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19 2人の悩み②

 勇太達のテーブルにナポリタンとホットサンドが運ばれてきた。


 勇太は、ナポリタンを食べながら、エマと一緒に映画を観に行ったこと、帰りに車に撥ねられたこと、エマのお陰で命拾いしたことを俊介に話した。


 念のため、車がエマを狙っていたことは言わなかった。


「そっか。そんなことがあったんだな」


「うん、エマさんは僕の命の恩人だよ」


「それにしても、勇太の告白相手がエマだったとはなあ……やっぱり、今もエマのことが好きなのか?」


 俊介が手に取ったホットサンドを皿に置くと、気まずそうに聞いた。


 勇太は、ナポリタンをフォークでクルクルと巻きながら、笑って答える。


「ははは、流石(さすが)に人類と帝国の双方を敵に回す訳にはいかないし、今は別に何とも思ってないよ」


「それ、本心か?」


 俊介が真面目な顔になって勇太に聞いた。勇太のフォークを持った手が止まる。


 勇太は、少し考えてからフォークを皿に置くと、いつも俊介がするように頭を下げて手を合わせた。


「……ごめん。嘘ついた。本当は今も好き」


 俊介が笑った。


「やっぱそうだよな。あの奥手で有名な勇太が勇気を振り絞って告白したんだからな。まだ好きに決まってるよな」


「そんなに有名かな……あ、俊介がエマさんの許婚(いいなずけ)って分かってからは、個別にエマさんには連絡してないからね」


「はは、分かってるよ。勇太はそういうところ律儀だからな。俺ならこっそり連絡しちゃうけどな」


 俊介がそう言って笑うと、ぽつりと(つぶや)く。


「俺達、逆だったら良かったのにな……」


「そうだね……」


 勇太は苦笑しながら(うなず)いた。


 俊介がホットサンドを手に取って眺めながら言う。


「エマやミーナは、俺たちのことどう思ってるんだろうな」


 俊介がホットサンドにかぶりついた。もぐもぐ食べて飲み込み、勇太に話しかけた。


「この前、エマとミーナをどこかに招待しようって話したけど、この土日に泊まりで海に行かない?」


「海?」


「うん。親父の会社が千葉の海岸沿いにホテルを持ってて、そこに離れのコテージがあるんだけど、ちょうど土日に親父が仕事でそこに泊まる予定なんだよ」


「親父には本館に泊まってもらって、俺らがそのコテージに泊まるって手があるかなと思って。親父の車に乗って連れていってもらえるし」


「海か。楽しそうだなあ……でも1泊して大丈夫かなあ」


 男女でお泊まりとなると、少し心配だ。俊介が笑う。


「大丈夫だよ。一応親同伴だし。それに、俺達が仲良くすることは政府推奨だからな」


「1泊すれば時間に余裕もあるし、できればエマやミーナの気持ちを聞いてみたいんだ」


 俊介が真剣な顔になった。


「もし、エマが俺のことを好きなら、俺は、自分の気持ちはともかく、エマの許婚としてエマを幸せにする」


「人類の未来がかかってるらしいしな。勇太には悪いけど……」


「うん、大丈夫。分かってる」


 真面目な顔で勇太が言った。それを聞いて、俊介が話を続ける。


「だけど、もし、エマが勇太のことを好きなら、俺は全世界を敵に回しても許婚を辞退して、勇太を応援するぜ。そしてミーナに告白する」


「俊介、そう言ってくれて嬉しいけど、全世界を敵に回すのはちょっと……」


 勇太が少し心配になって言った。俊介が笑う。


「ははは、まあ実際はエマの気持ちに関わらず今のままってことになるかもしれないけどな」


「そもそもエマもミーナも俺達が全然知らない別の人が好きでした、っていう残念な結果になるかもしれないし」


「それは悲しいなあ」


 勇太は大げさに嘆く真似をした。


「よし、土曜日は夏の海ではしゃぐぞ!」


 俊介が残りのホットサンドを口に放り込んだ。

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