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恋の神様?(2)





「さて、転校生の神走兄弟がいることだし改めて紹介するがこの学園ではもうじき学園祭、星祭りがある。それで、うちのクラスの出し物だが…」


午後HRの時間。先生の話に一瞬、クラス中の目が真剣になる。


「まぁ、お前らテキトーに決めてくれ」


ズコオオオオオオオ!!!

なんなんだあの教師は!!テキトーな感じは前々から私も感じてはいたが…感じてはいたが…!

兄貴も同じような反応をしている…


「私、喫茶店やりたいー!」「いやいや、」


様々な意見が飛び交う。

黒板に次々に書かれる候補。


「ねぇねぇ、文太はなにかやりたいことあるの」


前の席の高林が椅子をこちらに向け話しかけてくる。


「え、私が、か…?」


ふと、ラムの姿が思いつく。


「お化け屋敷…とか?」


「あー!お化け屋敷!!いいねー!!」「文太君がお化け屋敷だって!!」


いつの間にかに周りに集まっていた女子たちが次々に声を上げる。なんなんだこの早さは。こいつら実は全員異人か霊体なんじゃ…?


「うーん…文太も大変、だねぇ…」


高林が笑いながらこっちを見て笑う。全く、こっちは気が気じゃないのに。


「よし、じゃあこの中から選ぼうか」


書記担当の男子生徒が書き終えチョークを置く。

様々なリストが上がったが、結局何一つ決まらず別日に持ち越しとなった。


「まぁ出し物は次の時に決めるとして…星祭り実行委員会を今日中に3人決めなければならないんだが…やりたい者はいるか?」


「はい」


先生の質問に高林が即答する。


「あー、じゃあ高林、頼む。他には?」


「ねぇ、高林。そんなにこの委員会って面白い物なのか?」


即答で答えた高林。私、気になります!


「あぁ…元々皆委員会に入っていてそれにまた新しい仕事しないとだから人気は無いんだけど…俺はこの準備が好きなんだ。それと…もう一つ理由は別にあるんだけど…」


「誰もいないのかー?」


高林の話を遮るように先生の声がかかる。


「誰もいないなら、そうだな…俺としては転向してきてどの委員会にも属していない神走兄弟に頼もうと思うんだが…」


チラリ、と爆睡している兄貴を見る。

てか、兄貴何寝てんだよ。


「どうだ?神走弟」


寝ている兄貴はそのままなんですか…でもまぁ、いいかもしれない。


「はい。いいですよ。兄貴には私から話をつけておきますので」


高林のもう一つの理由を聞けるいい機会だ。それと…皆がやりたがらない事を進んでやる私、かっこいい!


「よぉーし決まりだ」


「えぇー!文太君やるなら私もやりたい!」「私も私もー!」


またも騒ぎ出す女子たち。


「あれ…でもそうすると強心君とも一緒にってこと…だよね?」


急にひそひそ話になる。ひどいなこいつら。あぁ見えて兄貴傷つきやすいんだぞ。間違い無く今ので私のこのクラスの騒ぎ出した女子たちの好感度は下がったからな。


「ん…」


あ、兄貴が起きた…傷ついてなきゃいいけど…ってあの様子じゃ気づいてなさそうだな。


「はっ、はぁぁ!?委員会!?俺が?はぁぁ?」


兄貴が勢い良く立ち上がる。


「寝ているお前が悪い」


先生の一言に何も言い返さず兄貴は座った。


キーンコーンカーンコーン


「よし、じゃあ星祭り委員会は決まったし出し物は次の時だな。今日は特別にSHRで伝えることもないし清掃当番や委員会、部活の無いものは帰っていいぞー」


鐘が鳴り先生が立ち去る。


「なぁ、高林。この後星祭り委員について教えてくれないか?兄貴にも説明したいし」


「えっ、俺は…予定もないしいいけど…いいのか?」


チラっと横を見る。

恐らく先日のように今にも飛びかかってきそうな女子たちがいた。


「うん。私としても今日はご遠慮願いたいというか…」


女子たちに聞こえない程度で言う。


「そっか…じゃあ家にでもくるかい?」


察してくれたようだ。助かる。


「あぁ。悪いね」


「文太ー、今日はどーすんだー?」


横に来ていた兄貴がカバンを片手に話しかけてくる。


「あぁ、今から高林の家に行こうかと思って…星祭り委員会の事も聞きたいし」


「そっか、なら先に帰ってるわ。帰ってくるとき飯いるならまた連絡くれ。高林、弟をよろしくな」


兄貴はそのままくるりと方向を変えて教室から出ていった。


「ねぇねぇ」


「うん?」


「文太の兄さんはさ…悪い人じゃないの?」


突然の高林の質問。

ふむ…兄貴が…?

それは、もちろん。


「いい人だよ。困るほどにね」






「おおおおお…」


目の前に広がる光景に思わず声を上げてしまう。

ところどころサビが入ってはいるものの綺麗な大きい鳥居。奥には恐らく石で作られている2頭の狛犬。そしてお賽銭とつる下がる鐘の紐。その前には立派と言わざるを得ない神社。


「あぁ、初めて家に来た人は大体そんか反応をするよ」


高林の言葉に我に返る。


「神社に住んでいるのか…?」


「うーん…正確に言えば神社というより、境内かなぁ」


すると、神社の方から一人の女性がこちらを見て会釈してくる。私も会釈し返す。


「あれはうちの母。親父は別の仕事をしていて家にはいないよ」


というと、本殿(恐らく)とは違う方向に進んでいく高林。


「おい、文太。急にでてごめんな。なんかここ…感じるぞ」


突如ラムが姿を現す。

周囲に人がいる時、私達は1つ決めゴトをしていた。ここでいきなりラムに話しかけたら高林は私がいきなり一人で誰かに話しかけてる…なんとも言えないシュールな状況になってしまう。なので、ラムが話しかけてきた場合は左目を閉じれば否定、右目を閉じれば肯定、理解できなかった場合は髪の毛を弄る、ということにしている。

とりあえず、了解の意味を込めて右目を閉じる。


「僕はもうちょっと周りの様子を確認するけど…一応、文太も気をつけてな」


再び私が右目を閉じた事を確認した後、ラムは姿を消した。


「さぁ、ここだよ」


高林が立ち止まると、そこには本殿よりは小さいが和風な家が一件建っていた。




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