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恋の神様?(3)





「はい。じゃあ今から飲み物とってくるから。とりあえずお茶でいいかな?」


6畳ほどの畳部屋の高林の部屋に入り座椅子を出してもらうと高林は部屋から出ていく前にそんなことを言ってきた。


「あぁ…構わないよ。ありがとう」


すると缶に入ったお茶を2つ、それに茶菓子まで持ってきた。


「さて…初めて来た家の感想はどうかな?」


「いや…正直驚いたよ。こんなに大きな神社ならかなり儲かっているんじゃないか?」


「昔はけっこう盛況していたんだけどね…」


途端に高林の表情が少し暗くなる。


「なんか、あったのか?」


「まあね。家は元々恋愛成就で地元には愛される神社だったのさ。だけどここ最近変な噂がたっていてね…」


「変な噂?」


「うん。なんとも家の神社にくると好きな人にフラれる、という噂なんだ」


「それは…なんともいえないね…」


たかが噂。されど噂、だ。恋愛は若人の方が敏感な場合がほとんどで若人は噂を信じやすい傾向もある。


「まぁこんなところ。他には何かある?」


高林は暗くしていた表情を換えて私に言ってきた。


「そういえば、神社とは関係なくなってしまうけど星祭り委員会に入りたい別の理由…ってのはなんなんだ?」


「あぁ…それは…実は俺、星祭りでとある子に告白しようと思っているんだ」


「告白…!?」


告白ってアレだよな。そう、アレ。アレだよな。した事もされた事もないけどアレ…だよな。すげぇな高林。癒し系ポッチャリと見せかけて実は誘惑型だったとは。


「うん。それで星祭り委員会に入って告白イベント作ろうかと思ってさ。どうせなら思い出にもなるし、いいんじゃないかって。ついでに、可能性は少ないだろうけどもしも成功すれば家の神社の宣伝にもなるだろ?」


「おぉ…」


すごい。中々考えているぞ高林。


「まぁそんなとこ。俺も告白は初めてだし高嶺の花ってのも分かっているけどな」


照れくさそうに言う高林。

なんだ。青春してるじゃないか。


「相手は誰…なんて聞くことは野暮だな。星祭り当日まで楽しみにしておくよ。そういうことなら私も協力するよ」


「おお、ありがとう!文太!」


と言って嬉しそうに笑っていってくる高林。仕方無い。ここは舞い降りた恋のキューピットと言われし私のちかr


「ところで、星祭り委員会の業務についてだったね。このまま遊んでいてもいいけど…どうする?」


「あ、お、うん。頼むよ」


そのまま、星祭り委員会の業務について説明してもらった。






ーなにか、感じるー


「まぁこんなところかな。あれ、文太。どうした?さっきから表情が強ばっているけどさ?」


高林に話しかけられ思わずビクっとしてしまう。


「あ、あぁ…気にしないで。大丈夫。ところで本殿の方を見てみたいんだけど見せてもらえないかな?」


「本殿を…?まぁ、いいよ。じゃあ行こうか」


と言うと笑顔で立ち上がり本殿までの案内をしてくれた。






ーいる。間違いない。ー


本殿の中に入ると格段にさっきよりも気配…殺気を感じる。


「まぁこんなとこかな。他に見たいとこは…」


ピピピピピピ!!


「あっ、ごめん俺の携帯だ…あっ、佐藤…って分かんないか、隣のクラスの友だち。ちょいと時間かかるかもだからこの辺でゆっくりしててー」


高林は携帯を片手にそんなことを言いながらも慌ただしく出ていった。

こちらも都合がいい。


「ラム」


「うん、行くぞ!!」


ラムの体から黒い光が広がり結界が作られる。前回は向こうから作ってくれたがこちらを獲物と思わなければ向こうは結界を張ってはくれない。結界を張ってくれないと私とラムは相手の霊体が全く見えない。ならば、こちらから結界を張るしかない。ラムも霊体の為に結界は張れる。

みるみる結界は広がり相手の霊体の姿が可視できるようになる。今回は赤黒い色をしている。


「ほう…我を見つけるとは…貴様、何者だ」


霊体はこちらを見て話しかけてくる。


「えっと…神走文太16歳です。彼女いません。独身です」


今これを見た読者の一部!!

なんで同じ事2回言ったと思ったやつ!!

これは違うんだ!!

彼女いないってのはそのままだが独身ってことは嫁もいないということだ!!

彼女と嫁じゃ違うだろう!!

けけけけ、決して彼女や嫁が欲しいから言ったわけでh


「ほほぅ…そうか。貴様、人間で言うならイケメンという類のほうだろう?」


えっ///


「あ、わか、分かっちゃいますー??そうなんですよー??いやー、霊体にまでイケメンと言わちゃうなんて!!あぁ!!自分が憎い!!完璧な美貌を持った自分が!!」


ラムの痛い視線を感じるが、気にしない!

一瞬唖然とした様子で霊体はこちらを見ていた気がするがすぐに笑った。


「フフフ…そうだ…貴様はイケメン、だ…ほれ、ちょっとこっちにきてその面を見せてくれい」


「アッハーン☆そこまで言われちゃったかー!!いやー!!仕方無い!!そちらに出向いてあげよー!!」


自然と体の運びがステップを踏んでしまう。

あぁ、良い!!良いぞ!!人…じゃないけど人にイケメンと言われるのは!!なんと…気持ちの良いものだろうか…!


