高揚
17話目です。
(や…やばい、すごい気まずい。)
図書室のカウンター奥にある作業部屋でアヤとカナタは黙々と寄付する本の処理をしていた。
しかし、そこには談笑をしながら作業をするというカナタの理想とは程遠い空気感にさらされていた。
会話をしたのは数十分前に体調は大丈夫なのかの質問にアヤが素っ気なく答えただけであった。
このままでは本当に何も無いまま時間だけが過ぎて行ってしまうとカナタは少し焦りを覚えた。
とはいえ、状況を打破するような話題もコミュニケーション能力も自分には無い。
対面した状況ができて初めて分かったのだが自分とアヤ先輩にはなんの接点もなかったのだ。
そう思うと実に不思議なものだ、なんの接点も共通の趣味もないのに好きになってしまうのは不思議だ。
黒いロングヘアに細身で一言で表すなら凛としている。
ここまでこの言葉が似合う人をカナタは今まで見たことが無かった。
だが、それだけで好きになった訳では無いとカナタは感じていた。
他にも何か自分を引き寄せる何かがあると確信してそれをずっと探し続けた。
キーンコーン カーンコーン
突如として帰宅を告げるチャイムが図書室を包んだ。
結局何も話せないまま帰宅時間となってしまった。
カナタは明日に期待しようと帰りの身支度を始めようとしていた。
「いっ」
すると突如アヤは険しい顔をして指を押さえた。
どうやら本を閉じようとした時手を切ってしまったらしい。
カナタは咄嗟に絆創膏を取り出した。
「良かったら、使って下さい。」
アヤは静かに絆創膏を受け取り手際よく傷口に貼っ
た。
昔から何があってもいいようにと入れていたのが今日ほど役に立った日はないとカナタは内心飛び跳ねて喜んだ。
カナタは満足そうに帰り支度を再開しようとした時肩を軽く叩かれた。
振り返るとアヤは飴を一つカナタに渡した。
「…ありがとう。」
そう言うとアヤは早足で図書室を出て行ってしまった。
カナタは数秒何があったか分からなかった。
カナタは気付けば、家でアヤから貰った飴を眺めていた。
そしてふいに、高揚感と温かい気持ちに包まれた。
今ならアヤを好きになった理由が鮮明になった気がするがそれを言葉にはできなかった。
カナタ目線です。
すこーし進展したかな?




