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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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13/13

曇り切った眼で見定め決め付ける

「……ここは」

「あ、起きたんだ。良かったぁ」


 目を覚ますと飛び込んで来たのは白い天井。耳を揺さぶったのはハジメの声。

 寝ぼけていた頭を即座に覚醒させたルイは状況を把握した。

 ここは病室か何かで自分たちを保護したモモが運んだのだろうと。


「九十九さん、体調は」

「大丈夫大丈夫。それより神央くんこそ大丈夫なの?」

「少し体が怠いぐらいだよ」

「そっか。良かった」


 ほっと胸を撫で下ろしへにゃりと微笑む。

 何だその態度はとルイが苛ついているとハジメは表情を引き締め深々と頭を下げた。


「……本当にありがとう。神央くんが頑張ってくれたお陰で私、生きてる」

「どういたしまして。こちらこそありがとう。君が力を貸してくれたお陰で僕は生きてる」

「ふふ、どういたしまして。まあ何したかよく分からないんだけどね」


 あ、そうだとハジメはスマホを取り出した。

 どうやら目を覚ましたら連絡するようにモモから言われていたらしい。

 その後直ぐに人が寄越され二人はモモの下へと連れて行かれた。


「やあや。よく来てくれたね。まま、とりあえずかけてくれ」


 促されソファに腰掛けると茶と菓子が出された。

 かなり上等な代物のようでそれがルイの逆鱗に触れた――何でだよ。


(国民の血税で贅沢しやがって……!!)


 間接税以外で納税してから言うてくれや。


「では改めて自己紹介といこうか。環境省特異災害対策局九課の長を務める一ノ瀬百だ」

「か、かん……とくい、さいがい?」

「聞いたことはないが一般には公表されていない部門ということで良いのかな?」

「その通り。君らが遭遇したような“非常識”に対応するのがお仕事だからねえ」


 元を辿れば陰陽寮や神祇省などをルーツに持つオカルト専門の部署なのだという。

 説明を聞きますますルイの機嫌が悪くなる。


(表沙汰に出来ない職を言い訳に好き放題金使ってるんだろ? 腐ってやがる)


 腐ってるのは偏見に塗れたその(まなこ)だと思います。


「ちなみに九課は付喪神専門でね」

「……となると僕らが出くわしたアレは」

「その通り」

「あぁ、そりゃ人間を憎むわけだ」


 そんな話をしているとハジメがおずおずと手を挙げた。

 何だい? とルイが優しく問う。

 モモへのそれと明らかに声色が違うのは五箇条の御誓文を忘れていないからか。


「つくもがみって? 何かちょっと親近感沸く名前なんだけど」

「長い年月を経た道具が意思を持ったお化けだね」

「人の思念が染みついた結果、超常の力と意思を備えることになった器物というのがこちらの定義だね」


 と補足を入れられると、


(一々こちらの定義とか言う必要あるか? 知識マウント? うっざ)


 ブーメランかな?

 話に割って入られたことで機嫌が急降下したようだ。

 なるほどと相槌を打ちつつ懐に仕舞ってあった生徒手帳を取り出しペンを走らせる。

 描かれたのはデフォルメされた唐傘お化けや化け提灯。


「こんなの見たことない?」

「あー、何かあるかも。いや具体的にどこでって言われたら困るけど」


 何となく見知ってはいるがどこで? と言われたら困るのはあるあるだろう。


「じゃあ私たちを襲って来たあれも」

「そうみたいだ」

「な、何で人を襲うの?」


 察しの悪い奴だな、とルイは内心機嫌を良くしているとモモがクツクツと喉を鳴らす。


「お嬢さん。君、小さい頃大切にしていたぬいぐるみとかはあるかな?」

「え? えっと、まあ、はい。保育園の頃とかの写真見ると何時も同じウサギさんのぬいぐるみを」

「――――“今”それどこにある?」

「ど、どこって」


 どこだろう? と小首を傾げるハジメ。まだ気付いていないらしい。


「ンッフフフ。人間に置き換えてみると惨い話だと思わないか?」


 男女の関係に当て嵌めれば分かり易いだろう。

 散々愛を囁いたパートナーを興味がなくなったら捨てる。

 しかも捨てた側は何時どのようにして捨てたかを覚えていない。

 捨てられた側はどう思うだろうか?


