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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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自認釈迦(十七歳高校生)

(よ、よくも貴様ァ!!)


 ルイは激怒した。必ず、かの邪地暴虐の元凶(ヒロイン)を除かなければならぬと決意した。

 ルイには利他がわからぬ。ルイは、利己の化身である。

 己に酔い痴れ、他人を見下して暮らして来た。 

 けれども他責に対しては、人一倍に敏感であった。


(良くしてやった僕への恩も忘れ何という厚顔無恥……これが人間失格世代……涙が止まりません)


 自分がループを強いられている原因の一つであろう存在が露呈したのだ。

 発狂するのも無理はないがそれはそれとして厚顔無恥さではルイも負けていない。

 というか人間失格世代って何だよ。


「……一先ずは大丈夫そうか?」


 外面と内面を完全に切り離せるのがこの男の強み。

 状況判断は的確で怒りに駆られながらも目敏くハジメの疲労を察知。

 城内の一室に飛び込むと馬鹿でかいクローゼットの中に隠れ潜んだ。


「焦らなくて良いゆっくり息を整えて」


 ハジメの背を摩りながら小声で語り掛ける。

 退路のない場所に逃げ込むことが的確な状況判断なのか? その疑問は正しい。


(ここに隠れている内に状況が好転するならそれで良し)


 ゆえに考えてみよう。

 その的確というのは一体誰にとってのもので一体何を指しているのか。


(あのメルヘンキラーが僕らを探し当ててもそれはそれで“良し”)


 人間関係のリセットに伴う葛藤を一切感じない。

 以前に述べたルイの強味だが彼にはまだループに対する適正がある。

 それは何か。極端なまでの割り切りの早さだ。


(この女が絶望の中で食い荒らされてくたばるのを拝むことが出来るからね。

それで一先ずの無礼はチャラにしてやろう。罪を償うなら次からは許してやる)


 死というものは生命に訪れる最大級の負荷である。

 死んでも生き返れるという保証があったとしても忌避感は決して拭えない。

 例え数回であろうと死んで蘇ってを繰り返していれば精神に異常をきたすのが当然。


(僕も死ぬがそこはまあ今更だ)


 しかしルイにはそれが一切ない。

 どれほどの苦痛であろうと最終的にリセットされるなら問題ないと完全に割り切っている。

 ゆえに自分が無惨に殺されたとしても溜飲を下げられるならOK。何の問題もないと納得している。


(――――人には自分の命よりも大切なものがあるのだから)


 お前の命は半額シールでも貼られてんのか?


(自分の命と引き換えにしてでもこんなどうしようもない奴に償いの道を示してやる。

普通なら見捨ててしまうような輩にも蜘蛛の糸を垂らしてやる僕ってばホント釈迦)


 釈迦に謝って?

