18話 ダナフ王国~帰路~
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更に、ある人が『転カミ』のレビューを書いてくれました。
ありがとうございます!
これからも頑張ります!
俺は約百体の一角熊を前にし、どう突破するか考える。
状況は絶望的に悪い。
ブロア達によると、一角熊はCランク。単体ではどうってことはない魔物だ。
しかし、一角熊は通常八~十体ほどで群れて行動し、その危険はBランク上位になる。
そして今。一角熊は百体以上いる。
それが群れて行動すると――Aランク上位の危険となる。
明らかに、俺が不利だった。
俺だけなら逃げて済むが、今はブロア達がいる。
四人を守りながら逃げるとなると……無理だろう。
どうするか……そう考えていたときだ。
『強き者よ、私達を助けてください!』
一番強そうに見える一角熊が、俺に『念話』で話しかけてきた。
って、え?助けて?
『強き者よ、私達は貴方様に仕えることにしました!』
しましたって、何決定してんだよ!まだこっちはOKじゃねぇよ!
とりあえず、事情を聞くか。
「何があったんだ?」
『私達が住む場所に、骨人族どもが大量に攻めてきて、住む場所をなくしたのです。巣に貯めた食料を失い、貴方を襲ってしまったこと、心より謝罪します。』
ああ、なるほど。飢えていて食べるものがなかったのか。
っていうか、群れの一角熊を圧倒する骨人族の軍?かなり不安だが、俺が本気出せばなんとかなるだろ。そこまで心配しなくてもいいかもしれない。
ていうか、こいつかなり流暢に喋るな。リーダー的な存在らしいし、知能も高そうだ。
「それは別にいい。それより、お前達は何ができるんだ?」
『……特にありません。ですが、貴方様の命令なら、何でも従います!』
「ほう?それより、何で俺に従うことにしたんだ?」
『私の配下達が貴方を襲い、その時に私の配下達が圧倒されたと報告を受けました。私達は強い者に従うことがなりよりも幸せなんです!』
おう……。強い者に従うのが幸せ……少し怖い。
『強き者よ、どうか私達を貴方様の配下に加えさせていただきたい!』
一角熊が俺を見つめてくる。やめて、恥ずかしい。
それにこいつら、俺がいいというまでつきまとってきそうだな……。
だが、一角熊は群れると強い。聖霊族達に作ってもらってる町の守りに丁度いい。
「分かった、お前達は今日から俺に従え!」
『はは!私達は、貴方様に従います!』
少し心配だが、大丈夫だろう。まぁ、裏切られたりしたら殺せばいいしな。俺はそこまでお人好しじゃない。
さて、リナ達のところへ帰るか――。
そして、俺は約百体の一角熊を従えて帰路についた。
その時、俺のことを上空から見ている者がいることを、知る由もなかった。
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ダドラ・ロイドは聖霊族を束ねているという闇狼をみて、確信した。
闇狼は異常だ、と。
「双頭犬が王国内に侵入、闇狼と交戦中」
昼食中、そう報告を聞いた時には危うく肉を喉に詰まらせかけた。
慌てて食事を止め、愛馬――天馬族に乗り、その場所へ向かった。
そこで目撃したのは、闇狼の異常性。
戦闘中に急成長を見せ、Aランク上位の双頭犬を倒して見せた闇狼。
双頭犬は、スキル妨害や速さが強みの魔物。
ダドラにも倒すことはできるが、それでも厄介と思う程の魔物だ。
ダドラには及ばぬものの、かなりの強さを持つことは明らかだった。
双頭犬を倒した闇狼は、フッと姿を消した。
どこへ――?ダドラは特殊能力『空間把握』を使用し、何とか門へと向かう闇狼の居場所を探しだす。
信じられないことに、闇狼の透明化は感知系スキルの最上位、『空間把握』を以てしても、捉えることが困難であった。
何とか捉えた気配が門から外へ出たのを確認し、安堵する。
あれが国内で暴れられたら、かなりの被害が出るのは間違いない。
外に出てくれたお陰で、もし戦闘になっても被害はでない。
その時、闇狼を追うように、四人が門から出てきた。
なんだあれは?固有能力『炯眼』を用いて四人を見ると――何と、ダナフ王国随一の腕を持つ鍛冶屋のブロアと、その弟子三人が出てきていたのだ。
四人は闇狼に追い付くと何やら話し合い、なんと闇狼に付いていった。
降りて闇狼の首を斬ろうとしたのを、ギリギリで止める。
恐らく、ブロア達は自分の意思で闇狼に仕えることにしたのだ。俺が割って入るのはおかしい。
ダドラは泣く泣く、ブロア達を見送った。
その時、闇狼達の後ろから大量の魔物が見えた。
炯眼で見ると――約百体の一角熊だった。
降りて一角熊を全滅させようとしたが――一角熊の様子がおかしい。
一旦様子を見ようと思い、空から見守る。
しばらくし――目を疑った。
何と、一角熊が闇狼に従うことを決めたようだ。
闇狼の恐ろしいところは強さだけではない――その話術、何でも仲間に加えるその技量だ。
『王よ、隣国からの使者が来ました』
もっと着いていきたかったが、無情にも『思考共有』がそれを遮る。
『分かった、今行く。――エルザ!』
『はっ!何の用でございましょう!』
『あの闇狼を尾行しろ。絶対に気づかれるなよ』
『御意!』
そしてダドラのすぐそばから、空間が歪むようにして出てきた女――エルザが、ダドラに敬礼をして闇狼を追いかける。
それを見送り、ダドラは王国へと戻った。
ダドラは思う。
あの闇狼は異常だ。
あんなバケモノがこの世界に放たれるとは――平和な時代が終わろうとしているのかもしれない――と。
ダドラの固有能力『炯眼』(強者の眼)は、あらゆる隠された情報を見抜いたり、見ている物の解析とかズームとか、とりあえず便利な眼って感じです。