13 会話って難しい
「ねえクロちゃん、会話って難しいわね」
朝の日課となったクロちゃんのご飯をあげながら、ノートに書き込みをしていく。
【アンナちゃんに書いてもらった会話は、全然続けられなかったわ】
どんな会話をしたのか詳しく書いていく。
「これって、私からばかり話しているわよね。殿下からは話しにくいのかしら?」
~あににきくー~
「え?兄ってお兄様の事?そうね、お兄様に聞いてみるのがいいかもしれないわね」
エリザベート達家族は、解放されたあの日から、夕飯は必ず一緒に摂ることにしていた。
夜会や仕事などで両親がいない日も、家にいる家族は必ず一緒に食事をした。
食事の最中はあまり会話をすることはないが、食後はお茶を飲みながら話をするのが日課となっていた。
今日は両親は夜会に出かけている。
兄と二人で食後のお茶を飲みながら、エリザベートは兄エリックに話を聞いてもらうことにした。
「お兄様、お兄様は女性とお話をするときに、どんなことを話しますか?」
「何その質問?学院で何かあった?」
「何もないわよ、ただ・・・」
「ただ?」
「殿下と話が弾まない、というか、どちらもあんまり会話しにくいというか・・・」
「二人だと、会話ができないってことでいいかい?」
「うん、そんな感じ」
「どんなふうになるのか教えてよ」
エリザベートは先日のお茶会での会話をエリックに話した。
話を聞いたエリックは、なんとも言えない顔をしていた。
「その、ベスは友達といつも何話してるの?」
「友達・・・」
「あ・・・・」
エリザベートは婚約者に選ばれてからは王妃に監視されていたため、王妃の選んだ 友人としか会話ができていなかった。
その会話内容もすべて報告されてしまうため、会話らしいことはしたことがなかったのだ。
王妃の監視が無くなってからも、どのように周囲に話しかけてよいのかわからず、未だにきちんとした会話はできていない。
生徒会でも、いきなりべらべらと話すことはできず、今まで通りに振る舞うしかなかったのだ。
「うん、何となくわかった、殿下の方は私から話を聞いてみるよ」
「ありがとうお兄様」
「それでさ、まずはクラブに入ってみたらどうかな?」
「クラブ、ですか?」
「学院で自分の趣味のクラブを訪ねてみたらどう?今は王宮に行くこともないし、時間はあるだろう?」
「そうね!明日、さっそく乗馬クラブと読書クラブに行ってみるわ!」
いいことを聞いたと嬉しそうにはしゃぐ妹を見ながら、エリックは何も言えなくなってしまった。
自分が提案したとはいえ、乗馬クラブは騎士を目指す者が多い。
割と荒っぽいクラブなんだけど・・・まあ、自分が付いていこう、とエリックは思った。
そして、はて?読書クラブなんてあったかな?とも思った。
【アンナちゃん、今日はお兄様と乗馬クラブに行ってみるの。そしたらきっと会話も上手にできるようになるわ、楽しみ】
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「乗馬すると会話が上達するんだ、意外」
エリザベートの決意を読んだアンナの感想は残念なものだった。




