27 惹かれ合う2人
「日向俊介君に、星野勇太君だね。私はエマの父、帝国の皇帝だ。エマの命を救ってくれてありがとう!」
皇帝は流暢な日本語で2人に話しかけた。エマが驚いて皇帝に聞く。
「お父様、いつの間に日本語を?」
「ああ、エマの結婚相手の言語だからな。帝都を出発してから地球に来るまで船内時間で5日もあったから、その間に圧縮学習機を使ってね」
「それで、私に話したいというのは何かな?」
皇帝がにこやかに聞いた。エマが真剣な顔で答える。
「お父様、結婚相手のことなんだけど……私、勇太君と一緒になりたいの!」
「俊介君という最高の相手がいるのにか?」
皇帝が不思議そうに聞いた。エマが答える。
「確かに日向君は素晴らしい人よ。でも、私は勇太君を選びたい」
「ふむ……俊介君と勇太君はどうなのかな?」
皇帝に聞かれ、はじめに俊介が答える。
「エマさんは素晴らしい人です。ですが、私には別に愛している人がいるのです」
俊介がチラリとミーナの方を向いた。それに気づいたミーナが嬉しそうに微笑んだ。
次に勇太が緊張した面持ちで答える。
「わ、私は、エマさんを心の底から愛しています!」
2人の話を聞いた皇帝が、宙に指で何かを書く動作をした。すると、皇帝の前に画面が現れた。
皇帝がその画面を見ながら話し始めた。
「エマと同じように、10名ほどの帝都人の男女が地球を訪れ、遺伝子的に最高の組み合わせとなる地球人を許婚として生活し始めている」
「しかし、不思議なことに、そのほとんどが許婚とは別の地球人と恋に落ちている」
「しかも、その恋愛感情は極めて強く、まるでお互いが決して離れられない運命の相手であるかのように惹かれ合う……」
「……そういった状況が続々と報告されていてね。エマと勇太君、そして俊介君とミーナ侍従武官のように」
皇帝が4人の顔を1人ずつ優しい眼差しで見ると、話を続ける。
「恋に落ちる帝都人と地球人の多くは、遺伝子的にはベストマッチとは言えない」
「だが、この極めて強い惹かれ合う気持ちは、何らかの遺伝子によるシグナルではないかと目下研究中だ」
「研究は始まったばかりだが、私はその惹かれ合う気持ちに賭けてみたいと思う」
皇帝が立ち上がり、エマと勇太を手招きした。エマと勇太が皇帝の前に進み出る。
皇帝は、エマと勇太の手を取り言った。
「エマ、勇太君。2人で愛を育みなさい」
「お父様!」
エマが涙を浮かべながら言った。
「皇帝陛下、ありがとうございます!」
勇太が必死に泣くのを堪えながら、頭を下げた。
「まあ、色々と言ったが、ここまで惹かれ合う2人を引き裂く訳にはいかんしな」
そう言って皇帝は笑った。
エマが勇太の顔を見つめる。
「勇太……勇太!」
「エマ!」
2人は泣きながら抱き合った。
謁見の間がある公園の上には、地球と帝都、2つのそっくりな惑星が、2人を祝福するかのように映し出されていた。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。少しでも楽しんで頂けたのであれば幸いです。
また何かお話を思いつきましたら投稿させて頂きます。今後ともなにとぞよろしくお願い申し上げます。




