第二話 復讐
そして部屋で寝転がる。
次のイベントとは会食だ。
皆と一緒に食事を取る。だったはずだ。
そこにはライセルも同席する予定だ。
自分はライセルにまず気に入られなくてはならない。
ライセルに気に入られ部屋に案内された時に、暗殺のチャンスは巡ってくる。
その後生きて王宮を出られるかは分からない。しかし、敵が撮れた暁にはもう命を失っても別にいいとさえ考えている。
雷鳴が聴こえた気がした。
窓の外を見る。そこは雷雨に襲われていた。
この雷雨、いやな予感がする。
そう、フレーラは思った。
この日を最期に、命を落とすかもしれない。
だけど最悪そうなっても構わない。
ライムの仇が撮れるのならば。
そして、その時がやってきた。
会食の席。
「ライセル様、ご機嫌いかがですか?」
「元気だ」
「わたくし、ライセル様の声、素晴らしいと思いますわ」
「そうか」
「それで、ライセル様、リセイラ物語はご存知ですか?」
「読んでいる」
「あの作品って面白いと思いませんか?」
ラドリがもうアプローチをかけている。
その様子を見て、フレーラは軽く歯ぎしりを起こす。
アタックしなければならないはずなのに、ラドリにすべて取られてしまっている。
このままだとだめだ、というのは分かっているのに。
それはシズも同じようで、軽く俯いてしまっている。
その中で、ライセルは、
「一ついいか?」
そう訊いた。
「はい、何でしょう」
「貴様にじゃない。皆にだ。貴様たちはなぜここに来た」
「それは、らライセル様の妻となりに」
「そうじゃない。なぜオレの妻になりたい。別にオレの妻じゃなくてもいいはずだ。オレのどこを気に入って王妃になろうとしているのか。それを知りたいのだ」
その瞬間会場に、軽い緊張が走る。
この国の、王妃になるため。というのが基本線となりそうだが、ライセルはおそらくその答えを求めてはいない。さて、どういえばいいのだろうか。
まず、手を上げたのはラドリだ。
「ライセル様が凛々しいからでございます。7年前、そのご尊顔を見た時に惚れてしまいました」
その言葉に、ライセルは軽くうなずき、「次」と言った。
どうやら気に入らなかったらしい。
「貴様は」
シズにライセルは目をかける。
「わたしは……」
シズは、軽く考え込み、
「わたしはこの国の役に立ちたいからです」
「それはどのように」
「わたしは、この国に貢献したいのです。そして、ライセル様の子を産みたいとそう思っております」
「次」
ライセルはこれにも気に入らないらしい。
そしてついに、フレーラの番が来た。
フレーラはつばを飲み込んだ。
(何を言えば良いのだろう。当然に言うならば、貴方の事を殺したいから。だけど、そんなこと言っても選んでくれるわけじゃないし)
そして、暫し小考した後、
「わたしはこの国の歴史を変えたいと思っています」
「ほう」
「この国は、ずっと困難に陥っています。ライセル様もご存じでしょうが、反乱が絶えません。それにはライセル様も原因の一端を担っていると言いたいです」
その言葉に、ライセルは「ほう、オレを前に何という態度だ」
そう、声を荒げ、ラドリとシズがびくっと肩を鳴らす。
しかし、フレーラは物怖じしない。
「事実です。だけど、ライセル様も好きでこのような状況にしたわけではないでしょう。だからわたしがライセル様を支え、豊富な知識を元手に、ライセル様を賢王にしたいと思います。今の愚王という評価を変えたいと思います」
「ふははははは」
ライセルが噴き出す。
「オレを前になんて胆力だ。いいだろう。今宵は貴様と一緒に寝よう」
賭けだった。
ライセルは自分の事を全肯定する人間が嫌いであろうという予測を持ってのかけだった。
しかし、成功したようだ。
今宵の相手に選ばれた。後は、隠し持っているナイフでライセルの首を斬り落とせば成功だ。
愚王の時代を終わらし、そして死んだ皆の敵を討つ。
