伝えるということ
21話目です。
彼女はそれから色んな事を話してくれた。
昔、外見の違いからイジメられていた事やその時救いになってくれた言葉や物について、どう心の整理をつけていたかなどを教えてくれた。
どうして自分にそんな事を話してくるのか分からなかったが、何故か聞き入ってしまったためそんな事を聞く暇は無かった。
「ねぇ、君は何かやりたい事はある。」
この質問にカナタは吃った。
やりたい事、もちろんそれはアヤ先輩に思いを伝えて付き合いたい。
でも、そんな勇気ある訳もないし伝える気もない。
そして、今の状況に満足しているからそれを変えるつもりも無い。
せっかくならと、カナタは彼女にそれらの事を言ってみることにした。
すると、さっきまで明るい顔で話していた彼女の顔は一気に真剣になった。
「君は間違っている、それは現状に満足しているのでは無く。満足していると言い聞かせているだけだ。」
彼女の声はより鮮明かつ真っ直ぐだった。
それは、カナタにとって図星という事でもあった。
「カナタ君、いなくなってからでは遅すぎるんだよ。伝えられる時伝えなくちゃ絶対に後悔する。何事もできるうちにだよ。」
彼女はより真剣により強く語りかけてきた。
わかっている、わかっているからできないんだと言わんばかりにカナタは少し震えていた。
怒っている訳でも、悲しいわけでも無いのにみぞおちあたりから熱く何かが込み上がってくるのを感じた。
カナタはいてもたってもいられなくなり気づけば駆け出していた。
分からない感情に身を任せるように。
カヤはそれを見守るだけだった。
「想い人 いつかいつかの 恨み言」
ポツリとカヤは呟いた。
「なんだ、いい句ができたと思ったのに季語が無いや。」
カヤは咥えていたタバコを踏んで揉み消した。
カナタ目線です。
俳句って難しい。




