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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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10/11

昆虫走法

【そりゃ死にますよ。いやそもそもステータス足りてないんで最終的には死にますがね?

そういうことじゃないんです。まったく同じ死に方をすることに何の意味があるというのか】


 武力のステータスが足りないから死んだ。

 同じシチュエーションに突撃しても同じように死ぬだけ。

 最終的なバッドエンドは回避出来ないとしてもそれまでの時間は有意義に使うべきだろう。


【というか驚きです。そりゃ細かな肉体の動きは別ですがそれ以外はほぼ誤差なし。

九十九一との会話とか寸分の狂いもなく再現されてて引きましたよ私は】


 捲し立てるようなメッセージからもブラウンが本気で引いているのが分かるだろう。

 これがゲームならば同じ行動を取るのは簡単だ。

 しかし生身の人間なんて不確定要素の塊を相手取ってやれるのは異常の一言である。


「ふぅー。つくづく」

【……何です?】


 メッセージが途切れたところでルイが口を開いた。

 何が言いたいのかと続きを促すブラウンに奴はこう告げる。


「――――つくづく、凡愚」

【んんん……!!】


 声、表情、仕草。全てが煽り百点満点。

 仮に煽り大会があれば全一間違いなしだろう。


【……何か、意図があってのことと。ひょっとして何か気になることでも?】


 ブラウンは自らが冷静でなかったと自覚した上で考え問うた。

 最終的に敗れはしたが死闘の中でルイは何かに気付いた。

 だからそれを確かめるためにまったく同じ行動を取ったのか? と。


「いや別に」

【は?】

「あんな状況で他の何かに気を配れる余裕があったとでも?」


 目の前のぬいぐるみを一匹でも多く駆除することに夢中だったと鼻で笑う。

 ではそれ以前に何か気がかりが? いやこれもない。

 もしそうなら最後までまったく同じ道を辿る必要はないのだから。


「僕の気が済まないからに決まってるだろうが……!!」


 わなわなと震えながら叫ぶルイにブラウンは心底困惑していた。


【はぁ?】

「世界の終わりに現れるあの怪物は仕方ない! いや仕方なくはないが!!」


 世界を滅ぼせるほどの存在だ。まだ我慢も出来る。

 しかしあのぬいぐるみの群れは物語で言えば第一話の雑魚敵のようなもの。

 主人公に蹂躙される踏み台でしかない役どころの相手に殺されるなど屈辱以外の何でもない。


「一度挑むのを止めステータスを上げて再挑戦する……? ふざけるな!!」

【いや別にふざけてませんけど……】

「それだとこの僕が負けたみたいだろうが!!」

【いや既に殺されるという最大の敗北を喫していますが……】

「いいや負けてない! だって世界が巻き戻されたからな! 僕の黒星は帳消しだ!!」

【えぇ……?】

「だが! ここで背を向ければ二度と消えない黒星が刻まれる!!」


 至極尤もな指摘は意味を成さない。

 この男は自分がどう思うかを第一にして生きているからだ。


「貴様はこの僕に負けを押し付けると言うのか!? 許されざる大罪だぞお前!!」

【いやでも無理なものは無理でしょう】

「いける! 実戦に勝る鍛錬などあるまいよ!!」

【ステ向上を狙う時点で負けを認めているのでは?】

「いいや違うね! 挑み続けて結果僕が強くなるというだけだからなァ!!」


 いやその理屈はおかしい。ついでにみっともない。


【実戦に勝る鍛錬はと言いますがそれは土台ありきの話ですよ。

あなたこれまで戦いの経験なんてないでしょう? それこそ子供の喧嘩すら。

戦えていたのは生来のセンスと身体能力の向上によるものですがそれでは限界が……】


 ブラウンの言葉は最後まで続かなかった。

 何で? ルイが両耳を塞ぎそっぽを向いたからだ。


【よ、幼児ですかあなたは】


 馬の耳の方がまだものを聞いてくれるだろう。


【……はあ。言っても無駄のようですし好きにすれば良いでしょう】


 どうせ直ぐに音を上げ方針を変える。

 ブラウンがそうぼやいた瞬間、


「ほう」


 目の色が変わった。

 これまでの狂乱状態からピタリと静かになった様はちょっと怖いぐらいだ。


「なら僕がこのまま方針を変えずぬいぐるみ地獄を突破出来たらお前には反省文を書いてもらうぞ」

【反省文?】

「そうだ。本来なら謝罪と賠償の上自害を要求するところだが僕は優しいからね」


 東大に入れる学力はあっても優しいという言葉の意味は知らないらしい。

 現代教育の敗北か?


