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1はじまり

 

アンナは貧乏な男爵令嬢だ。

どのくらい貧乏かというと、使用人が一人も雇えないくらいだ。

家は小さく、両親と兄と姉との5人家族だが、全員で働かないと日々の食事にも困るほどだ。

家の周りはすべて野菜を育てている。

兄と姉はそれぞれ学園を卒業して、それぞれ王宮で働いている。

アンナも近所の手伝いをしたりして家計の足しにしている。


そんなアンナも貴族学院に入学しなければならない。

どんなに貧乏でも貴族は通う義務があるからだ。


しかし、貴族学院に通うにも、通う馬車がない。

兄と姉の時は近くの親戚と同級生ということで、通学時には乗せてもらうことができた。

だが、残念ながらアンナと同じくらいで学園に通う親戚はなく、どうやって通うかを家族で考える日々だった。

制服は姉のおさがりがある。

教科書も兄と姉の分があり、書き込みはあるが、大切に使っていたことがわかるモノだった。


「あ~あ」

近所の養鶏場で卵を採る手伝いをしながら、ため息が出る。

(学園なんて行きたくないな・・・。でも行かないと貴族として認めてもらえないっていうし、

お兄様もお姉さまも、学園を卒業したから王宮で働けるようになったんだ、って言うし・・・。

でも学園には貴族の子女ばかりだし、こんな貧乏な貴族なんているのかしら?

でも、通うのに馬車がないと困るし・・・)

「アンナちゃん、大丈夫?」

一緒に卵を拾っていたベスが心配そうに声をかけてくれた。

「うん、ちょっと考え事してて・・・」

「貴族の学校に行くこと?」

「そう」

「一緒の学校に行きたかったね」

「私もだよ」

「で?何を考えていたの?」

「うん、どうやって学校に通おうかなって、馬車がないとちょっと遠いし」

「そっかぁ、う~ん」

話しながら卵を拾っていき、ベスの父親の所へと持っていく。


「父さん、毎日貴族の学校の方に行ってる人誰か知らない?」

卵の入った籠を渡しながらベスが聞いてくれた。

「ん?ああ、アンナちゃんの学校かい?あそこはちょっと遠いからな、歩いてはいけないな」

「そうなの、だから、朝と晩と誰か通っている人いないかな?」

「あの、もしそんな人がいたら教えてください」

アンナも必死でお願いする。

「そうだな、ちょっと聞いてみるよ」

ベスの父親はそう言ってアンナとベスの頭をポンポンと叩いた。


数日後、ベスの父親は知り合いの牧場主が、毎日学院の近くの飲食店に配達をしていることを思い出し、話を通してくれたようだ。

アンナの父、ガンドル=クラスト男爵はこの話を聞き、ベスの父親と牧場主に感謝を伝えに行った。

もちろんお礼をどうするかについても話し合ってきたようだ。

一応貴族でもある男爵がわざわざ挨拶に来てくれたことに、ベスの父親も牧場主も好感を抱いた。


入学式の日は、さすがに両親と一緒に辻馬車を乗り継ぎして学院に向かった。

各地の貴族子女に加え、今年は王族も入学となったため、ひどく護衛が多かったそうだ。

アンナは無事にCクラスになり、同じような男爵家、子爵家の女の子達と仲良くなれた。


その後、両親とアンナは歩いて学院から一番近いレストランに向かった。

アンナの通学時、配達の荷馬車は学院の近くの飲食店に回るので、アンナは学院に一番近いレストランで降ろしてもらうことになっていた。

帰りは少し遅いが、空いた入れ物などを回収しながらアンナを拾ってくれることになっている。

一応貴族の子女ということで、レストランの店主は店の事務所で待つことを了承してくれたため、両親はその挨拶もあり、一緒に来ることになったのだ。

店主は気のいい男で、アンナをきちんと帰りの馬車に乗せることを約束してくれた。


アンナの学院生活は穏やかな日々のはずだった。

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