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10 次の問題


【アンナちゃん、ありがとう。

アンナちゃんの助言のおかげで、私の周りには見張りがいなくなったわ。

まだ3日ほどだけど、家でも家族と自由に話ができて、好きな本が読めて、食べたいものを好きなだけ食べられるの。本当にうれしい。今度お兄様と遠乗りに行く約束もしたのよ。本当に楽しみだわ】


自由に動けるようになったエリザベートだが、アンナとクロちゃんの事は誰にも言う気がしなかった。

だが、誰にも見つからないようにここに来るためには、朝早く、誰も登校していない時間に来るしかなかった。

その代わり、クロちゃんにあげるおやつの種類は豊富になった。

お弁当と一緒に軽い軽食やデザートを頼んだためだ。


アンナに見張りを命じていたのが王妃だったこと、ようやく解放されたことを詳しく書いた。

お礼の言葉を書いた後、クロちゃんにサンドイッチをあげながら、エリザベートは考えていた。

(ブライド様の事、どうしよう・・・)

父と母はあまり良い顔をしなかったが、兄が、少し考えてみれば?というので、考えてみることにしたのだが、あまりにも彼の事を知らなさ過ぎた。


(本当に婚約してたのか疑問よね)

「はあ、クロちゃん、どうしたらいいのかしらね」

~えりー、アンナに聞いてみる~

「そうね、アンナちゃんならいいアイディアを出してくれそうだもの」


【アンナちゃん、新たな問題が発生したの。

私と王家の婚約は解消か、白紙になる予定だったんだけど、ブライド様が、チャンスが欲しいっていうの。どうしたらいいと思う?】


*******


「はあ?何だこれ?」

ノートを見たアンナは思わず声が出てしまった。

「うわあ、王妃様だったのか、犯人・・・、嫁いびり?いや、婚約者いびりだね。

歴史書には、美しく慈悲深い王妃って書いてあったけど、とんだいびりばばぁだったとは。

歴史は書かせる人の都合に合わせて変わっていくって、先生が言ってたな。

権力者って、怖い怖い」


で?ブライド様って誰だっけ?

慌てて歴史書を確認すると、何と、王子ではないか。

あれ?ノートには解消か白紙になる予定、と書いてあったけど、どういうつもりなんだろう?

さっぱりわからない。

どうしたらいいかって聞かれてもな~・・・。

本人に聞いてみりゃいいじゃん!


【とりあえず、見張りがいなくなって良かったね。

ブライド様って王子様、でいいんだよね?

その王子様に直接聞いてみたらいいんじゃない?】


アンナは田舎育ちで、よく言えばおおらかで自由な考えを持っている。

悪く言えば、貴族としてはあまり見かけない考え方をしている、ということだ。

エリザベートの質問に直球で答えるのは、当然の成り行きだろう。

エリザベートは今まで王妃に支配され続けており、自分で考える、ということができにくくなっていた。そのため、アンナの書いてくることを素直に実行してしまうのだった。


*******


「殿下、少しよろしいですか?」

エリザベートはアンナアドバイスを受けて、ブライドに声をかけた。

「・・・エリザベート・・嬢、ああ、ええと、どこで話そうか・・・」

「殿下、それでしたら、サロンをご用意します」

側近の一人がそう言ってくれた。


婚約がどうなるかわからない中、二人きりで話すこともはばかられたので、話の内容がわからない程度に距離のあるサロンで話をするのは、エリザベートにとってありがたかった。


「それで、私に何の用事かな?」

「はい、その、先日の殿下からのご提案についてお聞きしたくて・・」

「・・・ああ、そのことか・・・」

「チャンスが欲しいとおっしゃっておられましたが、どういうことでしょうか?

私たちは、お互いの事を全く知りませんし・・・」

「それについては、私の責任だ、母上の話を鵜呑みにして、貴女とのかかわりを持とうとしなかった」

「王妃様の話・・ですか?」

「ああ、エリザベート嬢は婚約者になったから傲慢になって王家を馬鹿にしている。

どちらの立場が上かきちんとわからせないといけないと。

すまない、交流の際も、必要以上に話しかけないように言われていたのだ」

「そうですか、そんなに私が気に入らなかったのでしょうね」

「いや、誰でも同じだったと思う。母上は・・・・我が母ながらよくわからないのだが、私に近づく女性はすべて憎いと・・・」


あまりの内容にエリザベートは言葉を失った。

息子の側にいる女性が憎いとは・・・、全く理解できない思考だった。


「それで、エリザベート嬢とまともに話したこともなく、自分できちんと向き合おうとしなかった時間がひどくもったいなく思えて・・・、身勝手な思いだとわかっているのだが、もう一度、始めからきちんと向き合ってみたいと・・・、駄目だろうか」

こちらを見つめるブライドの頭には垂れた耳が見える。

まるで捨てられた犬のよう・・・。

そんなしょんぼり犬に見つめられ、エリザベートの心は揺れた。



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