意見。

今度は…大人の事情、か。

ならば…ならばどうする。

こういう時、大人は子どもの意見を取り入れようとする人は少ない。

それが、日本の社会なんだ。

どうする。どうすればいい。


「あの、すみません。1ついいですか?」


1人の先生が手を上げる。

うちのクラスの担任だ。


「ここまでこいつらがやってくれたなら会議で決めた事といっても、変えたっていいでしょう?なんなら俺が責任持ちますよ。なんかあったなら全部俺のせいにしてもらってかまいません。精神的に、っていうならむしろ星祭りで得られる笑顔を生徒から取り上げる方が問題でしょうに?」


「そ、それも…そうですが…」


場の雰囲気が、変わった。いや、担任が変えたのだ。


「ふふ。いいじゃないですか。井口先生」


次に出てきたのは、校長。


「この生徒らもここまでやってくれたのです。きっと、この生徒たちはいい星祭りにしてくれますよ」


「校長…」


井口先生の様子も変わる。

この先生ももしかしたら星祭りは開催させたいのかもしれない。だが、やはり生徒の事を思うと…なのだろう。


「さて、君たち」


校長がこちらを見てくる。


「ここまで言ったのなら、星祭りを失敗させる訳にはいきません。貴方達にのしかかる責任はとてもとても重いものです。それでも、意思は変わりませんか?」


あくまでも笑顔で、それでも重みのある言葉。


やれやれ、全く。


「はい!!」「うす」


これは絶対に成功、させなきゃな。







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