星祭り!(3)
学校中を走り回り、織本さんを探す。
どこだ。どこだ。どこだどこだどこだ。
可能な限り速く走る。と
ズドォォォォォン!!
玄関の方からなにかが壊れた音がする。
異人が学校に入り込んだ…のか!?
それを思うと足の速さもまだまだ上がる。
「お、おい待て文太!!」
突如ラムが姿を表した。
「どうした!?」
「あの女の声が聞こえる!!教室の前の廊下の方だ!!」
「ありがとう、ラム!!」
進む方向を180度変えて進む。
危険を承知で玄関前を通る。
異人の姿は見られない。が、玄関のガラスの扉が割られている。やはり異人は学校内に…もし、もしも織本さんの所に言っていたら…
「っ!!!」
ゾッとする。
早く教室の方に行かなければ。
「おい、文太!!あれ!!」
ラムに声をかけられ前を見る。
目の前に見えたのは織本さんの姿。それと、全身が真っ黒の異人。
異人を前に私も恐怖を覚える、が私が怯えてる暇ではない。
「ぁ…あぁ…あっ…」
異人に怯え言葉にならない声を出している織本さん。
「織本さん!!」
「っ!!えっ、文太…君…!?」
織本さんがこちらの姿に気づく。
異人の腕が振り上げられる。
「危ない!!」
私は飛び込んで…織本さんに覆い被さる。
異人の振り下ろされる腕。
「ぐわぁぁぁぁぁ!!」
突如吹き飛ばされる私の体に痛覚が襲う。
「いやっ、いやっ、いやぁぁぁぁ!!」
地面には赤い液体が飛び散っている。
痛覚。体から脳に発せられる生命の危険信号が限界までに発せられる。
色々な意味でおかしくなってしまいそうだ。
だが、今は痛みを気にしている暇じゃない…!
「織本!!こっちに来い!!」
私は織本さんの手を引っ張り、教室へと連れ込む。そのまま2つの扉を閉め鍵をかける。
「ハァ、ハァハァ」
「文太君…血が…血がっ!!!」
気づけば、私の通った後には血の跡があった。
心配をかけてしまった…このままでは駄目だ。かっこわるすぎる。
立ち上がる。歩く姿を見せれば安心してもらえるだろうか。
「だ、だめ…動いちゃ、駄目だよ…!」
「そ、そうかな…じゃあ、ちょっと休ませてもらうね…」
席に座り込む。と、扉が壊される。
「い、いやぁぁぁぁ!!」
私の元に走り寄る織本さん。
「うぐぐ…」
駄目だ。体が言う事を聞かない。くそ。動け。動くんだ。この子を守るんだ…!
「わ、私が…囮になるから…文太君…逃げて…」
「織本っ…さん!!やめ…やめるんだ…私はどうなってもいい!!君が逃げるんだ!!」
聞く様子も見せてくれない。
どうする。どうする。どうする。
考えろ。私の頭なら思いつくはずだ。
冷静に。素早く。最適な解決方法を。
「おい、文太!!私が体に入り込むぞ!!いいな!!」
「ラム…」
ラムの姿を見て、1つの案が浮かぶ。
「待ってくれ!!ラム…頼む…異人が入り込まないくらいに、そして織本さんを入れるくらいの結界を張ってくれ!!」
「は…なんでだ!?」
「いいから、早くしてくれ…!」
「あ、あぁ!もうどうにでもなれぇぇぇ!!」
ラムの周りから、結界が張られ始める。
織本さんの目の前で、結界が止まる。
「な、なんとか…成功したみたい…だね…」
結界の向こうには異人の姿は見当たらない。
「えっ…えっ…!?」
織本さんが混乱している。
「織本さん…大丈夫…私が張ったようなものだから…」
「文太君!!」
異人が見えないことを確認したのか、周りを見渡したあと織本さんが駆け寄ってくる。
異人は確かに見当たらない、が。
小さな霊体が入り込んでいた。
万事休すか…とは思ったが全くと言って良いほど霊体の力は無さそうだ。
消えかかる意識を最大限に働かせラムに気を注ぐ。
ラムを飛ばす、とあっけなく霊体は消え去った。
「ごめんなさい…私を、私をかばったせいで…!」
「大丈夫、大丈夫だよ…」
私の意識がもうろうとしてくる。
織本さんの目の前だからと言って気にしている暇ではない。
「ラム…いい仕事をしたね…悪いけど、私が目を覚めるまで結界は張っておいてくれよ…」
「文太!!今からお前の中に入るぞ!!」
「あぁ…頼むよ…」
消えかかる意識。
「文太君…なにを言っているの…?」
最後にかすれそうな織本さんの声が聞こえた。