「反省文で勘弁してあげるよ。但し僕が納得するまでリテイクするからな。そこは甘やかさない」

【……まあ良いでしょう】


 これ以上言い合っても面倒だから折れてやった感半端ない。


【じゃあそういうわけでいってらっさーい】


 こうして十九周目が始まった。

 結果は、


【お前がスパダリになれなかったせいで世界は滅びました。あーあ】


 二十周目も結果は変わらず。

 それでも二十一周目。二十二周目とドンドン周回を重ねていく。


【お、お前がスパダリになれなかったせいで世界は滅びました。あーあ】


 ここらでもうブラウンはドン引きし始めていた。

 突破出来そうだから、ではない。依然として同じように殺され続けている。

 慄いているのは体感で何年も何年も同じこと行動を取っているということについてだ。

 全体としての流れを変えないようにどこかで違う行動を入れて息抜きをしているなら分かる。

 しかしルイは昆虫のように同じ行動を擦り続けて同じように死に続けている。

 何故かって? 万が一にでも流れが変わり敗北するのが嫌だからだ。

 これで精神的な消耗が見られるならまだ可愛げもあるのだが、


「よし次だ」


 これである。


「次だ」「次だ」「次だ」「次だ」「次だ」

「次だ」「次だ」「次だ」「次だ」「次だ」

「次だ」「次だ」「次だ」「次だ」「次だ」

「次だ」「次だ」「次だ」「次だ」「次だ」


 コレに比べたら掃除ロボットのがまだ温かみがあるのではなかろうか?

 ともあれそうして繰り返し続けて四十三周目。

 九十九体目を始末したところで変化が訪れた。

 今見える範囲に居る敵は後一体。だが四肢こそギリギリ繋がっているが最早ルイは満身創痍。

 膝を突くルイに向け恐竜のぬいぐるみが腕を振り下ろす。

 あわやこれまでかと思われたが、


「いやはや。偶には現場に出てみるものだ、ね」


 その攻撃が届くことはなかった。見知らぬ女が割って入ったからだ。

 雪のように美しいナチュラルショートの白髪。身に纏うのはオーダーメイドであろう高そうなスーツ。

 それに加えて攻撃を受け止めるのが扇子というお洒落っぷり。

 どう考えてもモブに搭載されて良い構成要素ではない。

 この局面で出て来たことからも間違いなく新たな展開に続く重要人物だろう。


「お陰でとんだ“逸材”に出会えた」


 扇子で攻撃を押し留めたまま女はクツクツと喉を鳴らす。

 薄い笑みを貼り付けたまま半分ほど閉じられた眠たげな三白眼がルイを射抜く。

 底知れなさを感じさせる雰囲気だがそれは直ぐに崩れ去ることに。


「やあや少年。見事な暴れっ」


 何故って?


「んな!?」


 目の前でルイが自らの首を切り落として自害したからだ。


【何やってるんですあなた!?】


 ブラウンも定型文を忘れるぐらいの蛮行である。

 だがとうのルイは平然としていて、


「――――反省文の時間だ」


 頭おかしいんちゃうか?

執筆の励みになるので気に入って頂けたらブクマ、評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
最ッ高にぶっ飛んでやがる・・・w 毎回寸分違わず同じ行動できるの狂気の域ですなー この執念があればきっと世界を救えそう
先にブラウンが音をあげて世界滅びそう
自害して出戻りかー。 普通に頭おかしいよね。 理由が反省文書かせる為とか。 ループしてるとはいえ自分の命が軽くなってるね。
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