約束の指輪
「……これ、」
「そう。指輪」
私はすっかり驚いて言葉も出ない。
なのに、幼なじみはさらっと言って私に指輪を差し出す。
「約束。将来の」
「……」
私はさらに言葉を失う。
何も言わず固まっている私にとうとうしびれを切らしたのか、幼なじみは強引に私の手のひらに指輪を握らせた。
その冷たさと固さに、これは現実だと脳がやっと認識した。
涙が、一筋頬を滑り落ちた。
幼なじみがぎょっとして、
「そ、そんなに嫌だったのか!?」
と言う。
「……違うの」
ようやく、私は喋れた。
でも、涙は後から後から溢れてくる。
そんな様子を見てられなかったのか、
「あー、もう!」
ガバッと気付いたら幼なじみの腕の中で私は号泣していた。
本当に、涙が止まらない。
「嫌だったの?」
今度は優しく、幼なじみが聞いてくる。
「嫌じゃあ、な、ないの、う、嬉しくて嬉しくて」
しゃくりをあげながら私は言った。
「だって、幼なじみで、貴方の方が年下で、私なんか美人でもないのに選んでくれたなんて」
どうにかそう言えた。
「……可愛い」
「え?」
私はひどい顔で幼なじみを見上げた。
そして気付く。
幼なじみの貴方の方がすっかり背が伸びて、大人に近付いていた事に。
「涙顔でそんなこと言われたら、照れるし。そして最高にお姉ちゃん可愛い」
可愛いなんて、久しく言われた事がなく私も顔が真っ赤になる。
そして、腕をほどかれた。
「姉ちゃん」
「なに?」
幼なじみの貴方は、ぐっと私に向かって拳を突き出す。
「俺、早く大人になるから。絶対に待ってて」
その仕草に、私も涙顔で拳を突き出す。
コツン。
「待ってるよ。待ってるから」
拳と拳のお互いの指には、約束の指輪がキラリと光っていた。
桜の花びらが満開で、私と幼なじみの貴方の周りを舞っていた。
ドキドキする恋物語が書きたくて、書きました。
お読み下さりありがとうございました。