覆水盆に返らず
23話です。
「ねぇ、何してるの。」
アヤは続けて同じ質問をした。
マリは口を開こうとしない。
アヤは痺れを切らしマリからノートを奪いとった。
ノートには恋愛小説に書かれた落書きと同じ筆圧で、様々な罵詈雑言が前よりも酷く書かれていた。
アヤは一瞬目眩がしそうになったがなんとか堪えて一呼吸置いてからまた、マリの方に視線を戻した。
「ち、違うの…これは違くて」
「何が違うの、私は何をしていたのか聞いてるんだけど。」
「あのね、アヤ、私はあなたが羨ましくて」
「気色の悪い事言ってないで早く何してたのか言って貰える。」
アヤは自分の質問への回答以外に口をひらかせるつもりはない。
少しでも言い訳を口にしようならすぐに自分のペースへまるめ込んだ
「アヤ、怖いよ。いつものアヤじゃ無いみたい。」
マリは引きつったような笑顔でアヤの顔色をうかがっている。
「だから、その。」
口を開こうにもどう返しても無駄だと思うとマリは、一気に体中の力が抜けてその場にへたり込んだ。
「私がやってたら何よ、アンタには友達もいないし、暗くて人気も無い。私とは違うよね、私の方が友達多いし人気者だし、アンタと比べてなんでも持ってる」
マリはポツリ、ポツリと一つずつ話していった。
アヤはそれをただ黙って聞いていた。
「なんでもある、なんだって。だから、なんも持ってないくせにいつも余裕そうな顔してるアンタが気に入らなかった、中学校卒業してからはようやくその鬱陶しい顔見ないで済むかなって思ったけど…すごいよね、また一緒になっちゃった。まるで小説みたいに…。」
「フィクションだったら良かったのに」
一通り話し切った、マリは息切れをしていたがそれは同時に涙を堪えているようにも見えた。
アヤは鞄から小説を取り出し、マリの目の前に置いた。
「くだらない。」
アヤは怒るでもなく、嘆くでもなく。
ただ、本音を言って教室を後にした。
途中、マリが何を言っているのか彼女の嗚咽混じりでは聞き取りずらかったのと、聞く気が無かったため無視をした。
学校を出るとアヤは肩の力が抜けたのと心がかるくなったためか、夕方の風がとても気持ちよく感じた。
「よ、その感じだと。うまくいったみたいだね。」
声のした方を見ると白一色の服で身を包んだ女性が立っていた。
アヤ目線です。
暫くはアヤ目線で物語が進む予定です。




