虫の知らせ
15話目です。
「アヤ先輩、今日もいないのか…」
カナタは図書室のカウンターに突っ伏してため息をついた。
相変わらず誰も来ず、これといって問題も起きない図書室は本当に暇だった。
仕事もやり潰してしまい、結局本の点検だけが残った。
(このままで、いいのかな。)
カナタの頭の中にいきなり浮かんで来た。
それと同時に何かに追いかけられるような気持ちがカナタを気味悪がらせた。
「よ、やってる?」
渡辺先生がドアから頭だけ出ていた。
「渡辺先生、お疲れ様です。」
「仕事も無く人も来なくて暇で死にそうって顔だな。」
渡辺先生はニヤニヤしながら言った。
その顔が少しイラッときたが、図星だった。
「えぇ、まぁ」
カナタは曖昧な返事をした。
「そうだろう、そうだろう。そこで君に仕事をあげよう。」
「はぁ」
「知っての通り、うちの学校の図書室利用率は低い。そのため、本を少し減らすことにした。」
「え、本を減らすって」
「減らすって言っても捨てるわけじゃ無いんだ。
近くの公共施設や老人ホームへの寄付にするんだ。」
渡辺先生は一冊適当に本を取ってカナタに向けた。
「本だって、読んでもらった方が嬉しいだろ。
カナタは向けられた本をじっと見た。
渡辺先生の言う事はもっともで文句は無かった。
ただ、少し寂しい感じが残った。
「それも、そうですね何をすれば良いんですか?」
「図書室のマークこのQRコードをマジックペンで塗りつぶしてくれ、そしたらこの段ボールに入れるだけだ。寄付する本は後で一覧表にして渡すからもう少し待っていてくれ。」
カナタは渡辺先生の話を淡々と聞いていた。
「それじゃ、サボるなよ。」
満足したように渡辺先生は図書室を後にした。
存在するだけで周りが騒がしくなる人がいると言うが渡辺先生はいい代表だろうとカナタは少し疲れながら椅子に腰掛けた。
図書室には再び静寂が訪れたが、いつもより少し寂しかった。
存在するだけで騒がしい人…少し羨ましい。




