虐めた家族のその後。
辺境の鉱山。その近くの町のやや外れに一軒家かある。そこに、男か一人とぼとぼと歩いていく。一軒家に入るとそこには女とその娘が疲れた様子で料理を作っていた。
「ただいま」
疲れた顔で男ドレイクは妻ルーザと娘リムルに言う」
「お帰りなさい」
「お帰り」
食事の用意がすむと、三人は食卓を囲む。そしてパンとスープを囲むと食前の祈り。それから食事を始める。
「今日も一番奥で掘ってきたよ」
ドレイクは疲れた様子で言う。
「今日、私は十二人相手してきたわ」
ルーザは疲れた様子で言う。
「わたし、十人」
リムルも疲れた様子で言う。
「もう、一年か」
彼らが伯爵領から追放されて、既に一年が立つ。その間に色々なことかあった。
「こちらはもう罰金は払い終えた。そちらは」
ドレイクは妻と娘に聞く。
「あと、少し。多分あと、一月位」
「あたしも」
ここでリムルがいきなり怒った。
「何よ、何でこんな目に遭わなきゃならないの! 私たち、そんなに悪いことしたの!」
ここで、ドレイクはすまなそうに言う。
「すまん、すべて俺のせいだ。本来なら、白い結婚で三年後にはお前らを迎えに行く予定が、つい、魔が差して」
「ホントにそうね」
ルーザは白い眼で夫を見る。が、ため息をついて諦めたように呟く。
「いくら媚薬を盛られたからって、あの女と子供作るなんて。それともふくよかなほうがよかったの?」
ドレイクの本妻は非常に大きかった。端正な顔立ちだったが。
「そんなことはない。第一、一回だけだしかもほぼ一年媚薬を、使われていたんだ」
「ふーん、父さん、よほど慕われていたんだね」
白い眼で見るリムル。
ルーザははあ、とため息をついた。が切り替えるように笑う。
「まあ、伯爵家の生活ができたから、よしとしますか。結構面白かったし」
それには不服そうなリムル。
「あたし、大変たったよ。お貴族樣の生活はもうごめん。まー宝石とかキレイなドレスとか着れたのはよかったけどね」
「父さんは伯爵領の運営が出来て面白かった」
「この人凄く有能なのよ。伯爵領の立地から道路を整備して、あと荒れ地を綿花畑にして、一大服飾産業地にするなんてね。しかも細工師とか服飾師とか呼んで貴族から平民まで間口の広い商売するなんてね」
「いや、他の国の事例があってな。それを調べたら十年で利益が取れたそうだ。更にその時は試行錯誤が大半だから、こちらは五年で利益か取れる。十年で借金が返せる計画だったな。最も念のために何かあったときの金を隠していたのは失敗だったが」
「あの子には説明してたの?」
「一応な。しかし、領地の管理で精一杯たったみたいでどこまで理解しているか。王家も一枚噛んでるし、どうなる事やら」
「まあ、最悪、放逐されても掃除、洗濯、料理、買い物、一通り教えているから、何とか職にはつけるでしょう」
妻の台詞にドレイクもうなづく。
「私も書類処理は教えているから、質素に暮らせば問題ないたろ」
「まあ、お姉樣は、婚約者とも仲よかったし大丈夫じゃない? わたしがちょっかいかけても一筋だったから。うん、大丈夫だよ。でもセンスは無かったわ。クールビューティーのお姉樣にピンクのフリフリドレスとか可愛いアクセサリーなんかないでしよう? 手直ししてわたしが着て。お姉樣にはシンプルなスタイルが一番あうから多少値がはるシルクとか大きな宝石のアクセサリーとかにしてもらったの。そのお値段はね上がったから数が少なくなったのはわるかったけど」
「てもね、あの子、太りやすいのよ。ちょっと食事の量増やしただけで即太ったから」
妻の心配にリムルは質問する。
「あのさ、やっぱり魔法使うと痩せるの?」
リムルの質問にドレイクが答えた。
「正直わからん。まあ、うちの家系はそうだと言えるが」
「とにかく疲れるのよね。幻覚魔法」
リムルは、疲れた様子でぼやいた。
「貴族のパーティーでも、下心満載の連中来るから、母さんから習った幻覚魔法で処理してあげたのね。おかけで魔法上手くなりすきて。まあ、お姉様目当ての不埒な連中もいたし。それに魔力封じとか今の娼館の仕事とかも幻覚魔法で乗り越えたられたし。母さんに習ってて良かったとはおもってるわ」
「昔の経験が役にたったわ。学園時代に禁忌魔法の書を読んだかいがあったわ」
「本当に君は向上心旺盛だったな」
「それを言うならあなたこそ。身体強化魔法から経営学まで色々と」
二人が甘い雰囲気になりかけるのを、娘は白い眼で見る。
「ハイハイ、明日も忙しいから二人とも早く食べて早く寝るよ」
そして三人は明日のために食事を、終え、早く就寝したのだ。
そして三ヶ月後、すべての罰金を払い終わり、ついでに鉱山と娼館の効率化、ついでに鉱山労働者と娼館従業員に基礎魔法を教え終わった家族は、その場を後にした。
で、どうするの? とリムルか聞いた。
「少し骨休めしようか。しばらく働きずめだったからな」
「そうね」
「賛成」
ルーザもリムルも笑顔だ。やっと苦役がおわったから。
「そのあとはちょっと伯爵領まで行こうかと。多分あの子も苦労しているだろうから」
ドレイクの言葉に顔を強ばらせるルーザとリムル。
「もう、関係ないし、いいんじゃない? あとはあの子の責任よ」
「そうはいっても、前妻と前伯爵に約束したからな。あの子が一人前になるまで面倒見るって。それに領民が苦労するのも忍びない」
妻と娘は元代行に白い眼をむける。それから笑顔で彼を見た。しかし、瞳は笑っていない。
「今回限り、もう手は貸さないからね」
「でもおとーさん、お姉樣にあそこまでされても助けるの?」
元代行はにやりと笑う。
「いやいや、勿論丁寧迅速に高レベルで教えるよ。三ヶ月でものになるようにしてやる。拒否権はない」
二人はその壮絶な笑顔を見て、長女がどんな目に合うか想像してしまった。そして彼女に深く同情するのであった。