リスタートのお正月
ちょっぴりシリアス入りです…多分
十二月三十一日の午後11時。雪がちらつく住宅街を、スーツの上にコートを着た男が歩いている。周りの民家からは家族の暖かい笑い声が聞こえてくる。
男
「今年もあと少しか……」
男はちらつく雪を見ながらしんみりと呟いた。やがて、男の自宅が見えてくる。鍵を差し、自宅に入る男。
男
「ただいま……」
家の中に男の声が消えていく。賑やかな他の家庭と違い、男の自宅は静まり返っていた。
不況の影響で勤めていた会社を経費削減という名目でリストラされ、家族を養えなくなり、妻は子供を連れ出ていった。
コートを脱ぎ捨て、ネクタイを緩める。冷蔵庫からビールとつまみを取り出してソファに座ると、テレビを点けた。芸人が有名人と対決するという番組が流れた
男
「はははは。……お、良い打球だ。おー、ピン側か…」
男がビールを飲みながら特番を観ていたその時――
ピンポーン…
玄関のインターホンが鳴り響いた
男
「おっと…。来客か」
ビールをテーブルに置き、玄関に向かう男。ガチャリと玄関の扉を開ける。そこには――…
男
「お…、お前…」
女
「……ただいま」
子供
「お父さん!」
愛する妻と我が子が玄関の前に立っていた。
男
「なんで……」
女
「一生懸命働いてくれていたのに私はあなたがリストラされた時、支えれなかった…。ごめんなさい……」
男
「…………」
女
「我が儘だって解ってるけど…。もう一度、私たちと居てくれる…?」
男はフッと笑うと妻と我が子を抱き締め、涙を浮かべながら囁いた
男
「それは……俺の方だよ」
女
「ありがとう……」
家族のやり直しの正月が始まった