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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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僕動説

「……ふぅー。状況を整理しよう」


 ルイは苛立ちを鎮めるように一つ深呼吸をしてから情報の整理を始めた。


「まず約三年後のクリスマスに世界が滅ぶ。ここは確定で良いだろう」


 そして自分がどういう理屈か繰り返していることも確定。

 ここまでは良いのだが、


「何故、必要な情報を渡さない?」


 下手人がどこの誰で何故世界を滅ぼそうとしているのか渡すべき情報を何故渡さない。


「僕がスパダリでないから世界が滅びたなんて分かるのなら敵の情報ぐらい分かるはずだろう」


 いやそもそもの話、


「テレビを通して僕にメッセージを送っている奴は何者だ?」


 状況からして自分を繰り返させているのはテレビ越しの誰かだと見て良い。

 その上で分かっている情報だけで考察するなら解せない点がある。


「テレビ野郎……これだと言い難いな。ブラウンと呼ぶか」


 ブラウン管から取ったと思うだろう?

 実はそうじゃない。


「この僕を働かせようとする糞に相応しい名だ」


 キッズ並みのネーミングセンスであった。


「ブラウン。何故、奴が直接阻止に動かない?」


 時間を巻き戻す、或いはそれに類するほどの力があるのなら何故動かないのか。

 ルイは何の疑いもなく自分が百点満点の男であると認識しているがそれはあくまで常識の範疇で。

 世界を滅ぼす非常識と戦えるオカルト染みた力などはないことは分かっていた。

 これだけだとナルシストだが客観視は出来ると思うかもしれないが、


「野蛮な仕事なんて僕以外の人類がすべき仕事だろうに」


 ルイはナチュラルに全人類を見下していた。


「怪しい。実に怪しい。胡散臭いにもほどがある」


 探りを入れるなら世界が終わった際に辿り着くあの空間でとなるがそれも難しい。

 一方的に会話を打ち切られ巻き戻されてしまうのは今のルイが証明している。

 つまるところ現状、ブラウンに取れるアクションは皆無ということになる。


「……忌々しいが一旦は放置だな。一先ず、ブラウンの言葉が全て正しいと仮定する。

その上で今与えられている情報から推察出来ることを洗いだす。

スパダリ、ヒロインという言葉からして探すべき対象は女だ。

世界を滅ぼしているのか、滅びを阻む鍵となるのかは不明だがこの二択と見て良いと思う」


 そこまで推測を述べてふっ、とルイは鼻で笑う。


「前者だとすればヒロインとやらはさぞ惨めな非モテ女と見て間違いない。

僕のように敢えて作らないとは違う正真正銘孤独で愚かで惨めな人間か。

自分があまりに惨めだから世界を滅ぼすなんて蛮行に走ったんだろう

そう思うと少しばかり憐れみを覚えてしまうな。僕ってば本当にお人好しだよ」


 スパダリを求めているということはパートナーが居ないということ。

 パートナーが居ないせいで拗らせていると本気で決め付けているのだ。

 あまりに真っ直ぐな偏見だった。


「後者ならそれは大きな力の使い道が分からない蒙昧の輩ということになる」


 世話が焼けると嘆息する姿は自分が心底から善だと思い込んでいる邪悪そのものだった。


「まあ良い。どちらにせよ“使える”のは事実だからね」


 世界を滅ぼせる、滅びを阻める。どちらも大きな力あってこそ。

 ルイはその事実にこそ注目していた。


「馬鹿に鋏は危険だからな。然るべき人間が握らなきゃ」


 屑に鋏は危険ちゃうんか。


「……世界をどうにか出来るほどの力、そそるじゃないか。

そんなものがあるなら僕が抱いている不満も何とかなるかもしれない

ああそうだ。常日頃から疑問だったんだ。何故、地球は僕の都合に合わせないのか」


 何を言っているのかまるで分からない。

 そう感じるのはあなたが真っ当な人間だからだ。誇っても良い。


「僕を基点に天地が動く略して僕動説実装のためと考えればモチベーションも湧いて来るというもの」


 異端審問待ったなし。


「なるぞ。スパダリに僕はなる!!」


 スパダリと対極の位置にあるあまりにも醜いスパダリ宣言であった。

 ともあれこうして乗り気になったわけだが……。


【お前がスパダリになれなかったせいで世界は滅びました。あーあ】

「何故だッ!?」


 約三年後、ルイはブラウンと説教部屋で対峙していた。


【……いや、あの、何で本気で驚いてるんですか?】

「は?」


 何言ってるんだコイツというリアクションのブラウン。

 一方のルイ。こちらは本気で何も分かっていない御様子。


【え】

「え」


 ブラウンも気付いたようだ。

 ルイが心底からこの状況に疑問を抱いていることに。


【い、いやだって……あの、な、何もしてないじゃないですか】


 そう、ルイは何もしていない。

 ループによって得た知識を利用して我欲を満たしてはいたがそれだけ。

 三年後のクリスマスまで悠々自適の高校生活を送っていた。

 世界が滅ぶのは当然の帰結だろう。

 しかし、


「しただろうがッッ!!」

【な、何を……?】


 時を巻き戻せるほど強大な存在であるブラウンが、だ。

 本気でビビっていた。マジで何を言っているのかが理解出来なくて。


「――――スパダリになると決めてやっただろうがァ!!!!」

【う、嘘でしょう……?】


 残念ながら嘘ではない。

 百点満点の自分がしょうもない女を利用してやると決めた。

 それだけでもうスパダリ要項を満たしたと本気で思っているのだこの男は。


【その程度で世界が救われるわけないでしょうが!!!!】


 己の不足を他に求める人間はそう珍しくない。

 親が悪い。世間が悪い。あり触れた文句だ。

 しかしそうぼやく人間にはまだ救いはある。だって心の底では自分が悪いと分かっているから。

 心を改める可能性が残っている以上、光はある。

 だが、


「その程度だと!? ふざけるな! 救われない世界の方がおかしいんだよ!!」


 この男は本気で自分に責はないと思っている。

 確かに世界の滅びやその回避を押し付けられたという意味では完全な被害者だ。

 だがそういう部分とは関係なしにこの性格なのが本当に終わっている。

 そしてこんな男に頼らざるを得ない世界も終わってる。絶望か?


「……いや待て。だからこそか?」

【は?】


 ルイは閃きを得た名探偵さながらハッとした顔で口元を抑えた。

 そして訥々とゴミ推理を並べだす。


「僕動説が実装されていない世界に疑問を抱いていたが根本的にズレていたのかもしれない」

【僕……何て?】

「僕動説が存在しない狂った世界だからこそ正しい方向に進めないんだ」


 うんうんと頷きルイは言う。


「世界を在るべき姿に導かねばなるまい。維新の時間だ」

【こ、この人頭おかしい……】


 スパダリまであと何マイル?

ここまで読んでくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
作者さんの別ペンネームの過去作のこともあり、どことなく懐かしい屑のにおいがする。 カス蛇枠はブラウンになるのかな。楽しみだ
>世界を在るべき姿に導かねばなるまい 台詞だけ見れば滅ぶ世界の救世主にふさわしいかもしれない 俺動説の概念パンチが効いてて好き
未だ見ぬヒロインちゃんもヒーローが僕動説主義者とは思うまいて 恥。ー僕の運動についてー
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