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上司がSNSでバズってる件  作者: KABU.


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第1話:#理想の上司がバズってる件

《#理想の上司はこうあってほしい》

「部下の失敗を責める前に、原因を一緒に考える」

「“ありがとう”と“ごめん”を言える人こそ、真のリーダー」


「……なにこれ、めっちゃ良いこと言うな」


深夜0時、ワンルームのベッドの上。

スマホを片手にスクロールしていた藤原真由ふじわらまゆは、

思わず呟いた。


トレンド欄の1位には――


#理想の上司はこうあってほしい


というタグと共に、数十万いいねを稼いだ投稿が並んでいる。


「この人の文章、なんかあったかいな……」

真由はプロフィールをタップする。


投稿主:@WORK_LIFE_BALANCE

フォロワー:87,392

プロフィール:

“会社員です。働く人が少しでも笑えますように。”


「こういう人、職場にいたらいいのに」

ふと、笑ってしまう。


……いや、うちの課長は真逆だ。


頭に浮かぶのは、今日も厳しい声で資料を突き返した上司。


「藤原、またフォントずれてるぞ」

「“まあいっか”で済ませるクセ、まだ直ってないのか」


課長・ひいらぎ誠。

35歳、営業部のチームリーダー。

社内で「氷の柊」と呼ばれるほどのストイック男。


――でも、怒られても嫌いになれないのはなんでだろう。


(本当は、誰よりチームのこと見てるの、知ってるから……か)


そんなことを考えながら、

真由は無意識に“いいね”を押していた。



翌朝。

会社の休憩スペース。

出勤直後の真由は、コーヒー片手に同僚・成田なりたと雑談していた。


「真由、見た? あの“理想の上司”のアカウント」

「見た見た! あれ、超バズってるよね」

「うちの課長に見習ってほしいよな〜、“ありがとう”って言える上司とか」


その瞬間、背後から声が飛んできた。


「成田、朝から何を騒いでる」


ピシッと背筋が凍る。

柊課長――本人登場。


「お、おはようございます、課長っ!」

「……おはよう。藤原、昨日の資料、修正版出してあるか」

「ひゃ、はいっ! すぐ確認します!」


成田はニヤついたまま、小声で囁く。

「……“氷の柊”登場」

「やめて! 聞こえたら凍る!」


そのやり取りを尻目に、柊は淡々とコーヒーを淹れていた。

黒のスーツに無駄のない所作。

見ているだけで背筋が伸びる――のに、どこか柔らかい雰囲気もある。


(あれ? 昨日の“理想の上司”の人も、コーヒー片手に呟いてたような……)

(……まさか、ね?)



昼休み。

デスクで弁当をつつきながら、真由はスマホを開いた。

「……ん?」


《@WORK_LIFE_BALANCE:部下の成長を見届けるのは、

 一番嬉しくて、一番切ない瞬間かもしれない。》


投稿は2分前。

いつも仕事の合間っぽい時間に呟かれる、リアルな会社員の言葉。


(この人、なんでこんなに“わかる”んだろ……)


ふと、視線を感じて顔を上げると――

柊が真由のデスク前に立っていた。


「……藤原、昼休み中にすまんが、この資料、少し見てくれ」

「は、はいっ!」


彼の手には、自分が昨日作った提案書。

丁寧に赤ペンで修正されている。


「直すのはここだけだ。全体は悪くない」

「えっ……ありがとうございます!」


(“ありがとう”って言える上司こそ理想――)


昨日の投稿と、まったく同じ言葉が頭に浮かぶ。

思わず顔が熱くなる。


(やっぱり……似てる。言葉も、タイミングも。)



夜。

帰宅してスマホを開く。

またバズっている。


《#理想の上司はこうあってほしい》

「“完璧な人”なんていない。

 でも、部下の失敗を笑って許せる余裕は持っていたい。」


「……これ、今日のあの時の言葉そのままじゃん」


胸の鼓動が早まる。

いいねの数は10万を超えている。


(いや、偶然、だよね。だって課長がSNSなんて……)


震える指でプロフィールを開く。


その時、通知が一件――


『あなたのいいねを@WORK_LIFE_BALANCEさんがリポストしました』


「――えっ!?」


画面の中の“理想の上司”が、

確かに、自分の“いいね”を見ていた。


そして、翌朝。


「藤原」

「は、はい!」

「昨日の件だが……君、SNSはよく使うのか?」


その笑みは、

いつもよりほんの少しだけ――柔らかかった。

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