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11 会話を考えよう


「何これ?」

アンナはまたしても思わず声が出てしまった。


【ブライド様が捨てられてしょんぼりしている犬に見えてしまって・・・。

もう一度、始めからきちんと向き合ってみようかと思うの】


「王子が犬に見えるって、どんな視覚してんだ?

まあ、本人が犬でもいいっていうなら別にいいんだけどさ」


【いつもお茶会で話したときは、王家からの台本があったんだけど、これからはないの。

何を話したらいいのかしら?

今までの台本は、今年の小麦の生育状況とか、各領地の特産物についてとか、隣国の視察についての連絡事項とかだったのよね・・・。他に話題ってあるの?

アンナちゃん、教えて】


*******


「台本で会話・・・全くわからん。てか、私に聞かれても、男性と二人きりでお茶なんて飲んだことないし、そもそも、茶会ってなんだ?って話だよ。どーしよ」

そうだ、と思いついたアンナが向かったのは、困ったときのロッテンマイヤー先生だ。


「先生!質問がありまして、お時間よろしいでしょうか?」

「あら?アンナさん、少しだけなら大丈夫よ」

そういって、また先生の部屋に通してもらった。


「それで?今日の質問は何かしら?」

「はい、お茶会について伺いたいんです」

「お茶会というと、淑女のマナーで指導したと思うのだけど?」

「はい、それは習いました。初めてのお茶会で緊張しましたが、ものすごくためになりました。

あ、でも実際にお茶会に出ることはないと思いますけど・・・」

(うちは貧乏だからな・・・誰も誘わないだろうし)


そんなアンナの心の声が聞こえたかのように、ロッテンマイヤー女史はやんわりと否定した。

「それはわからないわよ。ここは社交界の縮図とはいえ学院ですもの、いろんな立場の人たちと交流ができる絶好の機会よ?誘われたら積極的に参加しなさいな。

貴女の将来にも為になるわよ」

(なるほど、将来のためか・・・、じゃ、もっと真剣にマナーとは向き合おうっと)


「先生、私の家は貧乏だから、と思っていましたが、ここは学院ですものね、いろいろ挑戦できるようにもっと勉強します」

「いい心がけね、貴女のお兄様もお姉さまも学院では楽しそうに友人を作っていたわね。

貴女にもきっと良い出会いがあるはずよ」

「はい、ありがとうございます」


「それで、質問はお茶会の事、で今の話で終わりでいいのかしら?」

「あ、いえ、その、婚約者もどき・・・というか、婚約者になるかもしれない男女がお茶会をするときに、何を話し合うのでしょうか?」

「まあ、貴女、婚約の話があるの?」

「いいえ、そうではなくて、その、友人が、そう言った状況で・・・。

何を話したらいいのかわからないと聞かれて、私にもさっぱりわからなくて・・・」

「そういうことね」


納得した様子のロッテンマイヤー女史は、一冊の本をアンナに渡した。

「古い本ですが、婚約者同士の会話想定集です。昔は政略的な婚約を結ぶことが当たり前でしたからね、初めての会話に困らないように作成されたものです。

ご友人とゆっくり読んでから返却してもらえばいいわ」

「ありがとうございます!」


ロッテンマイヤー先生から貴重な本を借りて、アンナは部屋を後にした。


「ちょっと待ちなさいよ」

(ゲッ、久々のイライザ様達が登場!なんか機嫌悪っ)

「ごきげんよう、イライザ様、皆さま」

(取り巻きの名前がわかんないや)


「あなた、先生に何か話したの?」

「何かとは?」

「あなたがいじめにあっているとか、悪い噂を流されているとか」

(すっかり忘れていたけど、そういえばロッテンマイヤー先生が怒っていたわね。

クラスの子達も聞き取りされたとか言ってたっけ。

でも、そんな事正直に言ったら・・・かなり危険!)


「なんのことでしょう?」

アンナは思いっきりとぼけて見せた。

「あなたのせいで、私たちが白い目で見られているのよ!絶対何か話したでしょ!!」

(そりゃそうだ、先祖が悪女だからって、暴言吐いたり、人を突き飛ばしたり、持ち物を隠したり、人目を気にしないでやりたい放題してたらね)


「「「「なんとかいいなさいよ!」」」」

全員から詰め寄られたアンナは、逃げようとダッシュをかけようとした時、

「何をしてるんだ」

そう割って入ってきた声がした。


「何も、何もしておりませんわ、ハント様」

「そうですわ、ちょっとお話をしていただけですわ」

「数人で一人を囲んでいたように見えたが?」

「!!」

「それに、名前で呼ばれるほど親しくはないだろう?」

「失礼しますっ」

(あ、逃げた)

ハント様、と呼ばれた人物のおかげで危機は去った。


「あの、ありがとうございます」

「いや、大丈夫かい?」

「乱暴されたわけではないので、大丈夫です」

「それならよかった。ところで君は、もしかしてアンナ=クラスト男爵令嬢かな?」

「は、はい。私がアンナ=クラストですが?」

「よかった、君を探していたんだよ」


ハント様、という人は一体何者なんだろう?

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