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上司がSNSでバズってる件  作者: KABU.


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19/50

第19話:オフィスの“好き”が聞こえる日

月曜の朝。

出社してすぐ、オフィスがざわついているのがわかった。


「ねぇ、見た? 昨日の投稿!」

「“理想の上司”と“部下の返信”、完全に両想いじゃん!」

「公式アカウントみたいに“お似合い”とか言われてた!」


(うそ……またバズってるの!?)


スマホを開く。

やっぱり――通知の嵐。


《@WORK_LIFE_BALANCE》

「“想い”は伝えるためにある。隠す言葉なんていらない。」

《@mayu_worklife》

「じゃあ、今日の言葉は全部“本音”ってことで。」


いいね数、桁違い。

コメント欄は“お幸せに”で埋まっていた。


(お幸せにって……! まだ、そういう関係じゃ――)


「おはよう」

背後から聞き慣れた声。


「か、課……誠さん!」

「おっと、言いかけたな」

「す、すみません! 職場モードとごっちゃになって!」

「別に構わない。どちらも“俺”だから」

「そ、そういう言い方やめてくださいっ!」


(朝から破壊力強すぎ……!)



午前中。

広報部会議。

美咲が書類を配りながら、ニヤリとする。


「さて、“対談という名の告白”が大反響だった件について〜」

「や、やめてください!」

「いやぁ、社外でも記事になってるのよ。“理想の上司ペア、再炎上せず好感度爆上がり”って」

「なにそれ、タイトルがもう……!」

「世の中、“恋と仕事”が同時進行してる話に弱いのよ」

「恋じゃ……」

「恋じゃなかったら、あんな目で見ないでしょ」


「……え?」

顔を上げると、柊がこちらを見ていた。

穏やかな笑顔。

まっすぐ、視線が交わる。


(――バレてる。全部、バレてる!)



昼休み。

成田がカフェの席にどっかと座る。


「お前ら、もう付き合ってんの?」

「な、なななに言ってるの!」

「だってもう、社内の空気が“両想い確定”だぞ?」

「そんなこと……!」

「だってさ、“誠さん”って呼んでたよな?」

「っ! 聞いてたの!?」

「そりゃ聞こえるよ。俺、隣のデスクだもん」


(うわぁ……終わった……)


「でもまあ、いいんじゃね? ちゃんとお互いリスペクトしてる感じ、見てて気持ちいいし」

「……リスペクト、ですか」

「そう。恋愛も仕事も、どっちも本気な人って、見てて羨ましいわ」


成田は笑いながらコーヒーをすすった。


(……そっか。私、ちゃんと本気なんだ)



午後。

社内チャットに通知。


《誠:広報部・営業部 全員へ

  15時からの打合せ、会議室Cに集合。》


会議室に集まるメンバー。

資料を配りながら、柊が言った。


「今回のプロジェクト、“BRIDGE”の最終フェーズに入る。

 “人が人をつなぐ”をテーマに、動画を制作する」


美咲「つまり、“理想の上司”のリアル版ってこと?」

柊「……まあ、そういうことになるな」

成田「主演はもちろん、柊さんと藤原で!」

真由「えぇぇっ!?」


一瞬、空気が凍る。


柊が少し笑って言った。

「……それでいい」

「え!?」

「君が隣にいることで、この企画は完成する」


(……もう、この人ほんとに……!)


「っ、わかりました……やります!」

「いい返事だ」


会議室がざわつく中、二人の視線がまた重なる。



夕方。

編集室。

撮影の打ち合わせを終え、柊が帰り際に立ち止まる。


「藤原」

「はい?」

「……“好き”って言葉、仕事中には言わない」

「え?」

「でも、仕事が終わったら、言うかもしれない」


一拍の沈黙。

その一言で、時間が止まったように感じた。


「……予告、みたいなものですか?」

「そうだな」

「反則です」

「また言われた」


(“好き”が、聞こえた。

 誰にも聞こえない声で、ちゃんと届いた)



夜。

スマホの通知。


《@WORK_LIFE_BALANCE》

「“好き”は言葉じゃない。

 誰かを見つめる視線の中にある。」


《@mayu_worklife》

「じゃあ、私は今日も見てます。“好き”の証拠を。」


コメント欄は静かだった。

けれど、それでよかった。

――この“好き”は、もう誰のためでもない。

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