広場のあの子
私が塾から帰るときに赤と藍に染まる夕暮れに伸びる坂道に目を止めて坂を登り始めた、此れが最初の私と彼女の始まりで終わりでもあった。
ー広場のあの子ー
私はお気に入りの小さなオカリナを首に下げて重たい塾のテキストが入ったリュックサックの紐を肩に食い込ませながら坂を上ると、煉瓦で階段を作る山道に目が行った、私は好奇心に駆られるままに山道の階段を登っていった。
肩に食い込むリュックサックの重さと階段に息を切らせて喉が痛くなってくる、やがて階段が終わる頃には赤い夕焼けの空が森の木々の間から差し込み、頂上へ抜けていった。
其処には煉瓦で出来た小綺麗な広場で街を一望できた、夕闇と夕焼けに混ざる空に家々の灯火が美しく光っていた、休憩がてらに私はリュックサックを置いて首に下げているオカリナをそっと吹いた。
オカリナからは甲高く美しい音色を奏でている、そして私の音に釣られるかの様にまた知らない笛の音が私の背後から聞こえてきた。
後ろを向くと黒い髪を肩に切り揃え、黒目がちの大きな目をした、とても色の白い少女が私に人懐っこい笑顔で縦笛を握りしめていた
「一緒に吹こう?お姉ちゃんの好きな曲なら何でも良いよ?」
そう言って彼女を横に座らせ、一緒に笛の二重奏を奏で始めた、私はつい最近覚えたケルト民謡を吹き始めると彼女も縦笛でメロディーが引き立つかの様に二重に吹き始めてまるでこの旋律が町中に響き渡っているかのようだった
そして空の色が藍色になった頃に彼女に話しかけようとしたら「ありがと」と可愛らしいメモ用紙を残して音もなく去っていた。
あの旋律もあの少女も私の夢だったのかもう解らない、しかしこの短い手紙も旋律も私の心の中に残ってて離れない。
私もこの広場を去るときに何処からかは解らないが、少女の笑い声が聞こえたような気がして振り向いたが気のせいだったようだ。
さぁ、夜になる前に帰ろう。そしてまたあのメロディーを思い出して駅まで歩いていく