 この男、これがハジメのためであると本気で信じ切っているのだから困る。


「……何で」

「うん?」

「何で、何でそんなに落ち着いてるの? おかしいよ、絶対」


 恐怖、怒り、嫌悪。

 ルイを見つめるハジメの目には雑多な感情が滲んでいた。

 総じて言えるのはプラスは何一つないということ。

 そりゃそうだ。こんなイカレタ状況で平然としてる奴なんて不気味としか言いようがない。


「別に落ち着いてるわけじゃないよ」

「そんなの」


 嘘だ! と叫びそうになる寸前でルイの人差し指がその唇を塞いだ。


「ただやるべきことを理解しているだけさ」

「やるべき、こと?」

「君を守る。それ以外を考える余裕がないから落ち着いてるように見えるだけだよ」

「な、何で」


 マイナスに振り切っていた針が零へと動き出す。


「自己犠牲の精神なんて立派なものでもなければ君を愛しているから、なんて素敵な理由でもない」


 自分のためだと断言する。


「百点満点の僕で在りたいからそうしているだけ」

「ぁ」


 自らに、そして今は亡き両親に誇れる己でありたい。

 そう告げたルイの肩が微かに震えていることに気付く。


「ごめん、なさい」


 ルイだって怖くないはずがないのだ。

 それでも自らの柱を支えにして必死に耐えている。

 そんなことも分からず身勝手に責めた己を恥じ俯くハジメの頭にルイがポンと手を置く


「他人から見れば下らない自己満足さ。だから九十九さんが気に病むことは何一つない」

「神央くん……」


 本当に気に病む必要はないのが笑う。

 何ならコイツお前の惨い死にざまを見ることしか考えてないからな。


「ッ! 九十九さん。これ僕の気のせいかな?」

「……多分、違うと思う」


 外の廊下に気配を感じる。

 まだ気付いてはいないようだが数を考えれば時間の問題だろう。

 いよいよお楽しみの時間だと内心ほくそ笑みつつルイは言う。


「連中が部屋に入って来たら真っ先に僕が飛び出して暴れる」

「!」

「君は隙を見て逃げ出せ」


 ルイの瞳には有無を言わせない圧があった。

 気圧され言葉を失っていたハジメだが覚悟を決めたのだろう。

 一歩も退かぬ意思を示すように真っ直ぐルイを見返し告げる。


「それは、駄目。足掻くなら最後まで二人でやろう」

「九十九さん。聞き分けてくれ」

「ここで神央くんを見捨てたら私、ゼロ点になっちゃう」


 満点の自分という己の言葉に絡めた反論にルイが言葉に詰まる。


「――――そんな自分は、嫌だよ」


 畳み掛けるようにハジメがそう告げた瞬間、


「「!?」」


 突然その手が光を帯びた。

 だが直ぐに己が何をするべきかを理解した。


「九十九さん、何を」


 ハジメは両手を伸ばしそっとルイの首にかけられた指輪を包み込んだ。


「……神央くん、手を」


 促されるがままハジメの手に自らの手を重ねる。

 すると光はより強くなり……弾けた。


「こ、これは」


 気付けばルイの両手には大小二刀が握られていた。

 どういう理屈かはさっぱり分からない。

 だがこれは指輪が変化したものだということは分かった。

 そしてこれをやったのがハジメであるということも。


「……! どうやら悠長に話をしてる暇はないらしい」


 待って、と力を使った影響なのか消耗した様子のハジメがルイを呼び止める。


「……少しは、力になれたかな?」

「父さん、母さん、そして君の助けがあるんだ。百人力さ」

「えへへ、そっか。うん、じゃあ、頑張って」

「ああ!」


 ハジメを殺すつもりだったがそれはそれ。

 生き残る目が見えて来たので即座に方針を変えた。

 暮れを待つまでもなく秒で覆して一切省みないのは強味でもあった。


「失せろ!!」


 クローゼットを出て扉を閉めると同時にぬいぐるみの群れが雪崩れ込む。

 目についたゴリラの顔面にハイキックを叩き付ける。

 と同時にその勢いで回転し刃を振るい首を刎ね飛ばす。

 元々運動神経は良いが刀のお陰でその身体能力は更に向上していた。

 一秒たりとも動きを止めず目につくぬいぐるみを片っ端から斬りつけていき――――


【お前がスパダリになれなかったせいで世界は滅びました。あーあ】

「ふざけんな!!」


 敗因、シンプルに雑魚だった。

執筆の励みになるので気に入って頂けたらブクマ、評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
太宰治! つまり某ロボットアニメの主題歌の様にメロスみたいに走るんだ。 それはさておき、多分身体能力は良いのだろうけど、二刀流は剣術初心者には厳しいですな。 慣れるまで何回周回するのか。
ブラウンはさあ、ちゃんと周回特典配ろうよ… いくらルイ君が僕動説主義者の異教徒とはいえただの高校生にいきなり刃物持たせても雑魚だよ?
正統派だったら覚醒!逆転!勝利!がお約束なんだけどナー しゃーない、ここからは肉体鍛錬パートに切り替えてこう まゆたん的カンフーが観たいわ!理不尽修行をこなしてちょうだい!
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