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17 愛妾がいない


毎朝エリザベートとブライドは図書館でクロちゃんと会うようになり、次第に会話も弾むようになってきていた。

もちろん、エリザベートはそのことをアンナに伝えている。

だが、ブライドにはノートの内容については話していない。

何となく、アンナとエリザベートの秘密にしておきたかったのである。


「エリザベート嬢、今日、生徒会に行ってみてもいいだろうか?」

「生徒会に、ですか?」

「うん、本来なら王族が学院に通う間は、生徒会に所属するのが慣例だっただろ?

母上の暴走で生徒会の仕事は参加できなかったから、エリザベート嬢が頑張ってくれていたのだろう?

今なら、私も何か手伝えると思うんだ」

(王妃様の暴走・・・、しっくりくるわ。

公務で忙しい私のブライドに学院でも仕事をさせるだなんて!そんな仕事は婚約者であるエリザベートにさせればいいのよ!   だったわね・・・)

「あー、そうですね、殿下に手伝ってもらえたら少し楽ができそうですね」

「雑用でも何でもやるよ、そういう地道な事もきちんとやらないとね、厩舎の掃除のように」


厩舎の掃除の前に、エリザベートは生徒会室で皆にブライドを紹介した。

「今後は生徒会の仕事を手伝わせてほしい。どんな雑用でも、なんでも言ってくれ」


(((((王子様に雑用????むり~~~~~~)))))

生徒会室にいた全員の心の声がそろった瞬間だった。


「殿下、この書類を分類してください」

「わかった」

「それが済んだらこの書類の資料をそろえてください」

「わかった」

「殿下、この計算書を見直し願います」

「わかった」

「殿下、先ほどのお茶を片付けてもらえますか?資料を広げたいので」

「わかった」


生徒会の面々は、エリザベートがどんどんと雑用をお願いし、それを「わかった」の一言でなんでもやってくれるブライドに驚いていた。


「エリザベート様容赦なく雑用投げまくりだな」

「殿下も文句ひとつ言わないな」

「というか、お茶の片づけまでやらせるのか?」

「「「殿下、懐広すぎない?」」」

ひそひそと話す生徒会の面々だったが、自然体で雑用をこなしていくブライドの様子に、次第に慣れて行った。

そして、学院内でも、ブライド王子が生徒会の仕事に参加していることが噂になっていた。


「ねえ、あなたが王子様?」

その日、生徒会の仕事を終えてから厩舎に向かおうとしていたブライドとエリザベートの前に、イレーネが現れた。

「エリザベート嬢、この令嬢は?」

「確か、編入していらしたイレーネ=シュルツ子爵令嬢だったかと・・・」

「で、なんでいきなり声かけてくるんだ?」

「さあ?」


「ねえ、何こそこそ話してるのよ、王子様なんでしょ?」

「ええ、こちらはブライド王子殿下ですが、いきなり声をかけるのは不敬ですわよ」

「はあ?あんたに聞いてないわよ」

あんた呼ばわりされたエリザベートは驚きのあまり言葉を失った。

「で、王子様でしょ?学院は平等なんでしょ?だったら私とお茶しましょうよ」

((なんで???))

二人は顔を見合わせてしまった。

貴族の子女がこんなふうに声をかけることなどありえない上に、親しくもないのにお茶に誘うなど、そしてそれが王族に対して行われた、ということに衝撃を受けたのだ。


「いきましょ~」

イレーネはそう言ってブライドの腕に絡もうとして、その手を叩き落とされた。

「いた~い、ひどいわ!暴力をふるうなんて!」

そう言ってエリザベートに向かって涙を流しながら叫び始めた。

「王子様ぁ、みました?私に暴力をふるったんですよ、この人」

「エリザベート嬢じゃない、私が君の腕を払ったんだ。私は王族だ、いきなり見ず知らずの者に触れられるなど、ありえないだろう、君は貴族の常識もしらないのか?」

「ひどぉい、ちょっと王子様とお話したかっただけなのにぃ」


イレーネはひたすら自分が可哀そうだと泣き叫ぶ。

その騒ぎに駆けつけてきた教師たちがイレーネを連れていく。


生徒会の面々も騒ぎを聞いて駆けつけてくれた。

「あの令嬢はいったい・・・?」

「殿下、大丈夫でしたか?」

「ああ、それにしてもいきなり腕にしがみつこうとするなんて驚いたよ」

「ジャン様がお世話係だったでしょ?生徒会室にいきなり来た時も驚いたけれど、彼女はいつもあんな感じなの?貴族として大丈夫なのか不安になるわね」


「殿下、申し訳ありません。彼女は、シュルツ子爵令嬢はとにかく人の話を聞かなくて、生徒会室に勝手に入ってきた後、学院長達にお世話はできないとお伝えしました。

学院の先生が交代で見張っていてくださるようですが、何度も貴族の常識を教えても全く聞く耳がないらしくて、最近ではクラスで授業を受けることもやめさせたようです」

「すごい問題児ね」

「子爵は何を考えているのだろうか?」

「高位貴族とつながりができれば、と思っているんではないでしょうか?

彼女、見た目は可愛らしいですからね」


アンナの知っている歴史では、すべてが王妃の支配下にあったエリザベートよりも、表情豊かに話しかけてくるイレーネに心惹かれてしまい、ブライドは学院での時間のほとんどを彼女と過ごすようになっていったのだった。

そんなブライドの様子を聞いた王妃は怒り狂い、エリザベートにイレーネを排除するように指示を出していたのだ。

それが悪女エリザベートの始まりだった。

だが、王妃の支配から抜け出し、ブライドと二人で話す機会が増えた今、ブライドがイレーネに惹かれることもなく、エリザベートがイレーネをいじめることもない。

歴史は確実に変わっていた。


*******


「愛妾イレーネがいなくなったのか、そりゃそんな常識外れじゃね。

エリザベートと王子が掃除したり生徒会で仕事したり、一緒にいて仲良くしてるんならそりゃ他に恋人なんて作らないよね」

歴史書には愛妾イレーネはいない。

ブライド国王と王妃エリザベート、になっている。


そして、アンナの暮らしも変化していた。

アンナの家に馬車があった。

御者も、メイドも執事もいる。

普通の貴族としての生活ができていた。

アンナ以外の人には変化前の記憶がないが、記憶のあるアンナは普通の生活を送ることに戸惑いながらも、勉強に集中できるようになり、学院での生活が楽しく思えた。




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