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焼鳥とシュークリームと俺。

作者: 佐野智香

それにしても暑い!!

何て蒸し蒸しするんだ。

俺の帰宅は予定外に遅くなってしまった。

最寄り駅に着き、改札を出て足を止めた。

やっぱり一杯飲んでから帰ろうかな。

家まで15分程だが、冷たいキンキンのビールが恋しかった。

特に目当ての飲み屋はなかったが商店街に向かって歩き出した。

「えっと、どこにしようかな?」と悩んでいると路地裏に確か新しくできた焼鳥屋があったのを思い出した。行ったことないが、気になったのでうろ覚えの道を歩いて行った。


「シュークリームいかがですか?チョコレート味が絶品ですよ。」

唐突に声をかけられた。

こんな所にシュークリーム屋あったっけ?と思いながらチラッと見てみた。

て言うか、ここ焼鳥屋だったような気がするんだけど…変わったのかな。

そう思ってもと来た道を戻ろうとした時、また声をかけられた。

「もしかしてビール探してます?」

学生のバイトだろうか、Tシャツにジーンズそれに黒いエプロンをしている。

「あぁ、まぁ。ここら辺に焼鳥屋ありませんでしたっけ?」

「あ!それここです!」

「え!!!!で、でもシュークリーム…」

「あぁ、これは店長の趣味で出してるんですよ。美味しいですよ」

「何か凄い組み合わせですね」と言いつつ、おいおいこの店なんなんだよと心の中で突っ込みを入れてた。

そして、ヤバい店に来てしまったと少し後悔した。

いやまてまて、まだ店に入っていないし、シュークリームも買っていない!!

まだ俺はまだ引き返せる。初めて入る店にしてはリスキー過ぎる。無難な店を探そう。そう思い立ち、バイトらしき人に「あっ、また今度にします」と言ってまた立ち去ろうとした。

「あっ、待って下さい。美味しいビールありますから!!」と力強く言われた。

さらに引く俺。

マジかよ。と思いながら、店に入ることにした。割引券ももらったし、何となく怪しさが気になったのだ。

店内は黒を貴調としたお洒落な落ち着いた雰囲気だった。

「あれ。思ったより普通か?何かデート向きだしな…」

キョロキョロと見渡していたら、おしぼりとメニューを先程のバイトの子が持ってきた。

俺はとりあえず生ビールと枝豆を注文して、メニューを見ながらお勧めを聞いた。

そして、かしわ。つくね。半生レバーを全部塩で頼んだ。

生ビールを飲みながら、焼鳥を待つ。

「うまい!やっぱ最高!ビール最高!」この一杯の為に生きてる…なんてしみじみ思ってしまう。

ビールを堪能してると今度は、焼鳥が運ばれてきた。

「何なんだ!この焼鳥は?!うまいじゃないか!!」

幸せを口にほお張りつつ絶品の焼鳥を味わった。

炭火焼きか。ほわほわとふっくらにまん丸してるつくね。俺の好きなつくね。もう一本頼もうかな。と思っていた時に、奥から店長さんらしき人がでてきた。

「いや〰️、バイトの奴が強引だったでしょ?すみませんね」と40代だろうか、ちょっと強面のいかにも「職人です」という雰囲気を漂わせながらテーブルの側までやってきた。

「あぁ、初めはびっくりしましたけど焼鳥美味しいです。特につくね。好きなんですよね。」

「あっ、そうか。よかった。」

とニコニコしながら、追加の生ビールとつくねを作りにまた奥に入っていった。

俺は、内心ゴリゴリにシュークリームを勧められるのかとドキドキしていた。甘いのは、嫌いではないが得意ではない。お酒の席では特に食べたいという欲求がわいてくるわけではなかったし。

それにしてもあのゴツイ手でシュークリーム作ってるのか…と不思議だった。

顔とかで判断してはいけないと思いつつ、ギャップの激しさに笑いを堪えていた。

しばらくしてまた店長が、生ビールとつくねを運んできた。今度は不適な笑みを浮かべている。

何となく嫌な予感がしつつも、ビールをとりあえず流しこんだ。

「あっ、やばいって顔してるね。」と笑みを浮かべている。

「いや、そんな事ないです」と言いつつ自分でも焦って早口になっているのがわかる。

「まぁ、そんなにびくびくしないでよ。兄ちゃん、甘いものは大丈夫かい?」

「きたー!やっぱりきたか。」

「嫌いじゃないですが、得意ではないです」と正直に応えた。

「まぁ、聞いてくれよ。このシュークリーム、俺が作ってるんじゃないんだよ。」

「じゃあ、誰が?」

「家の奥さん。どうしても店に出したいって言ってさあ。あぁ、味は保証するよ。奥さんが作ったから言ってるわけじゃないが、美味しいんだよ。」

「はぁ。」

「でさ、兄ちゃん…恋してるだろ」

「えっ?!」唐突な質問に吐きそうになった。

「いや、そんな顔してる。恋人じゃないな。片思いだ」と言い出した。

違いますと声を大にして否定したい所だが、図星だった。

「ええ。」と自然に応えていた。お酒飲み過ぎたかな。

確かにいいなと思う子がいた。取引先の担当の女性だ。ほわほわとした雰囲気なんだけど、結構テキパキとしてるんだよな。

よくレモンウォーター飲んでてさ。

ショートカットにゆるふわパーマがかかっててさ…

スイーツは、マカロンが好きだって言ってたな。

と、脳内がお花畑になりそうな俺にいかつい声が届いた。

「でな、このシュークリームを食べると恋に良いことがあるという噂があるんだよ」

「噂って。最近、奥さんが作ったんですよね?」

「そうなんだけど、これを食べた他のお客さんが言ってるんだよ」

もっと他にアピールポイントあったろうと思いつつ、その噂が気になった。

やはり飲み過ぎたかと思いながら、噂の内容を聞いてみた。

相手から声をかけられたとか、デートする約束ができたとか…そんな事だらけだった。

疑いの目と耳を向けつつ、シュークリームが気になり出していた。

「味が、プレーンとチョコレート、いちごがあるんだ」

「それって味ごとで噂は違うんですか?」と聞くと

不適な笑みを浮かべながら、店長は言った。

「兄ちゃんは、まずプレーンかな」と。

俺は半信半疑だが、ちょっと期待しつつプレーン味のシュークリームを注文してしまった。

甘いものはちょっとと、思いつつ美味しく頂いてしまった。

そして、期待してしまう俺がいた。

もしも何か起こったら、また来ようと思う俺がいた。



















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