EP33 総力戦
所持金の一割を吹っ飛ばして復活した。
なんだよあの攻撃。威力高すぎだろ。しかもドラゴンが魔術を使うとか聞いてねぇぞ。
『すまん、イグニスタントシティ仮本部まで来てくれないか?』
『了解。今行く』
多分作戦会議だろう。
「ありがとう、来てくれて。これから、火山地帯のドラゴン対策会議を始める」
本部の会議室的な場所に通され、カイがこう言った。
この場には、錬金軍隊の幹部クラスの人が集まっている。
近接科、遠距離科、魔術科、生産科の四つの科があるが、遠距離科元帥の席が空いている。一応、副官的なのはいるが、俺たちと同じくらい強いという訳では無い。だから、席が空いている。
他の科の副官も来ている。勿論、俺の副官も来ている。尚、初対面の模様。気まづっ。
「火山地帯のドラゴンについて情報を共有しようと思う。サキ、頼む」
「え゛っ」
頼むって...ええ?
席で座っててもしょうがないので、前に立って喋る。
「え、えーと、何から話せばいい?」
「とりあえず、ドラゴンの特徴から」
「OK。このドラゴン達は...」
「...てことだ」
長い長い情報共有が終わった。
「ありがとう。じゃあ、部隊編成と作戦を考えよう。
元帥の副官を指揮官とした1000人の連隊を三つ作る。生産科はそれぞれの連隊の中隊に所属して支援を行う。
そして、クラン『猫様聖騎士団』が協力してくれる手筈になっている。規模としては、1000人規模の連隊を6つだ。
俺たち元帥と騎士団の幹部がドラゴンと戦闘を行う。だから、まず最初にドラゴンに高威力の遠距離攻撃を翼に仕掛けて欲しい。その後、ワイバーンを討伐。
さて、誰か意見は無いか?」
特に誰も手を挙げない。
「じゃあ、これで会議を終わりにする。おつかれ」
ガタガタと椅子から立ち上がり、出口へと向かう。
*
西門前。軍服姿の軍人と、金で装飾された純白の甲冑を着込んだ聖騎士。なんだろう、絶対なんかおかしい。この二つが同時に見えるとなんか違和感しか感じない。
「やあ」
「よう」
他の聖騎士とは違う豪華な甲冑を着込んだ猫獣人が話しかけてきた。カイと仲が良さそうである。
「えーと...どちら様で?」
「こいつはnekosama_godって人で、聖騎士団の副団長だ」
「猫様に対する愛だけは団長の次に強いって自負してるよ」
「へ、へぇ...すごいね...?」
胸を張ってエッヘンとでも効果音が付きそうな顔をしている。
「猫様の毛並みは僕の言葉じゃ表せないほど美しくて、汚れが無く、猫様それぞれに違う模様や色があるし、嗅覚は僕たち人間の何千倍も鋭くて、耳も凄くいい。そして何より、高いところから落ちても平気でいられるし、ジャンプ力は自分の身長の何倍もあって、熊を撃退出来る爪もある。牙は鋭くて獲物を仕留めるのに適しているし、爪は良く皮膚に刺さって獲物を逃がさないようになっているんだ。猫様美しくて、この世で最も尊い存在で、飴と鞭を使い分けるのが上手な生き物で、存在するだけで人々の身も心も癒し、神に最も近い生き物、いや、神なんだ。そして...」
あ、これ永遠に終わらんやつだ。
なんか...幻影魔術で逃げられないだろうか。
ステータスにあるファントムという魔術を試してみる。
「ファントム」
俺の分身が生成される。ちゃんと肌は白い。こいつはまだ俺が二人になったことに気付いていない。今のうちに逃走しよう。
...そういえば、ネックレス作ったな。メイに渡すか。
「おーい、メイー」
「何ー?」
「これあげる」
「...ネックレス?姉と弟の関係なのに?」
「チガウソウジャナイ」
誤解を解き、ネックレスの効果を説明する。アクセサリーを女性に渡すってこういうのがあったかぁ...次からは杖に仕込むか。
「スゴいじゃん、これ。急にネックレス渡されててっきり自分の姉に恋でもしたのかと思っちゃった」
「俺はロリコンじゃないからそれは無いぞ」
「誰がロリっ子よ!」
思いっきり頬をビンタされた。これ以上なんか言うと魔法で潰されそうなので口にチャックをする。戦闘前に死ぬ訳には行かない。
「敵影!ドラゴン9!その内一体が超巨大!その他、ワイバーンが1000以上!」
ようやくやってきた、竜種の軍勢。
「撃てぇ!」
カイが号令を出し、魔術師隊の半分と遠距離隊が巨大ドラゴンの翼に向かって攻撃を放つ。俺もミサイルを十発ほど撃ち込む。
ドラゴンの翼が爆発炎上し、墜落する。こっちに向かって。それを近接科の重武装の連中と魔術師隊が盾と結界で受け止める。
結界は全部割れたが、盾でようやく受け止めた。
連隊はドラゴンを堕とすという役目を果たしたため、ワイバーンの討伐に移る。彼らをドラゴンと戦わせても、蹴散らされて終わりだろう。
再生を始める前に、カイ、俺、Nekosama_godはドラゴンの背中に飛び乗る。熱さでスリップダメージを受けるが、カイの身体魔術でリジェネが付与されてスリップダメージが軽減される。
カイは鱗の隙間に剣を突き刺そうとするが、鱗の密度があまりにも高いため、剣が弾かれる。
対する俺はパイルバンカーで鱗にヒビを入れようと試みる。打つ度に反動がこちらにやってきて地味に痛い。脱臼しかねないぞ。
Nekosama_godは頭の方へ登り、目に剣を突き刺そうとするが、ドラゴンが激しく身をよじったため、全員空中に投げ出される。俺は機械翼で空中で体勢を立て直し、カイに向けてブレスを撃とうとしている頭に全速力で突っ込む。
ガァン!!
