クチナシ荘
26話めです
家から、そこまで遠くはないが曲がったり上ったりと忙しない道のりを何度もスマホの地図アプリを確認てようやく辿り着いた。
手土産に買ったお菓子を途中何度食べたいと思ったか。
ボロボロで風が吹けば崩れそうなアパートを囲うように作られた塀には、デカデカと「クチナシ荘」と彫り込まれてあった。
アヤは何度も名刺と地図を確認したが何度見てもこのボロいアパートを指していた。
この時点でアヤは引き返そうかとも思ったが、今自分が置かれている状況から脱する方法が見つかるなら安いものだと、アパートに足を踏み入れた。
アパートの敷地内にはなんとも無愛想な顔をしたおばあさんが、ぶつくさ言いながら花壇の雑草取りをしていた。
アヤは、息を殺して気づかれないようにアパートの階段を上がりカヤの部屋の前に辿り着いた。
アヤは一つ深呼吸をしてからドアベルを押した。
すぐには、反応が無くもう一度ドアベルを押そうとした時ドアが開いた。
「やぁ、早速きたね。上がりなよ」
カヤはアヤを部屋の奥へ通した。
アヤはその光景に息を呑んだ。
至る所に酒瓶や空き缶が転がり、食器はシンクにぶち込まれたまま、おまけに足の踏み場はないときた。
「ま、座りなよ。座れればだけど」
(座る。何処に)
と言いかけたがなんとか飲み込みアヤはまず、手土産を渡した。
「これ、つまらない物ですが。」
とアヤはお菓子の入った紙袋をカヤに手渡した。
「おや、君さては育ちがいいな。有り難く頂戴するよ。」
カヤは紙袋の中を確認すると比較的綺麗な場所にそれを置いた。
その間にカヤは、なんとか座れるスペースを作りそこにぎこちなく座った。
カヤは煎餅布団の上であぐらをかいた。
「さて、何から聞きたい。それとも、話したい。」
アヤは勿論今の状況を打開する事を聞こうとしたが、どのようにして聞けばいいか分からなかった。
それがカヤにも伝わったのか、そこで、カヤは質問を変えた。
「復讐したい?」
アヤは首を横に振った。
確かに裏切られたというショックはあったが相手が酷い目にあえばいいとかは、思わなかった。
「それは、よかった。私が未成年に暴行をしたなんてニュースにならないですみそうだ。」
アヤはギョッとしたが、カヤは冗談だと笑っていた。
なんとも微妙な空気感ではあったが、カヤと話す事にはなんら違和感は無く、むしろ話しやすかった。
話せば次第に自分がどうしたいかが見えてきた気がした。
「まとめれば、君は自分の気持ちを相手に伝えられるくらいには強くなりたいと。」
アヤは強く頷いた。
カヤは少し考えた後窓の下を見て何か悪い顔をした。
「アヤ、強くなるっていうのはそう簡単じゃない。
それ相応の試練や努力が必要になる、着いて来れるかな。」
カヤは意地悪そうにアヤに聞いた。
アヤの決心は固かった、もうここまでくれば、やってしまおうと。
「その顔から、決心はついてるようだね。よし、最初の試練は…」
アヤは一体どんな辛い事があるのかと息を呑んだ。
「あの、おばさんと仲良くなってこい。」
カヤは窓の外にいる先程の無愛想な顔をしたおばあさんをゆびさした。
アヤ目線です。
カナタ君、わすれつないからね