それだけを生きがいにして生きてきたのだ。
その日の夜。首を取るために。
「お邪魔します」
フレーラはその日の夜。
ライセルの部屋に入る。
ベッドで寝るとは言っても、いきなり生殖行為を行う訳ではない。相性を確かめ合うために二人きりで過ごすという訳だ。
「君は何を持ってあの言葉を言った」
ライセルはフレーラの顎を指でいじくりながら言う。
「ライセル様は、苦しんでいるでしょう」
「苦しむ、何がだ」
「外面では威張ってはいますけれど、内面では不安なのでしょう」
「残念だったな。オレは自分自身が好きだ。むしろ貴様の方こそよくこの部屋に来た。この部屋で殺されても誰にもオレは咎められんのに」
「あなたはそれをするほど、愚王ではない」
そして、フレーラは、服の内側にあるナイフをさする。
「今日既成事実を作ってもいいのですよ」
「はっ、それにはまだ早い。それにオレはキサマを認めてはいない」
「なら、なぜこの部屋に」
「決まっている。確かめるためだ。お前の本意を」
そして、そのライセルのきれいな顔がフレーラを向き、ライセルはフレーラの手を掴む。
そして、一気に床に叩きつけ、服をほどいていく。
その下には下着姿だ。
だけど、襲うために体をはいだわけではないと、すぐに分かった。
ナイフは服の内側に隠している。
「やはりか、そう言う事かと思った」
「っ」
フレーラは咄嗟に足でライセルの顔を蹴り上げた。
そして、地面を手で押し上げてナイフを手にする。
「無駄だ」
そう言って、ライセルはすぐに、フレーラのナイフを手で受け止めその隙にフレーラの顔に拳を一発。
そして、ナイフを弾き飛ばした。
「男女の体格差を甘く見るな」
あっさりと鎮圧されてしまった。
「さて、どうしようか」
★
しまったしまったしまったしまった。やらかした。
どうしよう。
私の思考は巡り巡っている。
それこそ過去にないほど頭の中がぐるぐるしている。
まさか、計画に気づかれていたなんて。
それほどに、わたしは分かりやすかったのだろうか。泳がされていたのだろうか。
どうしよう。
死にたくない。
この男を殺す前に死にたくない。
「わたしを殺す気ですか?」
「はっそんなわけがなかろう。勿論憲兵にわたしてそれ相応の処遇を受けてもらうさ」
「死刑、以外ありえないのでしょ」
国王を狙うという事は、未遂に終わった時死刑確定だ。
暗殺という行為は国の地盤を揺るがす行為だ。
未遂に終わったと手、生かしてくれるはずもない。
最悪終身刑に終わるかもしれないが。
「だけど、それでは面白くない」
「は?」
「決めた。貴様をオレの后に採用」
その言葉を聞いて、わたしは「は?」と言葉を漏らした。
「どういうこと?」
「貴様を后にすると言ったんだ。二度も言わせるな」
「意味が分からない」
「分からないだろうな。だけど、オレの后になると言わなければ貴様はすぐに監獄行きだ。良くても終身。悪ければ、死刑だろうな」
「分かりました」
脅しだ。
そんなことを言われて牢獄行きを選択したくはない。
そしたら、この男を殺す意味はなくなるのだから。
「だけど、一通りの事はしなければならない。一週間待て。その日に貴様を后に迎え入れよう」
「……私は后にはなりたくありません」
「その場合は牢獄行きだな」
そう言ってライセルは笑う。
「まあ考えておけ。オレの后になるか、死ぬかどちらがいいのかをな」
そして、わたしはライセルの隣で寝た。
ナイフは解かれ、念のため腕を前で縄で縛られている。
ライセルの首を絞められない様に。
寝られない。
この人は近くで見れば筋肉質で、確かに憧れるのも分かる。顔は凛々しいし、声もいい。
だけど、そんなので、わたしの家族を殺した罪が消えるわけがない。
わたしの脳内に色々と思考が巡る。だめだ、寝られそうにない。
結局その日は、あまり眠りに落ちる事も出来ずに苦しむこととなった。




