表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
上司がSNSでバズってる件  作者: KABU.


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/50

第11話:オフィスの裏アカ騒動

午前。

営業部フロア。


「ねぇ、また変なアカウント出てきたって知ってる?」

「え、なに?」

「“理想の上司の裏側”とかいうやつ! 

 『あの上司、表では完璧でも裏では……』みたいな暴露系!」


(……え!?)


コピー用紙を抱えたまま、真由は固まった。


「どこの誰かわかんないけど、

 フォロワー一気に増えてるらしいよ」

「“理想の上司”タグ使ってるの、絶対狙ってるよな〜」


(そんな……課長の名前、また出るかもしれない)



昼休み。

休憩スペース。

成田がスマホを見せてきた。


「これ、見て!」


《@shadow_balance》

「理想の上司なんて幻想。

 本当は誰だって、誰かを傷つけてる。」


「……これ、“WORK_LIFE_BALANCE”に似せてる……」

「な? しかも“shadow”って……影? 

 明らかに意図的だろ」

「誰がこんな……」


(まさか、社内の誰か?)



午後。

柊のデスクの前に、人が集まっていた。


「課長、あのアカウントの件、見ました?」

「見た。……放っておけ」

「でも、“社内の人物が理想の上司の中の人だ”って噂が」

「くだらない。噂で動くな」


いつも通りの冷静な声。

だけど、真由にはわかる。

ほんの少し、拳が震えていた。


(……課長、怒ってる)



夕方。

広報部のフロア。

呼び出された真由は、会議室のドアを開けた。


「来てくれてありがとう」

柊が静かに立っていた。


「例の“裏アカ”の件だが」

「……見ました」

「社内でも騒ぎになっている。

 今、“理想の上司”の投稿が全部調査対象だ」

「そんな……」


「俺は、もう黙ってはいられない」


柊の目が真っ直ぐだった。

氷のように冷たい視線の奥に、

決意の光が宿っている。


「“理想の上司”は、俺だ」


「……!」


「これ以上、誰かが傷つくのは見たくない」

「でも、それを言ったら――!」

「構わない」


彼はゆっくりと息を吐く。


「俺が書いてきた言葉に嘘はない。

 けど、“君の存在”だけは、守らせてくれ」


「課長……」


その瞬間、扉がノックされた。

美咲が入ってくる。


「やっぱり、そうだったのね」

「美咲……」

「記者から問い合わせが来てた。“理想の上司”が誰なのかって」

「……そうか」

「でも、私、答えてない。

 あのアカウントの中に“嘘”がないって、知ってるから」


柊の表情が一瞬だけ緩む。

美咲は小さく笑った。


「……藤原さん、あの人は本当に不器用よ。

 自分より他人を守ることしか知らないの」


「はい……知ってます」



夜。

オフィスを出ると、風が冷たい。

真由はスマホを開いた。


《@WORK_LIFE_BALANCE》

「“影”が生まれるのは、光があるから。

 俺はもう、隠れない。」


(――課長、言っちゃった)


画面を見つめる指が震える。

通知が一気に流れていく。


『理想の上司=柊誠?』

『社内関係者が認めた!』


(まずい……!)


その時、DMの通知。


《@WORK_LIFE_BALANCE》

「外に出たら、風が強い。……でも、まだ立っている。」


(課長……!)


真由は走り出した。

夜の街へ。



屋上。

風が髪をなびかせる中、柊が立っていた。

スマホを見つめたまま、呟く。


「……これでいい」


「よくないです!」


振り向いた彼の目が驚く。


「藤原」

「全部、自分で背負おうとしないでください!」

「……俺はもう隠さない。君を巻き込むわけにはいかない」

「もう巻き込まれてます!」


風の音が強くなった。

泣きそうな声で、真由が叫ぶ。


「課長が言葉で救った人、たくさんいるんですよ!

 その人たちまで“影”にしないでください!」


一瞬の沈黙。


柊がふっと笑った。

その目に、ほんの少しの光。


「……やっぱり、君は危なっかしい」

「褒め言葉です」


二人の笑い声が、夜風に溶けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