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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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6/13

知ってた

「ごめん! 遅くなっちゃって!」

「大丈夫。僕も今来たところ――なんて言うとちょっとアレかな?」

「あはは、確かに漫画みたいかも」


 夏休みに入り少し経ったある日のこと。

 ルイは勉強会のため待ち合わせをしていた。

 と言っても今日の目的は勉強だけではない。その後には遊びの予定も入っている。

 勉強オンリーでつまらない気の利かない男だと思われることをルイが嫌ったからだ。

 自分の評価を下げたくないという理由ではあるが女子相手に気を遣っているのは事実。

 やはりコイツの偽ダリ適正には侮れないものがあった。


「じゃあ何から始めようか。希望とかある?」

「やっぱり一番酷い数学かなあ」


 図書室に入り一息吐くと二人は宿題を取り出した。

 ただ無関係なテキストより宿題を解いた方がモチベが上がるからだ。


「……本当にもう、辛い。図とか見てたら頭が痛くなる。知らないよ三角形の辺の長さとか」

「気持ちは分かる」


 全てがそうというわけではないが一息で答えを出せない問題が多過ぎるのだ。

 前提条件を噛み含め、その上で幾つか工程を経て求められる解を出す。

 テストのような限られた時間の中でとなれば尚更、うんざりするだろう。


「だからまずは公式とかを覚えるより先に考え方を変えていこう」

「考え方?」

「うん。九十九さんは料理とかする?」

「まあ人並にはするかなあ。でもそれがどうしたの?」


 なら話が早いとルイはノートを開きペンを走らせる。


「カレーを作るとしよう。必要な材料はこんな感じ」

「うん」


 人参、タマネギ、じゃがいも、お肉、固形のルー。

 ざっくりと必要な材料を書き出した上で問う。


「これ全部いきなり鍋に入れて煮込めばカレーになる?」

「ならない」

「だよね。野菜は皮を剥いて切らなきゃいけないしそこから炒める必要がある」


 カレーという解に辿り着くためには下ごしらえという途中式が必要不可欠。

 ただこれも何も考えずに手をつけようとすれば失敗してしまう。

 大切な順序。そこを間違えずにこなすことで美味しいカレーが完成するのだ。


「順序が大切っていうのは何となく分かるけど」

「まず何がどんな材料でどう使えば良いか分かり難いんだよね」

「そう! それ!」

「だからカレーの材料に当て嵌めてこの大問を解いていこうか」


 懇切丁寧に噛み砕いて解き方を教えていく。

 動機はアレだが指導自体はしっかりしていた。

 そう考えるとハジメにとっても悪いことではないのだろう。

 自分を都合良く利用しているのならこちらも都合良く使う。

 ルイと付き合う上での最適解なのかもしれない。


「何かすっごい頭良くなった気がするよ」


 難しいと遠ざけていた問題が解けるようになる。

 勉強する上でこれほど楽しいことはあるまい。

 ハジメが笑顔になるのも当然だ。


(うんうん。凄く知能が低そうで印象良いぞお前)


 そしてこちらもご満悦。印象悪いぞお前。

 褒めつつそろそろ休憩を入れようということで二人は購買へ。


「前から気になってたんだけどさ」

「うん?」


 それ、とハジメが視線をやったのはルイの首にある二つの指輪が通されたネックレスチェーン。


「アクセサリーとかあんまり興味なさそうなのに何時もつけてるなって」

「ああ、これ? うん、まあ確かに正直あまり興味はないかな。でもこれは特別」

「特別?」

「両親の形見なんだ」

「あ、その、ごめん」

「良いよ。割り切ってる、とは言いたくないけどちゃんと飲み込んでるから」


 軽く微笑むルイにハジメもそっかと頷き返す。


「ご両親の形見だから肌身離さずってわけなんだね」

「まあこれしかなかったとも言うけど」

「これしかない?」

「色々形見はあったんだけど、どれもこれも携帯するにはちょっとキツイのばかりでさ」


 愛用の品は他にも多々あった。

 だが持ち運ぶには大きかったり見栄えがしないものばかり。

 形見を持ち歩くという設定を自身に付与して何時か使う機会を狙うルイとしては困る。

 その点、指輪は良い。最高だ。


「流石にサーフボードとかミシンなんて持ち歩けないでしょ?」

「あはは、それは確かにキツイね」


 しばらくお喋りをしてから図書室に戻り勉強再開。

 そこから夕方五時ぐらいまで勉強に勤しむのであった。


「エスニック料理かあ。思えば本格的なものは食べたことないなあ。楽しみだ」

「期待して良いよ! 前に家族と行ったんだけど日本人の舌にも合うよう調整されててすっごく美味しかったし」

「ほほう」

「あとお値段もお手頃。私たちにはこれが一番嬉しいね」


 勉強会終了後、二人は学校を出て駅に向かっていた。

 ハジメがおススメする店で食事をして、その後はレイトショーというのが今日の予定だった。

 ここまでは双方内情は違えどWIN-WINな楽しいデートと言えよう。

 だが忘れてはいけない。以前も述べたが好事にこそ魔は潜んでいるのだ。


「「え」」


 改札を潜り抜けた途端、世界が一変した。

 近代的な駅構内はファンシーな西洋風の石造りに。

 まるでどこかのお城の中に迷い込んでしまったかのようだ。

 呆気にとられる二人だが畳み掛けるように次なる異常が姿を見せる。


「ぬ、ぬいぐるみ?」


 クマ、ウサギ、ペリカン、ゴリラ。

 種類も大きさも様々なぬいぐるみがこちらに向かって歩いて来ている。

 ファンシーな光景ではあるが二人は理屈ではなく本能で理解した。

 あれは“やばい”。愛くるしい外見とは裏腹な残虐性を秘めている。

 あれに捕まれば惨いことになると理解してしまった。


「逃げるぞ!!」

「きゃ!?」


 初見のインパクトに驚きはしたが伊達に何度も異常に見舞われていない。

 ルイは即座に立て直すとハジメの手を引き走り出す。

 ハジメは追って来るぬいぐるみの群れに意識が引き摺られているがルイは違った。

 この異常そのものは最早眼中になくその意識はハジメに注がれていた。

 何故って? 決まってる。


(お、おおおおおお前かぁああああああああああああああああああああああああ!!!!)


 あなたが――――ヒロインだったのですね(知ってた)。

執筆の励みになるので気に入って頂けたらブクマ、評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
傍目から見ればスパダリ。 内心はアレだけど。 ヒロインレースとか思ってたけど、ヒロインは1人なのか。 頂点は常に1人。
クマ、ウサギ、ペリカン、ゴリラ ペリカン!?
このキャラの造形どっかで既視感あると思ったらあのキャラか!w となるとペラ回しにも期待できそう…! 謎の古武術タスクも火を噴くときが来るのだろうか?
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