「お、おい、文太!」


「そうそう…このまま…こっちに…」


霊体のいよいよ目の前にたどり着く。


「フフフ、馬鹿め」


「はい?」


突如、体の中を霊体が入り込む。

あっ、そこは…あぁ///


「貴様。悪いが貴様は病気なようだ。今から好きな人に会えばそいつは不幸せになるぞ…?」


「えっ?」


「それと、我のことを他の奴に話してもみろ。我は他の者に姿を知られるのは不都合だ。我は貴様を許さん。貴様だけでなく、家族。他にも好きな人を不幸にするまで簡単なんだぞ…?この姿の我を見て嘘だと思うか?」


「…何の話をしているんだい?」


心の中はハッピーだ。今すぐ全世界のみんなに感謝の気持ちでいっぱいだ。世界平和、ばんざーい!!!


「おいおい文太。呪い、かけられてるぜー?」


…え?

ラムの方を見るとやれやれとした様子でこちらを見ている。


「一旦冷静になれよ」


ラムの一言で、ちょっと冷静になる。

えっと。つまり。私は…騙されてたぁぁぁぁ!?!?


「ま、まさか、まさかな…!!おい!!私はイケメン!!イケメンだよな!?」


思わず霊体に確認してしまう。


「フフフ、貴様がイケメン?我は霊体だぞ?分かるわけ無いだろう?」


なん…だと…!?


「お前…嘘を…ついたのか…!?」


私は許さない。この世界を。今すぐ焼き尽くしてやる。なにもかもを破壊してせん滅してやる。殺す。殺す。


「おおお、おおおおお!!ここまでの絶望を得られるとは!!ハハハ!!ハハハハハハハ!!!滑稽。滑稽だな!!!」


よし。今すぐこの神社を潰すとこから始めよう。

私は前にと進もうとする。が、体が言う事を聞かない。なぜだ…私の全世界の崩壊計画を台無しにするんじゃない!!


「いい加減、落ち着けよバカ」


この声は…私の声だ。

なるほど…もう一人の人格がでてきた、というわけか。


「こんな簡単なのにひっかかりやがって…体、のっとるぞ?」


い、いやだ!!いやだいやだいやだ!!せっかくの私の美貌をとらないで!!世界の崩壊とか嘘だから!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいでした!!!


「おぉ…もう一人の文太、でてきてくれたかぁー…助かったよー」


ラムもなぜか安堵している。

ん?なんか不安になることがあったのだろうか?


「貴様…さっきとは様子が違うぞ…?絶望も消えている」


「俺…?俺は神走文太、16歳さ。見たところ…ふむ、好きな人に会えなくさせて絶望を吸い取っていたのか。その霊体の体と巧みな話術でも活かして呪いをかけていたのだろう?」


すると、霊体がビクっとなる。


「貴様…本当に何者だ…!?」


私の体は笑い、言い放つ。


「神走文太。契約者、さ」


「け、契約者だと!?」


「ラム」


「おうよ!」


私の体が右手を上げると、ラムがそこに、乗る。


「契約者ごときがぁ!!我をあまり、舐めるなぁ!!」


霊体が飛び上がり体から闇の刺をつくりだす。


「ほう…やはり攻撃系の呪いもあったのか」


そのまま霊体は私の体に向かって落ちていく。


「ラム、伸びろ」


私の体から言葉が出ると、ラムをつかみ取りそのまま霊体にむかって手を振り下ろす。ラムの体は伸びていき霊体にまとわりついた。そして霊体の落下がとまる。


「グッ…きさ、貴様ァァァァ!!!」


「人に不幸しか与えない霊体は…死ね」


私の目が一瞬見開くと、ラムの体に気が送られる。


「グワァァァァァ!!や、やめ、やめろ!!やめろォォォォ!!」


「ウオオオオオオオッ!」


そしてそのまま霊体が私の体の中に吸い込まれていき、最後は完全にとりこまれた。


「おい、もう一人のバカ。マジで変なことをしようとしたら次は体を失うと思えよ」


途端に、私の体の感覚が戻る。

周囲から結界がなくなり、ラムも姿を消して元の神社内の景色になる。

あー…怖かった…でもあの冷たい目がまた…///


「おーい、文太、おまたせ…って、なんでへたりこんでるんだ?」


「あぁ…いやちょっと…私が怖くてね」


「うん?」


なんだか良く分からないと言った様子だったが文太は深追いはしないでくれた。


「じゃあ、飯食いに行こうぜ!今日はお袋外食してこいって言ってくれてさ!」


「あ、あぁ…そうだ。高林」


「ん?」


「私はもう高林が告白成功すると、思えるよ」


ふと、私自身でも軽く言ってしまった。だが、嘘はついていない。本心だ。


「へへっ、ありがとうな!!」


高林は照れくさそうに笑い、手を伸ばしてきた。その手をつかみ起き上がらせてもらう。


「んじゃいこうぜー!!」


「うん」


この時の私の心は暖かかった気がする。



やれやれ、全く。


兄貴に飯いらないってメール、いれとくかな。

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