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ワンダフル  作者:
5/9

それぞれの想い

楽しんでいただけたら、幸いです。


2016/09/25 修正

 火星人と知っているのは僕だけやから、ちゃんと世話してる姿を親に見せる必要があったので、嫌がる犬を無理やり散歩に連れて行いかないといけなかった。


広志「起きろ! 行くぞ!」


 犬「ワシは、低血圧なんじゃぁ~!」


広志「低血圧の犬なんて聞いたことないわ!」


 ズボラな犬をラジオ体操しに近くの公園へ行くだけだと説得し、ようやく起こすことができた。

 すると犬は、寝ぼけ眼を擦りながら、まるで当たり前のように洗面所へ行って、器用に歯を磨き出した。


 犬「ガラガラガラ」


広志「朝からボケんな! 疲れる!」


 犬「あ! 飲んでもうたやないけ!」


広志「ハイハイ、それが言いたかったんやろ?」


 犬「ボ、ボケ殺しとはな……」


広志「もう、えぇから行くぞ!」


 犬「引っ張んなって、く、首が締まるぅ」


 もし、母ちゃんがラジオ体操のスタンプ係りだったらと思うと、ただでさえ暑いのに変な汗まで掻かされた。

 ラジオ体操は学校の宿題でもあって、家族旅行でもない限り、夏休みの半分以上を参加しなくてはならない。

 僕は、スタンプカードを首に掛け、犬を連れて公園へと向かった。


広志「あぁ、やっぱ朝は気持ちいいなぁ」


 犬「……」


広志「知ってるか? 早起きは三文の得って言うねんぞ」


 犬「……」


広志「意味は知らんけどな。アハハハ……ん?」


 振り返るとリードの先に居る筈の犬が居い!

 遠くの方で2本の足で器用に立った犬が腰に手を当てて牛乳を。


広志「何ハズシとんじゃぁ!って言うか、他人の家の牛乳飲むなぁ~!!」


 僕は犬を抱えて、公園まで一気に走った。


 犬「ラクチンラクチン、お前の言うとおり、三文分得やったわ」


広志「二度とすんなよ!」


 犬「あぁ、今度から、コーヒー牛乳の方にする」


広志「牛乳の種類じゃな~い!」


 お陰でラジオ体操の前に、心も体もドッと疲れた。

 体操中にイランことせんよーに、滑り台の梯子にリードを括り付け、犬を睨みながら体操をした。

 ラジオ体操が終わると、子供たちが犬に群がってきたが、観たいアニメがあるからと、小走りにその場を去った。


 世間体の散歩&ラジオ体操から帰った僕らは、茶の間で横になって、夏休みなると決まってやるアニメの再放送を観るため、テレビをつけた。


 母「広志、宿題は終わったん?」


 「後でする」なんて言わせない母ちゃんの鋭い視線が、僕らを二階にある僕の部屋へと押し上げた。

 夏休みの宿題のプリントは、嫌がらせかと思うほどに分厚く、一日一枚ずつやっても終わりそうにない。毎年のことなのに、休みの前半遊び呆けてしまったをこの時期


になって、いつも後悔している。


 答えが解らず、いつまでも書かないで鉛筆を鼻と口で挟んでいたら、犬が痺れを切らせ教え始めた。


 犬「んぁ~、何で解らんかなぁ~」


広志「分数嫌いやねん!」


 犬「どこの世界に、犬に算数教わる人間おんねん!」


広志「火星人なんやろ?」


 ここぞとばかりに、ニンマリと広志は微笑んだ。


 犬「ボケマスターのアゲアシ取るとは、えぇ根性しとるやんけワレ!」


広志「なんやねん、ボケマスターって?」


 犬「ボケマスター、それはボケを極めた……」


 犬が淡々と『ボケマスター』について語っていたその頃、下の階では、


 母「最近の広志、可笑しいと思わへん?」


 父「何が?」


 母「何が?ってあの子、犬に話しかけてんのよ!」


 父「可愛がってんねやろ?」


 母「違う、そうじゃなくて。この前だって……『どこがラッシーやねん。自分、柴犬やん!』とか言ってたのよ」


 父「やっぱり、兄弟おらへんのが寂しいんかなぁ~」


 そう言うと、ニヤケた表情を浮かべながら父は、母へと擦り寄った。


 母「ちょっと! 何よ!」


 父「何よって? だぁかぁらぁ~、広志にもぉ~、弟や~妹がぁ~」


 更に近寄ってきた父の耳たぶを母は捻り上げた。


 父「ア、イタ、タ、タ、タァ~」


 母「触らんといて!」


 父「イヤイヤイヤイヤ、俺は、ただ広志にだな……」


 父と母の攻防が繰り広げられていた。


読んでいただいて、ありがとう。

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