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☆6☆ 居候な幼女

「ディアナです!これからなにとぞよろしくおねがいします!」


「という訳で連れてきました」


「いや”連れてきました”じゃないでしょう…。猫じゃあるまいし…」


そう、既に城へ帰っていたテリアが呆れ顔で言った。


「あははは。ホントどうしよう?」


「うわ!可愛い!ねぇアルシュレット、どこにいたの?この娘?」


と、少し興奮気味な、子ども好きのフレイアそう言うと、俺が

”もしかしたらこの娘はザナディア帝国出身かもしれないんだ”

と口にする前に、先にディアナが、こう明るく返答した。


「記憶がこんだくしていてよくわかりません!!女装したおにぃさん!」


と、ディアナは熱心にフレイアをジッと見つめながら言った。


その瞬間、ピシッとフレイアの周辺の空気のみが凍った気がした。


「へ、へぇ……。そうなんだ……。

こっ、”混濁”っていう言葉が使えるなんてすごいね……」


普通ならここでは”記憶が混乱しているのね……おいたわしや。”


的なニュアンスを含む事を言うはずの所なのだが、


フレイアにはもう、他人を心配する余力が残っていないらしい。おいたわしや。小さな子の言う事は、時には残酷だ。


さっきまでほわほわとした雰囲気だったフレイアだが、今は沈没している。


「えへへっ!」


ディアナは褒めらたと思ったらしく満足そうに笑っている。


テリアもフレイアの頭を撫でて、慰めながらも薄ら笑いをしている。


随分と腹黒でいらっしゃる事で…。


さすがにフレイアが可哀想だなと思ったので、俺は今度、”テリアが最新式の胸パットで胸の大きさを盛っているんじゃねぇの?”という疑惑について、テリアに詮索してやろう。と、心に決めた。


つい最近(1年前)までテリアは極貧乳だったのだ。1年でそんなに成長するはずが無い。


本人は”急成長したんです。成長期なんだから当たり前です。”とかほざいていらっしゃったが、テリアの方がフレイアよりもさらに貧乳な可能性が高い。


と、俺が思っていると、ディアナが思い出したかのように言った。


「あっ!思いだしたかもしれないです!わたしはレノア王国出身かもしれないです!」


”レノア王国”とは、聖カタリアナ王国と友好関係にある、西南に位置する小国の事だ。


「レノア王国?わたしとおんなじだ!」


同じ出身の幼女と出会って多少元気を取り戻したフレイアが驚きながら言った。


いや、ちょっと待て。この娘本当にレノア王国出身か?


「そうですか。レノア王国ですか」


確かテリアもフレイアと同じで、レノア王国出身だ。


「まぁ出身国とかはどうでもいいんですが、住む所が問題ですよね?」


「5階の空き部屋とか良いんじゃない?」


「いえ、空き部屋にはベットすらありませんので。」


「いや、それは俺がなんとかするよ」


「そうですか?ではアルシュレット、この娘を空き部屋に案内してやってください。どこの空き部屋でもいいです。幾らでも部屋なら空いているので。先に私は食堂に行っていますね。今日のSYT(シェフが夕食作るのを手伝う当番)は私ですし」


「あぁ。分かったよ」


「テリア~、待ちなさいよ!」


スタスタと歩いていくテリアを追いかけて、フレイアも食堂へ行ってしまった。



「で、結局の所どうなんだ?」


「なにがですか?」


「とぼけるなよ…。君、ええっと、ディアナはザナディア帝国の人間じゃないのか?」


「あはは、違いますよ?貴方と出会った時は本当に記憶と意識が混濁していて、訳の分からない事を口走ってしまっただけです」


途端に口調が変わったなおい…,


「いや、ザナディア帝国の人間だとしても俺が匿ってやるから」


…実際は情報収集のために”少しだけ”

拷問されるのを覚悟してもらう事になるかもしれないが。


例え拷問相手が小さな幼女だとしても容赦はできない。


それ程までにザナディア帝国は聖カタリアナ王国の国民の怒りを買っており、その上、仮にまたザナディア帝国と戦争が起これば、少しの情報でも、持っいた方がそれだけ有利になる。


まぁ戦争が起こったとしてもこちらが勝つだろうが。なぜなら聖カタリアナ王国にはジェイシス王子がいる。


それだけで勝率が格段に上がる。現に、ジェイシス王子が軍の総帥についてからはザナディア帝国との戦争で、一度も負けていない。だが、”備えに憂い無し”だ。


「…はぁ。仮に私がザナディア帝国の人間だとしてもどうするんですか?煮るんですか?焼くんですか?犯すんですか?殺すんですか?」


と、ディアナは嘆息しながら言った。


………。尋問担当が俺や王女や”俺の近しい仲間達”であれば、そんな事は決してしないが……

”他の人達”なら……


「そんな訳無いだろう!ただ俺はディアナを守りたいだけなんだ」


俺は俺の本心を告げた。この娘がザナディア帝国出身であって、何かの拍子でその事が世間にバレれば、”王室がザナディア帝国の娘を匿っている”というレッテルが貼られ、王や、王女達に甚大な被害を与えてしまう事となってしまう。


「だから、レノア王国出身だと言っているでしょ?」


簡単には口を割らないらしい。本当の事を言っているのかも知れないが。では、少し強引だが、俺の魔法でこの娘の本音を引き出してみるか。

………セレスト。


俺は心の中で短い呪文を詠唱した。


「…本音は?」


すると、その幼女は目の光を失って、

本音を…


「もう、しつこい人ですね……。レノア王国出身ですよ。もう2度と同じ事は言いません」


言ったのか?普通ならこの魔法をかけられたら、目の焦点が合わなくなるはずなんだが…。完全に正気を保っている様に見える。


「あはは、何かおかしな事でも?」


「いや、なんでもない。なら良いんだ」


何か違和感を感じたが、100%この娘がザナディア帝国出身だと決まったわけじゃないしな。この件は一応置いとくか?


俺は一抹の不安と疑念を抱きながらその不可思議な幼女と共に空き部屋の多い5階へと向かった。




その時、俺は欠片も気づかなかったんだ。



この娘との偶然の、いや、”必然だった”出会いが俺の人生をことごとく、絶望的なまでに大きく変えてしまうという事に。


そして、軽い気持ちで重大な事を後回しにしてしまった事によって激しく後悔する事になってしまうという事に。







その時、俺は知りもしなかったんだ。



本来知ってはいけなかった事実。


知らなかった方がずっと幸せで過ごせたはずの真実。


そして、もう後戻りの出来なくなる

現実に直面してしまう事を。


もうこの時点で未来は変えられなかった。


もう全てのことがこの時点で起こってしまっており、遅かったのだ。


そして、生誕祭の最終日、全てが終わり、全てが始まったのだ。


この娘によって無限のループに終止符が打たれる。


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