そんな音が鳴り響いたが、ドラゴンの頭は全く揺れない。代わりに、俺が反動でダメージを受けた。
リジェネの効果で回復し、離脱する。そこからミサイルを顔に一発放ち、逆鱗の位置を探る。
手当り次第に鱗に攻撃する。
GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
ある一つの鱗を攻撃した時、ドラゴンが声を上げてHPバーを削りながら苦しみ出した。逆鱗を発見した。
「逆鱗を発見した! ここだ!」
仲間に逆鱗の位置を知らせ、パイルバンカーを使って何度も何度も杭を打ち込む。
ドラゴンのブレスをギリギリで避け、メイの魔術が撃たれる。
「『火の槍』よ、『炎の槍』よ、この手に集いて敵を穿て!『インフェルノランス!』」
ドラゴン本体と比べたら小さいが、俺らの体と比べたら中々にも大きい鱗に火炎の槍が突き刺さる。ドラゴンのHPバーがグッと削られる。...他の鱗に攻撃した時と比べて。HPは残り9割。
うるせぇドラゴンの声で耳がキンキンして非常に痛い。この世界の巨大生物は耳を攻撃するのがお好きなようだ。
鉄の槍が逆鱗に命中し、またもHPバーが削られる。その時、ドラゴンが魔法陣を展開し、辺り一面が炎に包まれ、空に居たドラゴンが空から攻撃を降らせてくる。しかも広範囲に。
「こっち来て!」
メイの言う通りにメイを囲んで固まり、結界魔術が発動される。
「ディバインフォートレス!」
俺も盾を取り出し、盾に付与された結界魔術を発動させる。
直後、ドラゴンの口から極太ブレスが放たれ、全ドラゴンが体の様々なところから炎を吹かしている。第二形態だろうか。
巨大ドラゴンは翼が再生し、空を飛ぶようになった。空に飛ばれてはカイ達が攻撃できない。
「カイ、体借りるぞ」
「ゑ?」
カイの背中に手を当て、持ち上げる。
「ちょ、何をするつもりだ?」
パワードスーツと身体強化魔術を使い、ドラゴンに向けてカイを全力で投げる。
「ええええええええええええ!?」
投擲スキルでドラゴンの脳天に着地する。着地の勢いで槍を突き刺そうとしていたが槍がポッキリ折れてしまっていた。だが、ダメージは与えられた。
カイは背中に移動し、他の武器で翼を攻撃している。
「...体力持たないだろうあれは」
あいつは体力と攻撃力にステータスをほぼ全振りしているようなやつだ。あとほんの少しの魔力。そんなやつだからスリップダメージが入っても暫くデスしないが、リジェネで回復する量よりもスリップダメージの方が大きい。あと1分も持たないだろう。
...ポーションを渡すべきだろう。
GYAAAAAAAAAAAA
ドラゴンの翼が破壊されている。ドラゴンが落下を始める。カイはドラゴンからジャンプし、他のドラゴンに飛び乗る。他のドラゴンに飛び乗った方がスリップダメージは少ないようだ。それでも5分は持たないだろうが。
「セイントグレートソード!」
Nekosama_godが胸の前で合掌し、そう叫ぶ。
彼の頭上に信じられないくらい巨大な白と金の巨大な両刃の大剣が出現し、墜落するドラゴンの正面から振り降ろされる。
剣は砕けるが、ドラゴンの頭の鱗が砕けるレベルの大ダメージを与えられた。全体の二割を削り、残り八割、といったところだろうか。
...あれ?さっき一割ほど削ったよな?
巨大ドラゴンが急にワイバーンに噛みつき、体力を満タンまで回復させ、鱗も再生している。おい。それアリかよ。