「ぁ」

「無論、全てが全てそうなるとは限らないよ。だが大事にされていようといまいと捨てられたら同じさぁ」


 あれだけ一緒に居たのに捨てられた。

 雑に扱われた挙句、捨てられた。

 正しい別れ方をしないまま付喪神となってしまえばそれは人に仇成す怪異になるとモモは言う。


「さっきお嬢さんはウサちゃんがどうなったかを覚えていないと言ったね?」

「……」

「フフ、責めているわけではないよ。そうとも、君が特別ドライというわけじゃあない」


 小さい頃大切にしていた玩具の正確な末路を覚えてる人間なんてそう多くはない。

 そしてモモはこう続ける。


「つまりそれだけ“あり触れて”いるということだ」


 ぬいぐるみなど子供の玩具に限定してもそれなのだ。

 他の器物も含めれば一体世の中にはどれだけの付喪神が溢れているのか。


「中には大切に扱われて良性の付喪神になるケースもあるにはあるが」


 恨みを抱き人に仇成す方が多数派とのこと。

 君らを襲ったあのぬいぐるみのようにねとモモは笑う。

 何わろてんねんお前とルイの機嫌は更に急降下。

 好感度減少RTAでもしてんの? ってぐらいの稼ぎっぷりだ。


「ちなみにあれらは狂気の玩具箱(ファンシーショップ)という徒党の一部でね」

「……徒党? 集団を形成――いやそうか、意思を持つとはそういうことか」

「つくづく察しが良いね。そうさ。一つの目的を寄る辺に群れるのは人だけじゃあない」


 意思を持つということは意思を交わせるということでもある。

 同じ恨みを抱いているなら結束する方が効率的だ。


「かなり古くから存在する悪性付喪神の組織なんだが今に至るまで根絶出来ていない」

「……まあ、そりゃそうだろうね」


 ぬいぐるみの正確な歴史は分からないが最低でも百年以上は昔。

 人形なども含めるなら更に歴史は遡るだろう。

 人口の増加、物的充足などを鑑みればある時期までは増加の一途を辿っているはずだ。

 まあ昨今は少子化などもあり緩やかになるか下降しているかもしれないが。


「君の推察に補足を入れるなら歴史以外にも増える要因があってね。

一握りではあるが極まった付喪神は同種に限定するが付喪神を増やせるのさ」


 どういうことか分かるかい? と言われルイは顔を顰める。


「……製造段階で不良品として廃棄されたようなものも、というわけかい?」


 長く使われもされずロクに思念が染みついていないようなものでもか。

 その問いにモモは察しが良いねと頷く。


「その通り。そして狂気の玩具箱の首魁は数少ない例外なのさ」


 かと言ってぬいぐるみなどの製造販売を規制することも出来ない。

 当然のようにあるものを取り上げるというのはそれだけ難しいことなのだ。


「とまあそういう輩を相手取り日々無辜の民草を護らんと奮闘しているのが私たちなわけだ」


 改めて君たちの話を聞かせて欲しい。

 モモに乞われた二人は頷き覚えている限りのことを話した。


「なるほどねえ」


 一通り話を終えると、


「――――“君”をこのまま返すわけにはいかないようだ」


 光の鎖がハジメを縛り付けた。

執筆の励みになるので気に入って頂けたらブクマ、評価よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
アレは付喪神でしたか。 では、世界は付喪神によって滅ぼされるのか? ハジメちゃんを拘束した理由は? 謎が謎を呼んで来る。
ルイくんの中では公僕の時点でどんな相手でも評価下がりそう。
僕様の御神体を縛り上げるとか不敬にも過ぎるぞ下女郎! 顔も勝手にお触りしたしマナーがなってない公僕すわ
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