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上司がSNSでバズってる件  作者: KABU.


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5/50

第5話:疑われた上司

朝。

出社すると、オフィスの空気が少しざわついていた。


「ねぇ聞いた? “理想の上司”の中の人、うちの会社の誰かだって」

「マジで? 投稿内容、やたら現実的だもんな」

「営業部っぽいって噂」


(……まさか)

耳を澄ます真由。

誰もが囁く“理想の上司=社内の誰か説”。

嫌な予感がした。


成田がコーヒー片手に近づいてくる。


「なあ真由、これさぁ」

「……なに?」

「この“理想の上司”、最新ポストで“藤原”って名前使ってね?」

「えっ!?」

「ほら、『藤原みたいに笑ってくれる部下がいるだけで救われる』って。

 偶然かな?」


(……っ!)


顔が一気に熱くなる。

昨日、自分が“いいね”した後の投稿。

そこに“藤原”って――


「いやいや、同じ名字の人いっぱいいるし!」

「そうだよなぁ。でも、なんかタイミング的にさ……」

「……偶然!」

強めに否定したけど、心臓は嘘をつけない。


(もし誰かが気づいたら……課長が疑われちゃう)



昼。

会議室。

部長が真剣な顔で口を開いた。


「最近のSNSの件、社外からも問い合わせが来てる。

 “理想の上司”の投稿が社内ネタに似ている、と」

「……それで?」と柊。

「念のため、関係者に確認している。柊、お前もだ」


空気が凍る。

真由の喉がきゅっと締まる。


「誤解です」と柊は冷静に言った。

「仕事中にSNSはしません。内容にも心当たりはない」


完璧な声。完璧な態度。

でも、目の奥だけが少し揺れて見えた。


部長は頷く。

「そう信じている。ただ、社外で誤解を招くような行為は避けろ」

「承知しました」


会議室を出たあと、

真由は無意識にスマホを握りしめていた。



午後。

廊下。

美咲が小声で話しかけてきた。


「ねぇ、柊課長、今大変みたいね」

「……え?」

「SNSの件。上から聞いたけど、結構マズいかも。

 もし本当に本人なら、懲戒対象もありえるらしい」

「……そんな」


美咲は意味ありげに笑った。

「ねぇ真由ちゃん。あなた、柊課長のこと……信じてる?」

「当たり前です」

「ふ〜ん。その言葉、ちゃんと本人に届くといいね」


そう言って去っていく背中。

その一言が、真由の中で引っかかった。


(“届くといいね”……って、どういう意味?)



夕方。

デスクに戻ると、柊の姿がなかった。

代わりに、机の上に一枚のメモが残されていた。


“打ち合わせで外出。藤原、残業はするな。

 今日の空も、たぶんきれいだ。”


(……“今日の空もきれい”)

それは、昨日の投稿の締めと同じ言葉だった。


もう隠す気、ないんですか、課長……。



夜。

外に出ると、ビルの屋上から見える夕焼けが広がっていた。

その空の写真が、ほぼ同時にSNSに上がる。


《@WORK_LIFE_BALANCE》

「今日の空もきれいだった。

 噂は風と一緒に流れていく。真実は残る。」


“噂”。“風”。

まるで今日の出来事を見ていたかのようなタイミング。


通知。


《@WORK_LIFE_BALANCEがあなたをメンションしました》


「……え?」

投稿を見ると、こう書かれていた。


「信じてくれる人がいるなら、それだけで十分。」


その直後。

会社のグループチャットが一斉にざわつく。


「え、これってうちの柊課長のこと?」

「“信じてくれる人”って、藤原じゃね?」


(まずい……!)



オフィスに戻ると、

柊が資料をまとめていた。

その姿は、まるで何もなかったように冷静で。


「……課長!」

「どうした、藤原」

「SNSの件……皆が課長のことを!」

「知ってる」

「じゃあ、なんで投稿なんて……!」


彼はふっと息を吐く。


「誰かが信じてくれるなら、それでいいと思った」

「……それって」

「噂なんて、そのうち消える。だが、人の想いは残る」


真由は言葉を失った。

彼の横顔が、夕陽の残光に照らされてやけに綺麗だった。


(どうしてそんなふうに言えるの……)


「藤原」

「……はい」

「君は、俺を信じるか?」


心臓が爆発しそうになる。


「……信じます」

「そうか」


彼はそれだけ言って、

机の上のスマホを伏せた。

そこに映っていたのは、

黒地に白い“X”マーク――。

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