38話 ダナフ王国~向上~
何と、5/26(昨日です)の一日だけで5,000PV突破!
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あれから三日後。今日は街に帰ることにした。
あの後色々あって結構な量の金を稼ぐことができた。
まず、料理のレシピ。
俺が渡したのは基本的な料理を十個のみ。
本当は全部渡そうとしたのだが、ダドラに、
「お前が持ってる物は、世界をまるごとひっくり返す様なものばかりなのだぞ!
そんな物一度に全部渡すと、経済を狂わすだけではなく、大金を稼ぐチャンスを逃すことになるのだぞ!
お前はそろそろ、自身が持っている物の価値に気付け!」
と、怒られてしまった。
と言うわけで、まず様子を見るため十個。
その料理を、他国の王などとの交流の時に出し、ついでに俺の街のことも宣伝してくれる、ということになった。
ちなみに、一昨日と昨日の二日間、貴族の料理に俺が渡した料理を出したらしく。
俺はそこに居なかったのだが、噂によれば、
「何だこの料理は!」
「こんなに上手いもの、食べたことがない!」
みたいなことが言われていたらしい。
その時、料理人が上手く俺の街のことを貴族に教え、俺の街のことも自然と広がった。
その後、何人かの貴族がコッソリ俺のことを訪ねてきて、
「料理のレシピを全部教えてほしい!」
と言われた。
即座に断ったが、貴族は諦めてくれず数時間押し問答を続けた末に根負けし、金貨三枚と交換で五個ほど教えてしまった。
その事を知ったダドラに五時間ほど説教を食らったのはまた別のお話である。
料理と並んで評判が良かったのが、簡易コンロの販売だった。
この世界では、火を使った調理は一般的だが、火力の調整や安全性の面で大きな課題があった。
俺が前世の知識を活かして作らせたコンロは、火力を三段階で調整できる上に、燃料がいらない。
しかも、魔力を使った加熱機構を取り入れることで、誰でも簡単に扱えるようになっていた。
こちらは技術的にそこまで複雑ではなく、大量生産も容易。
そのため、小型のものを百台単位で生産し、商人を通じて他国に輸出する形にした。
そして、その利益の五割ほどを貰うことになった。
取りすぎ、と言うことはない。材料がそれほど高くない上に、材料費の数倍は高く売れるからな。
現時点では試験販売だが、需要が増えれば本格的な貿易ルートができるかもしれない。
それ以外にも、いくつかの生活雑貨や、簡易調理器具などを提供したことで、合計で得た報酬は金貨五百枚になった。
この世界の金の価値がよく分からないので、ダドラに聞いてみたところ、こうらしい。
銅貨一枚が最小単位であり、前の世界で言う十円。
銅貨十枚で小銀貨一枚。
小銀貨十枚で銀貨一枚。
銀貨十枚で小金貨一枚。
小金貨十枚で金貨一枚、らしい。
つまり、金貨一枚で十万円相当。そして今手元にあるのは五百枚。
五千万円分――我ながら、桁が現実離れしている。
ちなみに、せっかくだからとダナフ王国の特産品や珍しい食材、香辛料などを大量に購入した。
だが、それでも金貨二枚程度だった。
改めて、俺の作った――俺は口しか出してないけどね――技術や物品がどれほど高価な価値を持っていたかを思い知った。
確かにダドラの言う通り、今全部流したら大金を稼ぐチャンスを逃すところだったな。
今俺が持っている金貨は四百九十八枚もあるが、俺のではなく街の財産として管理することに決めた。
今後の発展に必要なインフラ整備や、他国との取引資金などに使おうと思う。
細かい使い道は、今後会議で決めていこう。
下手に私欲を出して散財するより、よほど有益な使い道だろう。
今後、街がどうなるか楽しみである。
そして、俺は荷物を全て『吸収』し、ダナフ王国の出口へと向かう。
そんな俺を見て、人々が驚いている。
俺の隣に国王であるダドラがいるからだろうな。
俺達のことを見送ると言って聞かなかったのだ。
断っても無駄だったので、そうしてもらうことにした。
「本当に馬車を出さなくてもよいのか?」
「ああ、走りで大丈夫だ。それに、走りの方が多分速いしな」
「魔物に気を付けろよ」
「大丈夫、俺はそんなに弱くないから!それじゃ、また!」
そしてダドラの視線を感じながら、俺はダナフ王国を出た。
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自身が治める街へと帰っていくタクナを見送り、一息吐く。
……あの闇狼、常識という物を全く知らぬ。
タクナが持つ物全てを躊躇いもなく全て売り出そうとしたのには慌てた。
あれが全部売り出されていたら、今頃この国の経済は破綻していた。
危ないところであった。
それに、あの『分解吸収』とかいう特殊能力。あれは何だ?
ダドラが持つ固有能力、『炯眼』を以てしても、その情報を確認しきれなかった。
タクナは通常能力『空間収納』が進化したと言っていたが、通常『分解吸収』などではなく、特殊能力『万物収納』に進化するはずなのだ。
しかも、接触せずとも補足さえできれば収納できる?有り得ない話であった。
あれは特殊能力でありながら、固有能力に限りなく近い力を持っているのだ。
そして、その他のスキルも異常だ。
例えば、通常能力『火炎操作』。あの高熱の炎は何だ?
あれだけではなく、タクナの持つ通常能力は全て通常能力の枠を越えている。
本人はそれに気づいていないのが救いだ。
もしそれに気づき、悪用しようとすればダナフ王国一つなど簡単に灰塵に帰すことができる。
まあ、話してみて、そう言うことをするつもりは全く無いことは分かっているので、そこまで心配する必要はないだろう。
タクナの異常性について考えながら、ダドラは城へと向かった……。
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いやぁ、今回は色々と収穫を得ることができて良かった。
大金に様々な食材、そしてダナフ王国との友好関係。
これにより、街は更に発展させられるだろう。
そんなことを考えながら街へと走っていたとき。
「……ん?」
俺の『気配感知』が人間の気配を捉えた。いや、これは人間なのか?
「おい、ちょっと行ってくる」
と言って、その気配に向かう。
そして見えたのは――地面に倒れている、少年のように見える男だった。
しばらく投稿遅れます。
タクナが常時オンにしているのは、
・『結界』
・『憤怒』
・『気配感知』
・『熱源感知』
・『敵意探知』
です。
裏話
・ロアは三日間ずっとタクナにもらったポテチを食べてた。
・タクナがいなくなった今、三日で少し太ったことと、ポテチが無くなったことがロアにとっての一番の問題。