10話 唐揚げ
勘違いされてたので言いますが、私は書き溜めてから投稿してるのではありません。
その日に書き始め、書き終わったら投稿し、また新しく小説を書いてます。
夜になった。俺たちは、仮拠点で食事をとっている。
仮拠点の中はかなり広く、簡単に解体できるが丈夫な作りになっている。
「すごいな、ありがとう」
と、聖霊族達に言ったら
「そうでございましょう例えばここ、仮拠点なのでそこまで複雑な装飾をできない状況のため、何時間もかけて考えたシンプルかつお洒落な装飾になっていますまたあちらでは」
と、まるで滝のように話し始めた。息継ぎはどこいった。
呼吸困難になってたので止めると、めちゃめちゃ残念そうにされた。
さて、今日の夜ご飯は唐揚げだ。
正確には、唐揚げを再現した料理だ。
こっちにはあっちの世界の食材はほとんどないが、ここで聖霊族たちが活躍した。
俺がほしい食材などの情報を伝え、探してもらったのだ。
聖霊族たちはかなり昔から森に住んでたらしく、森にある全ての木の実やキノコなどの食物を把握していた。
その中から、あっちの世界の食材に一番近いものを選び、採取してもらった。
そして材料を揃えたら、リナと料理担当の聖霊人たちに『思考共有』で料理の作り方を伝達した。
まず妖鳥の肉を低出力の『鎌鼬』で切り、小麦粉代わりの木の実を磨り潰して作った粉を水に溶いたものに浸ける。
次にアブラヤシに似た木から油を取り、鍋――鍋のイメージを伝えたら、聖霊族たちがサクッと作ってくれた。渡されたのを見ると、側面に闇狼の模様が彫られていたので消させた――に入れ、俺の『火炎操作』で熱する。
いい感じの温度になったら妖鳥の肉を入れ、火が通るまで揚げる。
そして大急ぎで作らせた皿に盛り付け、皆に配った。
よし、食べるか。そう思い自分の皿の前に座る。
……何でみんなこっちを見てるんだ?
まあ、いいか。さて、唐揚げだが見た目は大分いい。味はどうだ?
手を合わせてから一個だけ爪で挟み、口に入れる。
うまい!
噛む度にサクッと音がして衣が割れ、肉汁が溢れ出す。
肉もちょうどいい柔らかさで、あっちの世界の唐揚げよりも美味しい!
それを見て安心したかのように聖霊族達が唐揚げを食べ始める。
主に毒味させるって、お前らなぁ……。
聖霊族たちを見ると、皆唐揚げの味に感激し、涙まで流している。
大袈裟なやつらだと思ったが、そうではなかった。
リナによると、こっちの世界の料理のレベルはすごい低い。
この世界の最高級食品があっちの世界でいうラーメンと同じレベル。
そして、一般人が頑張って食べられる高級食品は、あっちの世界でいうお粥みたいなレベル。
つまりこの唐揚げは、こっちの世界の最高級食品よりも上ってことだ。
ちなみに、この世界のほとんどの人の主食はカッチカチのパンらしい。
気になってリナに『五感共有』でパンの食感を味わさせてもらった。
ガリッガリッガリッガリッ
酵母がないのだろうか?
石か!?と思うくらい、おっそろしく硬いパンの食感が伝わってきた。
……絶対にこの世界のパンは食べないと心に誓った。
その後、食べ終わるとさっそく聖霊族達が家を作り始めた。
本当に、働き者だな、お前ら……。
どっかの怠け者とは大違いだ。
倒れられても困るから、無理すんなよと声をかけといた。
なぜか、建築スピードが上がった。
唐揚げを食べて思い出したが、親父とお袋は今どうしてるかな……。
毎日説教はしてくるが、それでも俺のことをちゃんと愛してくれてた。
もう戻れないことは分かっているのに、いや、分かっているからこそ、親が恋しくなる。
ごめん、親孝行もできずに死んじゃって。
また会いたいな……。
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さて、これからの課題だ。
まず一つ、衣食住の確保。住は直に何とかなるが、衣と食。
俺は服を着ないが、他の奴等は服を着る。だが、材料となる糸がこの森にはないのだ。
いや、一応カイコに似た生き物はいるが、面倒くさい。って言うより、やりたくない。
暫くすると全員毛皮を被ることになりそうだ。
毛皮の民族大移動でも始める気かってくらい、全員モコモコになりそうでちょっと笑える。
食は、やはり圧倒的に食事のレパートリーが少ない。元日本人の憧れ、米も欲しい。そのほか、欲しい料理を挙げるとキリがない。
味噌汁にカレー、焼き魚、納豆……いや、納豆はいいか。あれは完全に人を選ぶやつだ。
そして、人間との関わり方。
リナによると、闇狼の多くは人間に敵対しており、討伐対象なんだとか。軽い気持ちで人間の国に入ったら、国軍出してきて襲ってくることもあり得るとのこと。
何したんだよ、過去の闇狼のやつ。
だが……これは一応なんとかなりそうだ。
俺には陰で練習した技がある!
それを使えば何とかなるかもしれない。
では、さっそくお披露目だ!
へーんしん!
その途端、俺の体が変形していくのが分かった。
味の感想書くの、苦手……。