☆17☆ 2日目、我が誕生日は幼女とデート。
目が覚めると、両手には幼女2人がスヤスヤと寝ていた。
なんて幸せなんだ……ぐへへ。
レミナリア山で前世の記憶を取り戻してからというものの、改めて、この状況がいと幸せである事に気がついた。
ディアナと王女と一緒に寝だしてからも、依然として様々な種類の悪夢をみるが、起きた時にはこの2人をみて安心感を抱くようになり、起床直後の気分は多少マシになった。
当のディアナと言えば俺の腕に涎を垂らしながら寝ている。
まぁ、かと言って別に腕についた涎を舐めたりは流石に俺でもしない。
ホントだぞ?
そう思いながら、俺は起き上がった。
「へぶっ!?………すぅ……すぅ…」
すると、俺の腕から、頭がベットに落ちたディアナの素っ頓狂な声があがった。
が、そのままディアナは起きずに気持ち良さそうに寝ていた。
王女は、こちらに背を向けて寝ていたので被害は受けなかった。
俺は、紳士っぽく、ハンカチで左腕についたディアナの涎を拭き取って、俺の部屋を出た。
☆
今日は生誕祭2日目。特に俺達が参加しなければならないイベントは存在しない。
だから、今日は城でゆっくりするというのも1つの手だが、どうしようか?
そう思っていると、後ろから声をかけられた。
「おはよう、アルシュ」
「!おはよう、フレイア」
今日も全く成長の見られない胸を見られて、幼女、貧乳が多少好きな俺にとったら感激だ。
「あの、その、アルシュ?渡したいものがあるんだけど?」
フレイアが詰まり詰まりになりながらそう言った。
何だ?渡したいものって?
「はいっ!これあげる。きょ、今日ってあなたの誕生日でしょ?だからその…」
あぁ、そう言えばそうだった。完全に失念していたが、今日は俺の誕生日だったのだ。
「受け取って?」
「お、おう」
俺はそう返しながら、ラッピングされた袋を受け取った。
「ちなみに中身はなんなんだ?」
「チョコレートよ。……手作りの」
フレイアは微かに頬を染めながらそう言った。
そんな感じで照れられたらこっちも反応に困るんだが……。
「そんなに怪しまなくても毒とか入れてないわよ?」(自分の唾液と血液なら多少、いや、結構入れたケド。将来アルシュと深く結ばれるように)
「そっか、ありがとな」
俺はフレイアの頭を撫でながらそう言った。フレイアの頬がさらに上気する。
流石に子ども扱いされるのは恥づかしいのだろうか?
だが、フレイアと俺は5歳離れているので、まるで妹のように接してしまう。
「じっ、じゃあね、アルシュ!」
そう言って、フレイアは踵を返してどっか行ってしまった。
ぼぉぉっとしながらフレイアを見送っていると、また後ろから声をかけられた。
「ずいぶんとイチャイチャしていたね!」
(テリアより先にフレイアを消すべきね………)
「そうですね、あの2人は付き合っているのでしょうか?」
「!?ディアナと、テリアか?」
なんでテリアはこっちを向かないんだろうか……?
「どうしたんだ?こんな朝早くから2人揃って?」
この2人が一緒にいるのは珍しい。
フレイアとディアナが一緒にいるのはよく見るんだが。
「こっ、これあげます。」
と、こっちを向いたテリアが何故か照れながら言った。
なんでだろう?毎年誕生日プレゼントを用意してくれていたから、今更恥ずかしがる事は無いはずなんだが……。
何をくれるんだろうか?
「わたしからもあげる!」
(私の血が入った愛の結晶を。)
そう元気良くディアナは言って、俺に真っ赤なクッキーを渡してきた。
イチゴクッキーだろうか?
テリアの方は俺の手には渡さずに、わざわざ俺の足元にラッピングされた袋を置いて行った。
「では、失礼させて頂きます」
そうテリアが言って、テリア達は早歩きで去って行った。
ちなみにテリアがくれたプレゼントを開けてみると、中には、ポールギャグ、ムチ、バイブが入っていた。
誰に何を吹きこまれたのだろうか?
☆
そして現在、祭が盛り上がってくる時間帯である昼。
俺は変装している王女と一緒に、賑やかな街を歩いている。
流石に王女という身分でも、王室の仕事だけで生誕祭5日間が潰れてしまうのは虚しすぎるだろう。
そう思って無理矢理連れ出してきたのだ。ただの押し付けだが。
ちなみに王女が変装している理由は
王女がいつもと同じ姿で外に出てしまったら、周りが混雑してしまうからだ。
王女メロアは、王女であるという肩書きの上に、その可愛い容姿、ちっちゃいのに頑張っている、などの理由で、身分が高いとか以前にとても人気者なのである。
だから、今変装をしている。
いつもツインテールにしている髪を下ろし、黒色のウィッグを頭にかぶって、その上に化粧をした王女はとても大人びて見えた。
心無しか、今俺は、見違えた王女の姿をみて、緊張している。
「お、王女様、次は何処へ行きますか?」
14歳の娘に、21歳の成人した男がキョどりながら話しかけている。
日本で なら、職質ものだろう。
「妾はもう大丈夫だぞ?もう城に帰りたいっ!」
なんて欲の無い娘なんだっ!
