☆4☆ 王女(幼女)の趣味
フゥ〜今日は大分疲れたな…。
今日は頼み事と、交渉で1日が終わってしまった。
まだフレイア達は城に帰ってないだろう、まだ17時だし…。あいつらは地方に行ってるからおそらく夜に帰ってくる。
まぁいいや、先に帰っとくか…。
そう考えながら城の前に立ち塞がっていると、突然、城の正門が開いた。
ぎぃぃぃぃ。
「やぁ、アルシュレット。今帰りかい?」
「!、ジェイシス王子!はい!只今戻りました!本日の活動報告を申させて頂きます!!」
「いや、いいよいいよ!いつも通りちゃんとやったんだろう?今日もお疲れ様」
「労いのお言葉有難うございます!ジェイシス王子」
「ハハッ、どうかそんなに堅苦しくしないでくれよ。アルシュレット。
では、僕はもう行くよ」
「はいっ!行ってらっしゃいませ」
そう俺が返すと、王子は苦笑いしながらも、優雅に出かけて行った。
ジェイシス=カタリアナ。
王女メロアの兄であり、俺が最も尊敬している人物だ。週に一度俺の剣術の修練に付き合ってくれている。剣術も相当な腕であるが、魔法の腕は聖カタリアナ王国一番だ、とも謳われている。その上、頭も切れる万能の天才であり、戦術を組むのも上手く、聖カタリアナ王国軍隊の総帥をやっている。其処まで才能に恵まれて居ながらも謙虚な性格をしており、人徳も兼ね備えている、
俺の人生においての最終目標の様な人だ、あの人は。
〜
城に入ると、城内は静かだった。元々使用人は余り雇っておらず、国の重要人物は各国を飛び回っているか、国の役所で仕事をし、そこでそのまま寝泊まりをしているので基本的にはあまり人がいない。いつも居ると言えば、城の警備兵と王女専属料理人位だ。この国の生誕祭近くとなれば(より忙しくなるので城が静かになるのは)尚更だ。
とりあえず、王女に活動報告を済ましておくかと思い、俺は王女の執務室兼、部屋がある城の最上階である8階へ上がった。
☆
城の最上階に上がると、なにか、とても可愛い上機嫌な少女の歌声が聞こえてきた。
「ふふふ、ふ〜ん♪わっ♪たっ♪し♪は、メイドさん〜☆俺TUEEE系ヒロイン!メイディはに〜!俺が全世界をぶっ潰す〜敵は全部瞬殺だぁ〜!…
お兄様!まじ強い☆
…,割とツッコミ所満載な歌だった。
誰だ?こんな歌を王女の部屋で歌っているのは?
階段を数十歩歩いた所にある王女の部屋のドアが少しだけ開いていたので
そおっと中を覗いてみた。
すると、全く予想外の光景が目に飛び込んできた。
王女が、
メイド服姿で、
(ノリノリで)今流行りのアニメソングを歌いながら、
腰を振って踊って居たのだ。
”アニメ”とは、石と石の間に映像が浮かび上がる魔導具、”シーザー”を通して放送される、2次元のキャラクターが動く動画の事である。
他にも、”シーザー”は王国や他国で起きた情報を民に伝えるなど、様々なもので活躍している。
が、そんな事はどうでもいい。この様な王女の失た…行動は10年間もの間、王女に仕えてきたが、初めて見る。王女は、生誕祭のおかげで浮かれているのか?今まで王女の奇こ‥行動が周りにバレて居なかったと言うことを鑑みると、王女(14歳)は(コスプレして、幼女用アニメのヒロインに成り切って踊りながら歌う)趣味を隠してきたということだ。もし仮に俺がそんな趣味を持っていて、その事が他人にバレてしまった暁には軽くトラウマものだ。自殺ものだ。
要するに俺は見なかった振りをすれば良いことだ。見てしまった事なんてバレなきゃ良い。
そう考えた俺は、現在歌詞の2節目を歌っている王女にバレずに階段から下へ降りようと試みた。
「私を置いてゆくとは、見損なったぞ!其処で王女の部屋をさっきからずっと愕然としながら覗き見をしているアルシュレットぉぉぉ!!」
が、ゴミ箱を被りながら叫んでいるとある馬鹿によって俺の現状況をわざわざ説明されてしまい、王女に気づかれずに脱出は失敗に終わってしまった。
「ひゃい!?」
予想通り王女の素っ頓狂な声が上がる。そして、王女と俺の眼が合う。
「あ、あ、あ、アルシュレットに見られたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!いやぁぁぁぁぁ!!」
と、王女は熟れたトマトの様に顔を真っ赤っかにして、王女の部屋の奥にあるテラスからロープと共に飛び降りた。
流石にこれは予想外だった。
って、悠長に思ってる場合じゃねぇ!
「御無事ですかぁぁぁぁ王女ぉぉぉぉぉっ!!」
と叫びながらテラスから下を覗いてみると、王女が全力疾走で城の領地をでて行っている様子が伺えた。
とりあえず無事の様だ。だが、王女一人で街に出て行くのは危ない。
「ルシアぁぁぁぁぁぁぁぁ!!警備兵に王女を探しに行かせろ!!今、直ぐにだ!!」
「えっ?なんでそんなに慌ててんの?
アルシュ〜♪王女が、なんだって?」
「………ふぅ。警備兵を、呼んで、王女を、探しに行かせろ、オーケー?」
「王女がどっか行っちゃったのか?」
「いいから、早く!!」
「イ、イェッサー!!」
ダダダダダダダダダダっ
ルシアがやっと慌てて走って行った。
王女の事をルシア達のみに任せては、少し心許ないので、俺も一緒に王女を探しに行った。