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2話:魔王軍会議

 魔界――魔王城。


 会議室。


「デーモンキングがやられたか。奴はデーモンキングの中でも最弱……しかし勇者一味もいよいよ放っておけなくなったな」


 肌が赤い大男がそう言って、報告してきた使い魔を手で下がるように指示した。彼の名はイフリート。火を司る魔神であり、魔王軍の幹部である。


「いやというか、その魔術師強すぎません!? いくらなんでも人間の力でデーモンキングをワンパンは無理ですって」


 目を見開きながらそうテーブルをバンと叩いたのは、白髪に黒いコートを着た少年だった。口から牙が覗いており、背中にはコウモリの羽が生えている。彼の名はヴァン。吸血鬼であり、見た目よりずっと長生きであるが、魔王軍の幹部の中では新参である。


「そうは言うけどね、ヴァン君。最近の人間は侮れないわよ? 勇者もその仲間もかなりの強敵だし。しかし、こんな時に魔王様はどこに行ったのかしら~寂しいわ~また一緒にゲームしたいわ~」


 はあ、と色っぽいため息をついたのは、下半身が蜘蛛になっている半裸の美女、アラクネだ。彼女もまたここに同席している者達と同様に、魔王軍の幹部である。


「皆の衆。実は使い魔がこんな映像を残していましてな……」


 おずおずと、この会議の進行役でありかつ魔王の側近である魔族の老人――トクゾウが水晶をテーブルの上に置いた。


 その水晶から空中に、立体映像が映し出された。


 そこには、ガノスがデーモンキングを倒す一部始終が映っていた。


「……ん?」

「あら?」

「ってあれ……魔王様じゃないですか! なんで勇者一味に!?」


 ヴァンが再びテーブルを叩いた。


「……流石魔王様。見事な魔術だな」

「はあ……人間形態も格好いいわ~」

「以前より魔術の発動速度、威力が上がっていますな……ふむ、魔王様もなんだかんだ言って努力を惜しまない御方じゃのう」

「いやいや、そこじゃなくて、もっとツッコミ入れるところあるでしょ!」


 ヴァンの言葉に、全員が顔を見合わせた。


()()()()()()()()()()()勇者一味に加担したかもしれないのですよ!?」


 ヴァンのその言葉と同時に、テーブルが業炎と共に砕けた。更に、細いワイヤーが彼の首や手足を縛り、最後にトクゾウが手刀を彼の心臓へと突き立てた。


「おい、ヴァン。滅多なこと口にするんじゃねえぞ。幹部の新参だからって……魔王様を侮辱するのは許さねえ」


 テーブルを砕いたイフリートが怒りの形相で、ヴァンを睨み付けた。


「馬鹿な子ね。魔王様が裏切るなんて……天地が逆転しても有り得ないわ。それをよく、その脳髄に刻みつけておきなさい」

 

 アラクネがワイヤーをヴァンの手足から外していく。その勢いで、彼の右足と左手が千切れ飛ぶが、気にしている様子はない。


「覚えておくことじゃ、小僧。魔王様は貴様や我らのような凡百が束になっても敵わないほどの頭脳を持っていらっしゃる。こうして勇者一味にいるのも、当然――()()()()()()()()()()()()


 心臓を潰したトクゾウが、血塗れの顔のままヴァンの死体へとそう諭した。


 ヴァンの死体が蠢くと、千切れた手足が元に戻り、心臓もすぐに生えてくる。


「……乱暴だなあ。でも、もしそうなら、なぜ幹部の僕達に伝えていないのかな? もしかしたら何か不慮の事故で……記憶を失ったとか!」


 ヴァンが身体についた埃を払いながら、なんでもないように会話を続ける。


「馬鹿ね……魔王様が不慮の事故に巻き込まれるわけがないじゃない」

「その通りだ。きっと……これは極秘任務に違いない」

「魔王様の深謀……我らには計り知れぬのう」

「ほんとかなあ……」

「とにかく、予定通りに人間界を侵略をしつつ、勇者一味の邪魔をし、そして魔王様の秘密作戦をフォローする。これをそれぞれの部下に徹底させること。これで、良いな!?」


 イフリートの言葉で、魔王軍会議は終わったのだった。


 最後まで疑っていたヴァンだが、まさか彼だけが真実に辿り着いていたとは――この時本人も含め誰も気付いていなかった。


 こうしてガノスは部下である魔王軍にすら、勘違いされてしまうのだった。


ヴァン君は唯一のツッコミ役です

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