まだ屋台を2件しか回っていないのに。
「いけませんよ、王女様。こういう時はめいいっぱい楽しまないと!」
「もういいのだ。今日はお主の誕生日だろう?お主が楽しまないと!」
「いえいえ、王女が楽しいのなら俺も自然と楽しくなるんです!」
「そっ、そうか?…なっ、ならもうちょっとだけ」
そうして、その後、俺と王女は一緒に沢山遊んだ。
そして王女が、本当に帰りたがるようになったので、
俺は、俺達は城に帰った。
☆
現在、時刻は夜。
外の国民はみんなフィーバー中。
そんな時に、わざわざ俺達はボロくて狭い食堂に集まっている。
「それでは皆の者っ!我がバカ執事の
お誕生日を今から開催するぞっ!」
そう王女が言った直後に、イェーイ、フーッ、ウッキっ〜〜っ、などの歓声が上がった。
最後のはルシアの雄叫びだ。
結構、俺の誕生日会に集まってきてくれたようだ。去年より少し増えている気がする。
今この場にいるのが、
王女メロア、ジェイシス王子、俺、ルシア、ジョニー、フレイア、テリア、ディアナ、グスタフ将軍、後、この王国の兵士達、
そして、この国の外交官である、
ソフィー=メルビィナ、そして、そのお付きの人、いわゆる、秘書の人まで来ている。
名前はカルラだ。それは置いといて、
このソフィーという奴は、ルシア並に面倒くさい。まぁ、良いやつではあるのだろうが。
と思っていると、当の本人である
ソフィーが、俺に早速話しかけてきた。
「おっはよー!アルシュレット!今日は王女様の誕生日だよね!?」
この時点でツッコミどころが二つあるが、まぁこんな些細な事に突っ込んでいては俺の体が持たない。
「ソフィー様、今の時刻は夜ですので、その挨拶の仕方はおかしいですよ。
後、今日は、その王女の執事であるアルシュレット様のお誕生日です。」
(あぁっ!?なんて可愛いのっ!我が愛しのソフィー様っっ!朝と夜の挨拶を間違えちゃうなんてっ!素敵っ!あぁ、この娘を永遠に牢屋に閉じ込めて、我が妻にし、是非ともっ永久に私の物にしたいわっ!あぁ、可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い、今すぐ、抱きしめたいっ!!やばい、涎がでてきちゃったわ。でも、こんなに私はこの娘の事を”愛して”いるのに、邪魔者が出てきてしまった。
アルシュレット=マクレアス。
我が殺戮対象かつ、ソフィー様が最近気になり始めている男である。
さっきの発言だってそうだ。ソフィー様は照れ隠しでわざとあんな事を言っているのだ。まぁ、おはようと言ったのは本当に天然で言ったのだろうが。
あぁっ!そんなとこが可愛いっ!じゃなかった。
そういう訳でアルシュレット=ゴミクレアスは、私の敵なのだ。)
[←カルラの心の中]
ふぅ、カルラさんのツッコミ?のおかげで俺がソフィーと話している時はいつも助かる。
カルラさんは、俺と分かり合える、数少ない常識人の内の1人だ。
「で、なにか用か?ソフィー?」
「はいっ!これ上げるっ!」
ソフィーはそう言いながら、俺にあるものを渡してきた。
そして笑顔でその、ラッピングされた品物を宣言した通りに上に上げた。
「えへへっ!」
ソフィーが”してやったり!”と言いたそうな顔でニッコリと笑った。
「…………………………」
クソッ、テンプレっ!あざといっ!、やる事が幼いっ!幼女っ!可愛いっ!!
そして何故かカルラさんが涎を垂らしている。大丈夫だろうか?お腹が空いているんだろうか?
「冗談、冗談♪、はいっ、今度こそ、これあげるっ!」
ソフィーがくれたのは、執事服のネクタイだった。
……結構嬉しい。ちょうど新しい執事服のネクタイが欲しかったのだ。
「ありがとな、ソフィー」
そう感謝の意を込めて、俺はいつもの癖で、ソフィーの頭を撫でた。
「えへへっ!」
ソフィーも満足そうだ。
「どう致しましてっ!」
(頑張って選んで良かった!)
そう言って、ソフィーは嬉しそうに微笑んだ。
☆
この情景を見ていた、ディアナとフレイアは、軽い殺意を新たなる敵に抱いたのであった。
☆
そんなこんな色々あって、(グスタフ将軍にからまれたり、王が来て下さったので、名前の通り、王様ゲームをしてみたり、ルシアがテリアに変な事を吹き込んでいた事が発覚し、俺がルシアを殴ったり、まぁ本当に色々あったのだ。)最後は俺の誕生日会というよりは、複数の人(王や、王子や、兵士達など)に酒がはいったせいで、ただのどんちゃん騒ぎになっていた。
が、とても楽しかった。
ずっとこんな日が続けばいいのに。
この頃は心の底からそう思っていた。