僕は必ず報われる
「さて。休憩も済んだし次だ次。さっさと始めろ」
【……私に対する不信感などはないのですか?】
「あるに決まってるだろ。逆に何でないと思ったんだ頭の病気か?」
【……その割にはまるでこちらに注意を向けていないようですが】
話が終わるまではスタート出来ないらしい。
強制会話イベントとか萎えるわとぼやきつつルイはその場に寝転がった。
話が長くなるからということだろうが態度悪いなオイ。
「聞いて何か答えてくれるのか?」
ブラウンが何者で何のために世界の滅びを回避しようとしているのか。
何が原因で世界が滅んでいるのか。
世界を巻き戻せるほどの力があれば自分で何とか出来るのではないか?
疑問疑惑は挙げていけばキリがない。
「でも僕にはそれを答えさせる強制力がない」
つまり無駄なのだ。今必要なことだけを考えた方がよほど有意義というもの。
まず第一に世界が滅ぶのは自分にとっても不都合であること。これは揺るがない。
ならば滅びを防ぐという点で利害は共通する。
「世界を救うなんて過酷労働を僕に強いるのは甚だ遺憾だが」
【救世をブルーカラーて】
「まあ他が無能揃いだというのであれば致し方ない」
次に救済に付随する繰り返しという現象。これは単純に得だ。
何もかも周回に引き継げるわけではないが繰り返せば繰り返すだけステータスを上げられる。
「とは言えこれは申し訳なくもあるけどね」
悲し気に目を伏せこう続ける。
「前も言ったけど百点満点の僕が更に点数を積んでしまえば他の人類があまりに惨めだから」
【前も思いましたが傲りのスケールがデカ過ぎるでしょう……】
「とは言え世界を救うために必要だというのであれば受け入れるしかない」
ブラウンは完全に無視されていた。
「敢えて泥を被る献身に僕は涙が止まらないよ」
ルイはふぅー、と息を吐き髪をかき上げた。
その何気ない仕草の腹が立つこと。RPGならヘイトタンクとして大活躍だろう。
【次の周回が始まったら献身という単語を広辞苑で引いてみることをおススメします】
「その必要はない。意味は僕だ。他にも慈愛、慈悲とかそれらも僕だ」
【広辞苑に謝罪してくれます?】
ブラウンを無視しルイは続ける。
「今挙げた二点は揺るがない。ならば世界を救うまでは対立はあり得ないわけだ」
世界を救った瞬間に切り捨てられる、などという危惧もあるにはある。
だがそれは今考えても仕方のないこと。
「ある程度、目途が立ってから考えれば良いし……まあぶっちゃけそこの心配はしてない」
【その心は? まさか私を信じているからというわけではないでしょう】
不信感はあると明言しているのだ。
ならば先の危惧をそこまで重く捉えていないというのはおかしいだろう。
「僕だぞ?」
【……はい?】
「存在するだけでこの世の何よりも貴い僕が世界を救うという徳まで積むんだ」
最早、過去現在未来を見渡しても自分に並ぶ者は居なくなる。
「そんな僕が報われないなんてあってはならない。僕が報われなかったらどうなる?」
【どうなるって……どうなるんです?】
「僕以下の人類は生きてたって何も良いことがないってことになるじゃないか!!」
そうはならんやろ。
「僕は必ず報われる」
だから仮に世界を救った段階でブラウンが敵対しても問題はない。
窮地に陥ってもどこからか必ず逆転に繋がる手が差し伸べられるから。
【馬鹿?】
言いたいことが積み上がり過ぎて逆にもうシンプルな罵倒しか出ないやつぅ。
「僕を選んだ“お前が”その証明だろう」
ルイはブラウンを鼻で笑い飛ばし反論した。
「一周目。世界の滅びと共に僕という人間の連続性はそこで途絶えるはずだった。
だがお前が現れ今もこうして僕は僕のまま続いている。
お前の意図は分からないけど事実として僕は変わらず僕のまま。
ならば次も絶対、そうなる。お前以外の何かが必ず僕を助けさせてくれと頭を下げに来る」
そうならないなら世界がおかしい。
そして、
「世界がおかしいならそれを正すのが絶対の正しさを持つ僕の役目だろう」
だから死なない。終わらない――何だコイツ無敵か?
悪質な無限ループに陥っていると言わざるを得ない。
【いや、もう、何でしょう……良いです、はい。もう良いです。もう食べられない】
ひたすら肉とニンニクと米を胃に詰め込まれてもこうはならないだろうという胃もたれっぷり。
ブラウンはもう食べられません限界ですと白旗を挙げた。
「まったく無駄な時間を取らせて……だが良い、許そう。僕は優しさも百点満点だからね」
さあ次の周回へと言ったところでまたしても待ったがかかった。
ルイは盛大な舌打ちをかましブラウンを睨みつける。優しさって?
【始める前に決めておくべきことがあるかと】
「何だよ」
まわりくどいと更に舌打ちをかまし続きを促す。優しさって?
【新たな道が拓けたことで更に課題は増えました】
行き止まりを突破するために次なるステータスを磨く必要がある。
武術を学び戦い方を知るなどがそうだ。
だがそれはそれとして、
【刀の銘を決めておきましょう】
「は?」
【あの大小二振りが長い付き合いになることは明白です】
暫定ヒロインとのイベントでゲットした武器だ。
RPGで言うところの“それをすてるなんてとんでもない!”枠の重要アイテムである。
ヒロインとの絆によって生じたものであればこそ、ここを疎かにするべきではない。
【気の利いた銘を事前に考えておけば後々役に立つと思いませんか?】
初戦を突破するステータスが絶望的に足りていないのでまだまだ先のこと。
しかし今の内に考えておけばいざヒロインとのイベントが始まった際は円滑に進められよう。
【というわけで、です。私から推薦したい銘があるのですが】
「何だよ」
【比翼と連理、というのは如何でしょう?】
天に在つては願はくは比翼の鳥と作らん、地に在つては願はくは連理の枝と為らん。
愛を謳った有名な漢文だ。肖り元がベタ過ぎる。
【スパダリを目指す上で愛にちなんだネーミングは必須だと思いませんか?】
「じゃあもうそれで良いよ」
【結構!】
ブラウンは気付いていない。
それで良いとは言ったが別に使うとは言っていないことに。
【ではいってらっしゃい!!】
心なしかご機嫌なブラウンに送り出され新たな周回が始まった。
ルイは気持ちも新たに今周を走り抜け……。
【お前がスパダリになれなかったせいで世界は滅びました。あーあ】
「よし次だ」
【いや待ってください】
「何だよ?」
でっけえ舌打ちで続きを促す。やっぱり優しさは身に着かなかったようだ。
【――――何で前回と同じことを寸分違わずそっくりそのままやってるんですか?】
敗因、シンプルに雑魚だった(別名馬鹿の一つ覚え)。
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