第二話〜運命の日②〜
「主様、行きましょう」
「ああ」
見えない壁の位置を再確認し、俺たちはダンジョン内へと潜入した。しばらく進むと、目の前には広大な採掘場が広がっていた。
「主様、あのシーフの言ってた通りですね」
「うるさい、黙っていろ」
俺たちは岩の影に身を潜め、スコープを覗く。そこには——子供たちが、ツルハシを振るい、鉱石を掘らされる姿があった。
「ナンバー二七!何をしている!仕事はまだ終わっていないぞ!」
鋭い鞭が振り下ろされ、少女が悲鳴とともに崩れ落ちる。
『殺せ。殺せ。お前が不要とする者を、お前が憎む者を、全て抹消しろ。我が赦す。故に、我を受け入れよ』
視界が赤く染まっていく。……クソッ、またか。この闇の囁きは、時折俺を深淵へと引き摺り込もうとする。頭痛に耐えていると、隣から透き通る蒼い瞳が覗き込む。
「主様、大丈夫?」
「問題ない」
「こんな仕事、やめて帰ろう?」
「……ダメだ。ここに”標的”がいる」
「……わかった。でも無茶はしないでね?」
「ああ」
視線を戻すと、鞭を打たれた少女がすすり泣いていた。
「……許せない」
ビアンカの蒼眼が、炎を宿す。
「本気を出していい?」
だが、ここで彼女の力を解放すれば、子供たちも巻き込む。
「ダメだ。抑えろ。救護対象を巻き込むな」
「……わかった。耐える」
再び洞窟へと視線を移す。
「痛い……痛いよ……」
「痛いのが嫌なら仕事を続けろ!ツルハシを落とすなよ!」
……もう十分だ。仕事を片付ける。
「行くぞ、マグナム、シルバー。今夜の獲物は、あの愚か者どもだ」
「ヴァレットセット!マグナム、シルバー——バースト」
二発の弾丸が竜へと変わり、疾風のように飛翔する。
「なんだ!?うわああああっ!」
監視役の男が悲鳴を上げる間もなく——心臓を抉られ、倒れた。
「ヴァレットセット。メタル——バースト」
俺の竜たちが、一斉に解き放たれる。
「メタルは子供たちの誘導、ビアンカは撹乱を頼む!」
「了解!」
俺は暗闇の奥へと走り出した——囚われた子供たちを、一人残らず救うために。