それぞれの想い
楽しんでいただけたら、幸いです。
2016/09/25 修正
火星人と知っているのは僕だけやから、ちゃんと世話してる姿を親に見せる必要があったので、嫌がる犬を無理やり散歩に連れて行いかないといけなかった。
広志「起きろ! 行くぞ!」
犬「ワシは、低血圧なんじゃぁ~!」
広志「低血圧の犬なんて聞いたことないわ!」
ズボラな犬をラジオ体操しに近くの公園へ行くだけだと説得し、ようやく起こすことができた。
すると犬は、寝ぼけ眼を擦りながら、まるで当たり前のように洗面所へ行って、器用に歯を磨き出した。
犬「ガラガラガラ」
広志「朝からボケんな! 疲れる!」
犬「あ! 飲んでもうたやないけ!」
広志「ハイハイ、それが言いたかったんやろ?」
犬「ボ、ボケ殺しとはな……」
広志「もう、えぇから行くぞ!」
犬「引っ張んなって、く、首が締まるぅ」
もし、母ちゃんがラジオ体操のスタンプ係りだったらと思うと、ただでさえ暑いのに変な汗まで掻かされた。
ラジオ体操は学校の宿題でもあって、家族旅行でもない限り、夏休みの半分以上を参加しなくてはならない。
僕は、スタンプカードを首に掛け、犬を連れて公園へと向かった。
広志「あぁ、やっぱ朝は気持ちいいなぁ」
犬「……」
広志「知ってるか? 早起きは三文の得って言うねんぞ」
犬「……」
広志「意味は知らんけどな。アハハハ……ん?」
振り返るとリードの先に居る筈の犬が居い!
遠くの方で2本の足で器用に立った犬が腰に手を当てて牛乳を。
広志「何ハズシとんじゃぁ!って言うか、他人の家の牛乳飲むなぁ~!!」
僕は犬を抱えて、公園まで一気に走った。
犬「ラクチンラクチン、お前の言うとおり、三文分得やったわ」
広志「二度とすんなよ!」
犬「あぁ、今度から、コーヒー牛乳の方にする」
広志「牛乳の種類じゃな~い!」
お陰でラジオ体操の前に、心も体もドッと疲れた。
体操中にイランことせんよーに、滑り台の梯子にリードを括り付け、犬を睨みながら体操をした。
ラジオ体操が終わると、子供たちが犬に群がってきたが、観たいアニメがあるからと、小走りにその場を去った。
世間体の散歩&ラジオ体操から帰った僕らは、茶の間で横になって、夏休みなると決まってやるアニメの再放送を観るため、テレビをつけた。
母「広志、宿題は終わったん?」
「後でする」なんて言わせない母ちゃんの鋭い視線が、僕らを二階にある僕の部屋へと押し上げた。
夏休みの宿題のプリントは、嫌がらせかと思うほどに分厚く、一日一枚ずつやっても終わりそうにない。毎年のことなのに、休みの前半遊び呆けてしまったをこの時期
になって、いつも後悔している。
答えが解らず、いつまでも書かないで鉛筆を鼻と口で挟んでいたら、犬が痺れを切らせ教え始めた。
犬「んぁ~、何で解らんかなぁ~」
広志「分数嫌いやねん!」
犬「どこの世界に、犬に算数教わる人間おんねん!」
広志「火星人なんやろ?」
ここぞとばかりに、ニンマリと広志は微笑んだ。
犬「ボケマスターのアゲアシ取るとは、えぇ根性しとるやんけワレ!」
広志「なんやねん、ボケマスターって?」
犬「ボケマスター、それはボケを極めた……」
犬が淡々と『ボケマスター』について語っていたその頃、下の階では、
母「最近の広志、可笑しいと思わへん?」
父「何が?」
母「何が?ってあの子、犬に話しかけてんのよ!」
父「可愛がってんねやろ?」
母「違う、そうじゃなくて。この前だって……『どこがラッシーやねん。自分、柴犬やん!』とか言ってたのよ」
父「やっぱり、兄弟おらへんのが寂しいんかなぁ~」
そう言うと、ニヤケた表情を浮かべながら父は、母へと擦り寄った。
母「ちょっと! 何よ!」
父「何よって? だぁかぁらぁ~、広志にもぉ~、弟や~妹がぁ~」
更に近寄ってきた父の耳たぶを母は捻り上げた。
父「ア、イタ、タ、タ、タァ~」
母「触らんといて!」
父「イヤイヤイヤイヤ、俺は、ただ広志にだな……」
父と母の攻防が繰り広げられていた。
読んでいただいて、ありがとう。




