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11 舞踏会②

 万雷(ばんらい)の拍手の中、踊り終えたエマと俊介が勇太達のテーブルに戻ってきた。


 俊介が笑顔で勇太に聞く。


「いやあ、緊張した。どうだった? ちゃんと踊れてた?」


「うん、すごく優雅で、綺麗で、カッコよくて……思わず見入っちゃったよ」


 勇太の偽りのない言葉に俊介が喜ぶ。


「ほんと?! 良かった! それにしても、香月(こうづき)がこんなに踊りが上手なんて知らなかったよ。ずっとダンス習ってたの?」


「う、うん。子ども頃から踊る機会があったから。ただ、このダンスは習い始めたばかりだけど」


 エマが少し恥ずかしそうに言った。俊介が驚いた様子で言う。


「習い始めたばかりで、こんなに踊れるの? ほんと凄いなあ!」


 俊介がテーブルに置かれていたジュースを飲むと、ミーナの方を向いて聞いた。


「そうだ、ごめん! 練習でバタバタしてて話す機会がなくて……はじめまして、日向(ひゅうが)俊介です」


 ミーナがニッコリ笑って答える。


「ミーナです。よろしくニャ♪」


 ミーナが何故か招き猫のポーズをして、笑顔でウインクをした後、無表情に戻った。


 どうもミーナが勉強している「軍のテキスト」には、相当な問題があるような気がする。


「は、はは、こちらこそよろしく……ミーナって面白いキャラなんだね」


 俊介が戸惑いながらも笑顔で応じた。


 勇太達4人がしばらく食事をしながら雑談をしていると、会場内にアナウンスが流れた。自由参加でゆったりしたテンポのワルツを踊るらしい。


「楽しそうね」


 ミーナが(つぶや)いた。無表情だが、何だかソワソワしている。踊りたくて仕方がないようだ。それに俊介が気づいて言った。


「いいね、踊ろうか! そういえば、ミーナも勇太も踊れるんだよな。さっき練習で踊ってたの見てたぜ」


「勇太も人が悪いよなあ。踊れるならそう言ってくれれば良いのに」


 俊介が笑いながら言った。


 さっきの練習で踊れたのは、ミーナが勇太の首に貼った「訓練サポート装置」のおかげだ。その装置とやらは、すでにミーナが剥がして回収している。もう踊れっこない。


 勇太は慌てて訂正しようとしたが、俊介が続けて話し始めた。


「さっき俺と香月で踊ったばっかりだし、ペアを替えようか。俺がミーナと、勇太が香月と踊るってのはどう?」


「えっ?」


 勇太が驚いてエマを見る。


 エマも驚いた様子だったが、勇太を見て笑顔で言った。


「そうね、せっかくだし一緒に踊ろうよ、勇太君」


「う、うん!」


 勇太は思わず勢いで答えてしまった。



† † †



 どうしよう、まったく踊れる自信がない……内心青ざめる勇太に、隣に座るミーナが小声で言う。


「さっきの練習で、大まかな踊りの動きは体が覚えたはずよ。あとは気合いあるのみ」


「で、でも……」


 オーケストラが、ゆったりしたテンポの3拍子の曲を演奏し始めた。多くの人がテーブル席から立ち上がり、ペアを組んで踊り始める。


「それじゃ、俺達も行こうか」


 そう言うと、俊介は立ち上がり、ミーナの前に進み出ると、優雅に一礼をした。


「改めて、今日はよろしく、ミーナ」


 ミーナが立ち上がり、手を差し出した。


「こちらこそ、よろしく。俊介君」


 俊介は、ミーナの手を取ると、手の甲に口づけをする仕草をした。2人は会場の中心へ歩き出した。


 え? ああいう感じなの?! 勇太が驚いた様子でエマの方を見る。エマも初めて知った様子で、驚いていた。


 もうここまできたら、やるしかない。覚悟を決めた勇太は、エマの前に進み出た。一礼すると、緊張した面持ちでエマに言う。


「エマさん、是非ご一緒させてください」


「勇太君、こちらこそ」


 そういうと、エマが頬を赤らめながら、勇太の前に手を差し出した。


 勇太も、顔を真っ赤にしながら、震える手でエマの手を取ると、エマの手の甲にそっと口づけする仕草をした。


 勇太は緊張したまま顔を上げてエマを見た。エマも少し緊張していたが、勇太の顔を見て微笑んだ。


 エマの笑顔を見て、勇太は緊張が少し解けたような気がした。


 勇太はニッコリ笑うと、エマの手を取って会場の中央へ進んだ。

続きは明日投稿予定です。

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