8話 討伐
あいつを倒せる何かいい手はないか?
攻撃し続けているが、少ししかダメージが入らない。
その傷も、ふざけたことにすぐ治された。
そして巨大芋虫も俺を倒せるダメージを与えられるスキルを持っていない。
俺が持ってる中で攻撃に使えそうなものは……『火炎操作』、『液体操作』、『万能変化』か。
俺は前世の知識を総動員する。
……スキルの併用をしてみるか。単体ではあまりダメージが入らないが、複数なら入るだろ。
俺は『万能変化』で伸ばした爪に『火炎操作』で炎を纏わせる。
そして脚力をあげ巨大芋虫の横を通りつつ、爪で切り裂く。
「グオオォォォォッ!!」
お、そこそこダメージ入ってるようだな。
と、巨大芋虫の口元に何か赤い光が見えた。
なんだあれ?
《検索結果:火炎弾。魔力を熱し、火を起こして放出する。》
『火炎弾』か……火なら、水で無効化できるだろ。そう思い、『液体操作』で水を生み出し、それを巨大芋虫へ向けて放つ。
同時に、巨大芋虫が『火炎弾』を放つのが見えた。
俺の水と火炎弾が直撃し――爆ぜた。その衝撃で、俺と巨大芋虫が吹き飛ばされる。
自分の体を見ると、ところどころ燃えたり焦げたりしている。
なんだ、何があったんだ!?
《検索結果:水蒸気爆発。高温の物質と水が接触することで発生する爆発現象》
水蒸気爆発か……
チリッ
ん?今、何かの視線を感じたような……?と、視界の端に迫り来る火炎弾が写る。
あっぶねえ!ギリギリで避ける。
スキルの併用……何を併用するか……。
『火炎操作』と『液体操作』で何か……。
……もしかしたら、これで巨大芋虫を倒せるじゃないか?
しかし、あいつをうまく閉じ込められるか?
と、その瞬間光が俺の体を包む。
これは魔力弾?何で今更?効かないのは分かっているはずじゃ?
ドゴッ!!
腹を思いっきりやられ、俺は激しく咳き込む。そこへもう一発。俺は慌てて後ろへと逃げる。
俺の腹を殴ったのはもちろん巨大芋虫だ。
魔力弾の光を目眩ましにしてきた。
なんだよ、あいつの魔力量どうなってんだよ。
もう迷ってる暇はねぇ、やるぞ!
俺は『火炎操作』と『液体操作』で炎と水の玉を作りだし、巨大芋虫へと放つ。
慌てて逃げようとする巨大芋虫。
しかし、目に見えぬ壁に阻まれ逃げれない。
巨大芋虫のみを通さない結界を張ったのだ。
そして二つの玉を巨大芋虫から五メートルのところで止め、巨大芋虫と二つの玉を囲む二枚の結界を張った。
結界の効果は「熱を下げない」と「熱の流出を防ぐ」だ。
そして炎の玉と水の玉を合わせる!
ドゴオオオオォォンッ!!!
狙い通り、超高温の水蒸気が結界内を満たす。
そして巨大芋虫を水蒸気爆発による超加圧と超高温が襲う。
名付けて――灼炎獄だ。
「グゥゥゥゥォォォォォッッ!!」
巨大芋虫が断末魔の叫びを上げる。
そして「熱を下げない」結界を解除し「熱を下げる」結界を張る。
そして見えてきたのは……超高温によって丸くどろどろに溶けた地面。
巨大芋虫は残っていない。
俺は巨大芋虫を倒したのだ。
その時、後ろから足音が聞こえてきた。
「タクナ様、置いていくなんて酷いです……」
あ、リナのこと忘れてた。
『悪い悪い、巨大芋虫っていう奴が襲ってきたんだよ。リナじゃ瞬殺されそうだったから……』
リナは納得したようだ。「透明にしてそのへん放っておくなんて酷いです!!」とか言ってるような気もするが、気のせいだろう。
俺は先ほど灼炎獄で溶かした地面を見る。
……自分でやったことだけど、これめっちゃ危険だわ。
さて、あとはアレだけか。
『リナ、ちょっと静かにして』
「?」
リナを静かにさせ、気配感知を発動させ、捉えた気配に向かい、言う。
『そこに隠れてんのは分かってんだぜ?お前は誰だ?』
「……気づかれていたか。」
そして空間が歪むようにして出てきたのは――羽を持った精霊族の小さな男だった。
魔力弾じゃなくて魔力砲の方が正しいのでは?と聞かれたのですが、魔力砲はこれから登場させるある者の能力として使いたいので、魔力弾にしました。