何で死んでるんですあなた?
【――――すぅ】
文字なのに深呼吸をしてます感出すな。
ブラウンはメッセージを表示した後で改めて切り出した。
【状況を整理しましょう】
「反省文の時間だ」
【あなたは二十を超えるリトライの末、壁を突破してのけた】
「反省文の時間だ」
botかな?
【訪れた如何にもな女。明らかに新たな道が拓けましたね。ええ、祝福します。お見事!】
「反省文の時間だ」
問題はここからだ。
【だというのに突如としてその場で自害。もう助からないというのならば分かります】
「反省文の時間だ」
苦しみを長引かせたくない。楽になりたいと死を選んだのであれば尊重する。
しかしあの時のルイは満身創痍ではあったものの生きていた。
底知れない強キャラでございみたいな空気してた女が治療してくれる目は十分にあった。
というより流れからしてあのまま見捨てるわけがないだろう。だったら何で庇ったんだという話になる。
【その理由が、何ですか。私に、反省文を書かせたかったから?】
「反省文の時間だ」
新たな道が拓けたとはいえその周回で世界を救うのは不可能。
来年の冬にはスコーンと世界が滅んでまた説教部屋に戻って来るのは確定だ。
しかしその時間すら待てぬと自ら命を捨てた。そういうことなのか? ブラウンの問いにもやはりbot。
度重なる繰り返しで精神に異常をきたしたとかならどれだけ救いがあったか。
これで正気なのだから絶望。
【いい加減にしろ! 会話を! 成立! させろ!】
「反省文の時間だ」
【こ、コイツ……!】
ブラウンは理解した。
自分が反省文を書くまでルイはこの態度を貫くつもりであると。
神央涙という人間が何十年と同じ行動を繰り返して死ねるという証明は既に成されてしまった。
そんな男がそうと決めたのなら最低でも同じ期間はbotを続けるだろう。
下手をすれば体感で百年経ってもやっている可能性がある。
【こ、この狂気を相手に我慢比べは些か分が悪い……】
「反省文の時間だ」
強制的に説教部屋を追い出しても同じ行動を繰り返すだろう。
そうなれば先にこちらの精神がやられてしまうかもしれない。
これ以上の問答は無意味と悟りブラウンは自分が折れようと決めた。
【分かりました。今から書くので少々お待ちを】
「それで良いんだよ」
あっさりbot終了。
この態度の変わりっぷりに軽く苛ついたのだろう。少しテレビがガタついた。
【……出来ました】
そう言ってからゆっくりと文章が流れ始める。
反省文を朗読しているという体を取っているのかもしれない。
そうしてひとしきり反省文を読み終えたところで、
「没」
【没!?】
「あの、何だろ。舐めてる? 僕のこと」
心底呆れてます顔で溜息を吐くとルイはテレビの前に寝転がった。
「少なくない? 文字数」
【……具体的にどれぐらいなんでしょう?】
倒置法がこの上なくムカつく。
他人に上から目線でいちゃもんつける際は倒置法が輝くのだろうか?
「自覚ない? ズレてるよね」
【……どういう、ことでしょうか?】
「立場分かってる? 反省するのが君、それを受け取るのが僕だ」
つまるところルイはこう言いたいのだ。
反省の気持ちを決めるのはブラウンであると。
「どれだけ文字数必要ですか? なんて聞く時点でおかしくない?
反省したから反省文を書いてるんじゃなくて嫌々書かされてるみたいじゃないか」
まさしくその通りだろう。
粘着botに折れてこうなったのだから。
「それ、反省文って呼べるのかい?」
【……】
「透けて見えるんだよね。舐めた態度が。中身の伴わない謝罪ならいっそしない方がマシだ」
でもしなかったらbot継続なんでしょう?
「これは知性と品性の問題だよね」
まるで自分に知性と品性があるかのような。
「根っからそうなのか親御さんの教育の賜物なのか。あ、それとも君の地元じゃそういう感じ?
程度の低い土地で育ったから親も子もそうなってしまったのだとしたら咎めるのは酷かな」
人格攻撃からの親にチェーンしての地元批判。
流れるようなゴミカスコンボ。昔のゲーセンなら秒でヤンキーに絡まれていただろう。
【……大変失礼致しました。少々お待ちください】
そうして新たに反省文を書き直すが、
「指摘されたから長々書きました感が隠せてないよね。これ、反省?」
【……大変失礼致しました。少々お待ちください】
更に書き直すが、
「まず君は謝罪とは何なのかについて考えるべきじゃないかなあ」
【……と言いますと?】
「それを僕が教えるのは違うでしょ。自ずから悟るものでなきゃいけない」
そろそろ展開も読めてきただろう。
多分、その読みは当たっている。
「自分の不備を認めたくないのかなあ?」
「これ、僕を舐めてるのか君が馬鹿なのかの二択だよね?」
「世界を救う僕の歩みを阻む存在がこうも身近に居るとはね」
「多分分かってないから教えてあげるけど文章を読むのにも体力は使うんだよね」
ハラスメント永パである。
何が酷いってブラウン側の反論が封じられているのが最悪だ。
ルイの発言に道理があるから、ではない。当然違う。反論というカードが存在しないのだ。
そもそもの経緯を思い出して欲しい。
反省文を書かねば先に進まないと判断したからブラウンは折れたのだ。
ここで反論しようものなら更に話が進まなくなる。
結果、ルイの気が済むまで終わらないという糞みてえなループが成立してしまった。
ループを強いている存在がループを強いられているというのはある種寓話的だ。
「ま、これぐらいで良いかな。反省の念は確かに受け取った」
【……】
「何かおかしいな」
【……ありがとうございます】
「結構」
客観的に見ればブラウンも大概酷いことをしてはいる。
その点を責められるのならばまだ納得もいくだろう。
だが本筋や人道とまっっったく関係ないところでこれだ。理不尽にもほどがある。
まあ、理不尽×理不尽である意味良いタッグなのかもしれない。
コイツらに救われる世界って何なんだろう?
「よし、じゃあそろそろ行くか。足止めはもう御免だしね」
【誰の……いってらっしゃい!!!!】
半ばヤケクソ気味にルイを送り出す。
新たな展開が見えたとはいえまだ世界の滅びを食い止められはしない。
それでも亀の歩みだろうと確かに前進はしている。
ならばこの時間も無駄ではなかった。
そう自分を納得させるブラウンだが、
【お前がスパダリになれなかったせいで――――いや何で死んでるんですあなた?】
何と九十九体撃破という新キャラ召喚条件を満たせず乙ってしまったのだ。
ルイはあっけらかんと答える。
「いやちょっと気が抜けちゃって、そしたら死んじゃってぇ」
【こ、こここここ……!!?】
敗因、慢心(尚、次周はあっさり突破した模様)。
次回からしばらくの間、お説教部屋からは遠ざかります。
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