光陰矢の如し
18話目です。
午後十五時三十分、落ちかけた日が唯一の窓から光を流す。
あたり一面に散らばったお菓子の袋、空き缶がテーブルを占領しシンクは汚れた食器で埋め尽くされどこもかしこも埃っぽい。
「朝…いや昼。」
角っこに追いやられたなんともみすぼらしい薄い煎餅布団から白髪頭が出てきた。
カヤは布団から這い出ると無造作に置かれた白衣のポッケをまさぐりライターとタバコを取り出そうとした。
しかし、タバコはとっくに一本も残っていなかった。
彼女は、仕方なくコンビニに出かける事にした。
家のドアを開けると外は新鮮な空気に満ち溢れていた。
コンビニはそう遠く無く家から三分ほど歩けばすぐだった。
コンビニに入るとカヤは酒やつまみカゴへ放り込んでいった。
雑誌を手に取りパラパラと流し見していると見覚えのある学生が窓越しに目に入った。
急いで会計を済ませてコンビニを出たが残念ながらもう人混みに紛れてしまった。
家に帰り足場の無い部屋を踏み分け煎餅布団に座り買ったばかりのタバコに火をつけた。
やっぱケチるんじゃ無かったなとタバコを二、三口ほど吸ったところで火を揉み消して近くにあった空き缶に吸い殻を入れた。
するといきなり呼びベルが鳴った。
せっかく座ったところでとカヤは重い腰を上げ玄関に向かった。
地区60年のボロアパートにはインターホンなんてあるわけもなく、小さなドアスコープから覗き見るだけだった。
ドアスコープを覗くと初老の女性が綺麗な身なりをして立っていた。
「カヤ、いるのは分かってるの開けなさい。」
この声で母親だと確信した。
下手に出れば対応が面倒だと考えカヤは音が鳴らないようこっそり鍵をかけてまた布団の上に戻った。
その間も扉や呼び鈴を鳴らし少々うるさかった。
もう一本タバコに火をつけて今度はゆっくり吸った。
次第に扉を叩く音は大きくなり出てこいなど言葉も選ぶこともなくなっていった。
しばらくして静かになったかと思えばなんと鍵が開く音がした。
勢いよく扉を開けた瞬間母親は軽く悲鳴をあげた。
それもそのはず、ゴミ部屋は住んでる人は気にもならんが他社から見れば魔窟である。
それでもなんとかゴミをかき分けこちらにきた。
「よ、久しぶり」
怒りやら呆れやらで感情のぐちゃぐちゃになった母になんと声をかければ良いか分からず、とり合えず適当に挨拶をしたがそれがまずかった。
「何をやっているの」を皮切りにとんでもない罵声と質問の連続だった。
母の話を噛み砕けばなぜ家出をしたのか百歩譲っていいとしてこんな生活をしているのかというものだ。
それに対してカヤは、適当に返事を繰り返していた。
一通り話し散らかした母は息を切らしていた。
「言いたい事はそれだけ、なら帰ってくれないあんたの声って耳が痛くなるの。」
「あんたさっきから親に向かってなんなのよその態度、二十年以上育ててやった恩を忘れたとでもいうつもり。」
「仮に二十年育てて貰ったとしても、あの生活を受け入れられる訳が無い。」
カヤは立ち上がり母親の目を見て話した。
「いい、私は貴方達の道具じゃない。そこまで自分の思い通りにしたいなら高性能なロボットだろうが人形でも買えばいいじゃない、ご自慢の財力を使ってさ。」
そうカヤがいい切った途端母は手をあげた。
しかし、カヤは母の手が頬にあたる前に素早く腕を掴んで止めた。
母はびっくりした顔でこちらを見ていた。
「もう、殴られるだけの私じゃ無いんだよ。このままあなたを殴り返すことだってできる。」
ハッと我に返った母は腕を振り解き掴まれた箇所とカヤの顔を交互に見た。
「怖いね時間って、本当に怖い。」
カヤは諭すようにまた、慰めるかのような声で語りかけた。
母はそそくさとアパートを出て行った。
静かになった部屋でカヤはタバコを咥えながら日が沈むのをじっと見ていた。
カヤ目線で書いてみました。
カヤさん久しぶりの登場です(設定ちゃんと作ったのに登場回数が割に合わない人)




